~U.P.R.F Research Data File~

 

  電話・電子メール・インターネット。21世紀に入り、我々は現地に向かうことなく相手と交流を深められたり、足を運ぶことなく多種多様な情報をいつでも入手できるようになった。情報通信技術の発達は、我々の生活そのものを変えようとしているのである。

  だがその一方で、それらを悪用した手口により、多くの人が被害を被っているのも事実である。通信トラブルの厄介なところは、相手の正体がつかみにくいだけでなく、場合によっては爆発的に被害者を生み出してしまうところにあるのだ。

  では、我々が通信トラブルに巻き込まれてしまいそうになったとき、どう対処すればよいのだろうか? 今回は、通信トラブルの原因となるものを項目別に紹介し、その対処法を報告していこう。

通信トラブル原因(1):ダイヤルQ2

●ダイヤルQ2とは一体何か?●

  ダイヤルQ2とは、有料情報番組の提供者に代わって、NTTが情報料を回収するサービスを言い、電話番号は「0990」から始まる10桁となっている。このサービスにアクセスをすると、音声やFAX・パソコン通信などを通じて我々は情報を手に入れることができるのだ。利用の際には通話料以外に情報料がかかるのだが、情報料は利用回数によって加算される「定額制」と、利用時間によって加算される「従量制」の2種類がある。なお、2002123日より、公衆電話からの利用はできなくなった。

  国民生活センターやNTTによると、利用した覚えのない請求がきたり、インターネットを利用中にダイヤルQ2に接続され、高額の情報料が発生する、というトラブルが起きているという。

  では、これらのトラブルに対し、我々はどうすればよいのだろうか?

●ダイヤルQ2トラブル―請求書編●

  国民生活センターによるとこのトラブルを起こしている原因は「架空請求」だという。架空請求とは、悪質な業者が全く根拠のない請求書を、アトランダムにかつ大量に発送したもので、送りつけられた人の勘違いや思い込みを利用した手口だ。架空請求である以上我々はその請求書に対して支払いの必要はない。では、あなたの元に架空請求が届いた場合、何をすればよいのだろうか?

  まず、ダイヤルQ2に関する請求が届いたら、それがNTTからのものかどうかを確認していただきたい。先ほども述べたように、ダイヤルQ2NTTによる情報料回収代行サービスである。それゆえ、ダイヤルQ2に関する請求は本来、NTTから来るべきなのだ。それがある日突然、NTT以外から請求が来たということになると、その請求は架空請求だと考えられる。またNTTでは、ダイヤルQ2の使用によって、情報料と通話料の合計金額が前の月の3倍を超えた場合、その旨を請求書の発行前に、電話や書面で通達するようにしている。

  万一、あなたの元に架空請求が届いた場合、氏名と住所という情報は業者に知られていることを意味している。怖いのは、電話番号まで知られているケースである。それにより、電話による請求も考えられるのだ。根拠のない取り立てについてのポイントは、

  1.支払わずに放置すること

  2.警察に届け出ること

  3.証拠となる請求の郵便などは保管しておくこと

  この3点である。

●ダイヤルQ2トラブル―インターネット編●

  ダイヤルQ2によるトラブルは、電話だけとは限らない。それは、インターネットも電話回線を使用するからだ。ここで、我々がインターネットで様々なホームページを見れるようになるまでのプロセスをまとめてみよう。ここでは例として、自宅のパソコンと家庭電話を用いた方法を紹介する。

  インターネットに接続するには、まずパソコンを電話回線とつなぐ必要がある。その際に使用する装置がモデムなのだ(電話回線がISDNの場合は、ターミナルアダプタとデジタルサービスユニット)。これらが必要な理由は、アナログとデジタルという関係にある。

  アナログ回線である、家庭の電話回線を通じて送られてくるデータはアナログデータなのだが、その電話回線とつながるパソコンはデジタルデータしか認識できないのだ。そのため、アナログデータをデジタルデータに変換する必要がある。その役目を果たすのがモデムなのだ。なお、モデムと電話回線を接続するためには、モジュラーケーブルが必要となる。

  その後は、ホームページを閲覧するために「Internet Explorer」や「Netscape Navigator」と呼ばれるブラウザを準備し、インターネットに関するサービスを提供するプロバイダに加入すればよい。以上が大まかな流れである。インターネットに関するダイヤルQ2のトラブルは、何らかの理由によって接続のための電話番号(アクセスポイント)を書き換えられ、ダイヤルQ2につながってしまうというものだ。

