|
この一冊で企業がよみがえる
第四章 まず徹底した意識改革から
「企業が蘇る」ために欠かせないのが徹底した意識改革です。組織の大部分を占める「権限のない社員」が火と燃えて立ち上がれば、風土は一変します。「意識改革なくして企業再生なし」と言い切っても間違いではありません。多くの業績不振企業は意識改革が出来ずに敗れ去っています。
029 危機感を持つ人材がいて初めて改革は達成できる
少し古い事例をご紹介しましょう。なぜならこのような段階は日産など現在立派に活躍している企業は既に通過しているからです。徹底した意識改革の実例を求めるには時間を少し逆回転することが必要です。豊富な事例をたやすく発見出来ます。
さらに研究熱心な人は、「ここで取り上げた改革のその後」をご自身で追求してください。そして現時点で失敗していたら、その原因を、さらに発展していたら、その理由を研究してください。まさに生きた教材です。
兼松は1999年五月に総額1550億円もの多額の債権放棄を東京三菱銀行などに要請しました。そして二年後の2001年三月期には経常利益が百十四億円にまで回復しました。債権放棄を受けた企業の再建の模範例と言われていますが、その実情はまさに「痛みの伴う改革」そのものでした。
二年間で売上は半減、総資産も半減、そして人員は千九百人から七百人弱へと三分の一に削減という荒療治をやってのけたのです。どうしてその様な荒療治が出来たのか検証して行きましょう。
まずメイン銀行である東京三菱銀行が社長を派遣し、再建への不退転の決意を示しました。それと同時に食料、電子・情報、医薬・化学、特殊鋼の四つをコア事業と位置付け、それ以外の事業については撤退か分社化との方針を明確に打ち出しました。
このように明確な方針が素早く打ち出され、方針にそった施策が直ちに実行に移されたために、コア事業を担当している優秀な幹部が燃えて、他社からヘッドハントがかかっているにもかかわらず、残留して本気で再建に取り組みました。
いち早く解決への道筋を示したことで、日産のゴーン社長の言う「燃え盛る甲板(プラットフォーム)」の上に立ち、真の危機感をたぎらして本気で再建に取り組む人材を兼松は得たのです。これはとても大切なことです。
私は良く「危機感と不安感を混同してはいけない」と口を酸っぱくして言って来ました。業績が悪くなり、誰の目にも人員削減が必要になって来ますと、中間管理職の皆さんは「職場に危機感が充満して来た」と言います。
「危機的状況から脱却するために、火と燃えて智恵を絞り、売上と利益を確保するために思い切ったチャレンジをしよう」と冒険に打って出ることこそが真の危機感なのですが、現実は「自分はリストラの対象にならないだろうか」との不安感ばかり先に立ち、目立たないようにとヒッソリ隠れて何もしないのが実情です。このような不安感の充満を危機意識の高まりと認識する中間管理職は失格です。
兼松はスタート地点で「再建にとって最も必要な危機感に溢れた人材」を確保することが出来ました。このような「危機意識の高まり」があって初めて成功への道が開きます。
|