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この一冊で企業がよみがえる
第五章 企業再生の実際を学ぶ
「理屈だけでなく実際を」の声に応えて松下の中村改革をとりあげます。本章では「あなた自身の目」で松下の中村改革を評価出来るように、改革の着手からの経過をまとめて見ました。中村改革をひとつの生きた事例として、あなた自身が毎日の新聞・雑誌の中から松下の経営を見つめながら、中村改革の評価をあなた自身で行ってください。
041 聖域への踏み込み事業部制解体の成果
昔の松下グループはそれぞれの独立性が高く、例えばワープロなどは三部門で競作し、しかもお互いに互換性が無いという無秩序状態がしばしば指摘されました。それが100以上の事業部の解体と関係会社の完全子会社化により、お客様に目線を向けて、松下として顔の見える会社に脱皮しつつあります。
新しい松下は十四の事業ドメイン(分野)と二つのマーケット本部に再編成されたために市場を大きく見ることが出来るようになりました。また従来は事業部の力が強く製品開発は事業部で行い、営業や、広告部門などは下請け的にあつかわれていたために市場のニーズをはずすことが多くありました。
しかし新制度では二つのマーケット本部が大きな力を持ち、責任を持って事業ドメインから商品を買い上げるために商品開発に対して大きな発言力を持ち、広告なども戦略的に打つことが出来るようになりました。
その成果の一つとして洗濯機のヒットがあります。これまで業界四位に甘んじていた松下が起死回生の商品として投入したのが、斜め三十度のドラム式を採用した「ラブ(NAIV80)」でした。価格が高価な商品にもかかわらず発売当初は品切れをおこすほどでした。この商品開発にはマーケット本部の強い意志が入って何度も事業部門に差し戻し徹底的に差別化を狙った成果です。(この洗濯機開発秘話に類する記事は多くの新聞・雑誌で紹介されています。)
またかって撤退したデジカメではライカと組んだLUMIXが売れています。ライカとの提携も成功の秘密ですが、人気の浜崎あゆみを広告に起用して大量の広告宣伝費をかけたことも大きな成功の原因です。このように一度撤退した機種にこのような大量の宣伝費を使うことは従来の事業部制では考えられなかったことです。
また事業部の解体は技術力の強化にも役だっています。デジタル家電で重要な地位を占める薄型テレビではタスクフォースとして「高画質技術開発センター」を発足させ、プラズマや液晶などディスプレーの画像に関わる要素研究を手がけていた人間をごっそりと引き抜いて投入し、従来の五倍の人員で高画質に挑戦させました。そして薄型テレビ「ビエラ」の投入により画質では業界トップの地位を手に入れています。
このように聖域である事業部の解体に、当初は中村改革に対して、お手並み拝見と冷ややかだった松下OBや、模様眺めのマスコミも、時間の経過と共に成果が出てくると賞賛の声に変わっています。改革はどんなことがあっても成功しなければなりません。経営は結果が全てですから。
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