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この一冊で企業がよみがえる
第三章 失敗から学ぶ蘇生への道
皆さんの目の前には失敗の事例が数多く横たわっています。これらの失敗から共通点を探り出し、的確な対策を打つことが蘇生への近道であることは間違いありません。本章では過去の失敗から貴重な教訓を学びます。
023 過去の亡霊が企業をむしばむ
三菱商事のような思い切った縮小・撤退を実行出来ず傷口を広げている企業はまだまだ沢山存在します。その代表例が迷走のあげく産業再生機構に助けを求めたカネボウでしょう。
名門意識が染みついた誇り高い時代錯誤の経営陣に率いられた会社の哀れな末路を見るのは辛いものです。カネボウは明治二十年創立の歴史ある名門で中興の祖伊藤淳二氏が育て上げた繊維・薬品・食品・住宅・化粧品の五本の柱からなるベンタゴン経営で名をはせました。
その成功体験が強烈で、立役者である伊藤淳二氏が二十四年も社長・会長として君臨し、退任後も隠然たる勢力を発揮したため、時代に遅れたペンタゴン経営は聖域として改革の手がつけられませんでした。
五本の柱の中でも中核事業であった繊維事業の不振は傷が深く、食品や住宅関連事業も赤字が続いていました。この間化粧品事業は好調であったために、化粧品の儲けを底なし事業である繊維などの延命資金に使用される状況が続いていました。
そしてこのままでは二年連続債務超過(資産を売り払っても借金が返せない状態)が明らかになり、株式上場が危うい事態となり、遂に虎の子である化粧品事業を売り渡すことにより危機を乗り切ろうとしたのです。しかも化粧品事業を花王に4300億円で売り渡す寸前に産業再生機構なら5000億円が可能だと判断し産業再生機構に助けを求めました。
しかも「今までは業績の悪い企業が産業再生機構へ支援を求めたが、今回のカネボウ案件は強い事業をより強くするためのもの」と胸を張りました。しかも支援の中味は「国に花王より高い金で化粧品部門を買い上げて貰い、その資金で借金を返済すれば銀行は債権放棄をしなくて済み、カネボウの経営陣も責任を取ることなく安泰でいることが可能」との筋書きで余りにも虫の良すぎる再建策です。
世の中はそのように甘いものではなく、その後経営陣は退陣し、産業再生機構により「解体を含む抜本的再生」へと進んでいます。無能な経営者が優良事業から上がる儲けを不良事業に注ぎ込み、抜本的な対策から目を背け破綻を迎えた典型例です。優良事業の儲けは結局不良事業を延命させ、問題先送りの原資になってしまいました。
このように過去の亡霊が企業を蝕んだ、カネボウの例を見るまでもなく、経営破綻の影響が銀行経営を直撃するため、本来は破綻するはずの企業が債権放棄によって生き延びている例も多くあります。三菱商事のように縮小・撤退のルールを明確にして絶えず企業の中で新陳代謝を進めなければならない大きな教訓です。
資本主義の原理は公正な競争原理の中、絶えず新陳代謝を繰り返し、経済が活性化することにあります。この十年、日本の経済は資本主義ではなく社会主義的な運営をさせられてきたことを強く反省しなければなりません。
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