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この一冊で企業がよみがえる
第五章 企業再生の実際を学ぶ
「理屈だけでなく実際を」の声に応えて松下の中村改革をとりあげます。本章では「あなた自身の目」で松下の中村改革を評価出来るように、改革の着手からの経過をまとめて見ました。中村改革をひとつの生きた事例として、あなた自身が毎日の新聞・雑誌の中から松下の経営を見つめながら、中村改革の評価をあなた自身で行ってください。
038 他社が真似できない強みを一つか二つ持っていること
松下の中村社長は企業の生き残りについて同じく日経ビジネスで次のように述べています。ここで中村社長は明確にプロセス改革の中味を示しています。
「日本ではモノ作りに直接従事したり、商品を運んだりする労働者の比率は既に二十%を切っています。日本は知識労働社会に入ったわけです。この知識労働に磨きをかけて、他社にない強みや技術力をいくつ揃えるかで、企業の存続は決まると思います。最終的には知的財産権(特許)と生産技術だと思っています。僕はこれらをひとまとめにして「ブラックボックス」と呼びます。誰も中味を見ることが出来ないからブラックボックス。それをたくさん持っていないと、生産加工は全部、コストの安い中国に行ってしまう」
さらにこの様にも言っています。
「ロームの佐藤さん、村田製作所の村田さん、任天堂の山内さんらと話をすると、彼らは会社の規模を大きくしようと思っていないけれど、他社が真似の出来ない強みを一つか二つ持っていて、それを武器に好業績をあげている。松下は八万人もいるから一つでは不足だけれど全体で百も持っていれば大もうけです」
日本の企業は今まで事業規模を大きくすることに血眼になって来ました。事業規模の拡大を経営の基盤にするのは、とりもなおさず「インフレがこれからも続く」との思想が遺伝子に埋め込まれている証拠です。ましてや事業規模を拡大しなければ利益が確保できない経営とはキッパリと別れを告げなければなりません。
日本は資源の無い貿易立国です。従来は特に製造技術で世界が真似出来ないものを持っていました。しかし中村社長の言うように、どこの製造業を見ても直接労働者の比率は減少しています。経済に国境の無くなった現在、この分野は高度成長期のように外国人労働者を日本に入れるより、賃金の安い国が直接労働を分担するのが自然の流れです。
松下では世界で一、二を狙う商品を選び出し、V商品と名付け大いに力を入れています。大量生産、大量販売時代の覇者であった松下は、他社が投入した商品が市場に受け入れられると、豊富な経営資源をフルに活用して一気に市場を制覇し「マネシタ電機」と呼ばれたものです。その松下が、V商品で開拓者利益を得る戦略に切り替えています。中村改革が時代の流れを着実にとらえている証拠です。
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