  ダイヤルQ2につながる際には、主にホームページの最下段に注意書きがしてあったり、閲覧中にアクセスポイントを書き換えるソフトをインストールするかどうかを聞かれる、という目に見えるヒントがあるので、接続したくない場合はホームページの隅々まで予め見ておく必要がある。また、ダイヤルQ2につながるケースは、多くが閲覧者の興味をひくようなところ(例:アダルトサイトなど)だったりするので、いちばんよいのは、そのようなホームページにはアクセスしないことであろう。もしくは、インターネットを接続する際や接続中に、ちゃんと自分の知るアクセスポイントにつながっているかどうかを確かめればよい。確認方法は、Windowsの場合、「マイ コンピュータ」から「ダイヤルアップ ネットワーク」を開けばよい。そこに見知らぬアクセスポイントが追加されていたら、それは削除した方が無難である。契約しているアクセスポイントは、よく覚えておくようにしたい。ダイヤルQ2の自動接続を防ぐための注意点は、

  1.興味をひくような危険な匂いのするホームページにはむやみにアクセスしない

  2.接続前や接続中に、契約しているアクセスポイントにきちんとつながっているかを確認すること

  この2点である。

  なお、大学などのLAN環境では、ダイヤルQ2につながることはない。

  今後もインターネットは世界的に普及し、我々にとってなくてはならない存在になりえてくるだろう。我々が思わぬトラブルに巻き込まれないためにも、慎重かつ冷静な判断・正しい知識が重要なものとなってくるのだ。

 

通信トラブル原因(2):ワン切り

●ワン切りの手口●

  ある日、あなたの携帯電話から着信音が。しかし、あっという間に着信音は止まり、着信履歴には見慣れない電話番号が残っていた。そして、その電話番号にかけ直すと、アダルト番組やツーショットダイヤルといった、いわゆる「出会い系」の案内テープが流れるという、迷惑電話だった。これが、「ワンコール・コールバック式」、通称「ワン切り」の手口である。

  ワン切りが社会問題として取り上げられるようになったのは、2001年の秋頃だが、その頃から「かけ直すだけで10万円を請求される」、「電話をするだけで個人情報を知られ、高額な請求書が自宅に送られてくる」などの被害情報が浮上していた。だが、国民生活センターのトピックによると、かけ直しただけで料金を請求されたという事案は確認されていないという。実際に、国民生活センターに寄せられているのは、これらの情報に不安を抱いている人からの相談ばかりだというのだ。

  だが、火のないところに煙は立たないわけであり、あなたが思わぬ被害に巻き込まれないためにも、着信履歴に残された見知らぬ電話番号には、安易にかけ直さない方が無難なのだ。ではここで、個人レベルで可能なワン切り対策をご紹介しよう。

●あなたにもできるワン切り対策●

  1.見知らぬ電話番号には注意する

  「着信履歴があれば、かけ直す」という常識がある限り、それを悪用しようとする者も存在する。それこそが、ワン切り業者なのだ。知らない間に見知らぬ電話番号が着信履歴に残されていた場合、それはワン切りの可能性が考えられる。しかし、見知らぬ電話番号が全てワン切り業者からかけられたものとは、さすがに言い切れない。そこで、次に紹介したいのが、インターネットである。

  2.ワン切り電話番号の検索

  インターネット上には、ワン切りの被害を抑制するために、ワン切りとしてかかってきた電話番号をデータベースとして掲載しているサイトがある。かけ直すかどうか迷った場合に利用してみるとよいだろう。

  3.公衆電話の利用

  自宅などにインターネットを使える環境がない、という方には、この方法をおすすめしよう。自宅以外の場所からかける電話なので高額な料金を請求されるという情報が真実であったとしても、絶対に請求されることがない。また、少しでも電話代を浮かせたい方にとっては、携帯電話からよりも、公衆電話からの方が圧倒的に安上がりですむ。それが、ワン切りの確認のための電話であれば、なおさらだ。なお、携帯電話からかけ直す場合には、非通知設定にすることを忘れないでいただきたい。相手がもしワン切り業者の場合、電話番号を悪用される危険性が考えられるからだ。

●今後、ワン切りはどうなるのか?●

  1つの社会問題にまで発展した、ワン切り現象。コール回数を23回にまで増やしたいわゆる「ツー切り」現象も現れ、手口が広がり始めようとしていたとき、ついに警察が動いた。

  2002419日。警視庁保安課などは、東京の情報提供会社の社長ら3人を逮捕した。これが、ワン切り業者を逮捕した、全国初の事例である。適用した容疑は「猥褻物公然適用容疑」。1990年代初めに社会問題となった、ダイヤルQ2以来の適用となった。

  また、政府もワン切りへの対策を打ち出した。20021025日、有線電気通信法の一部改正案を閣議決定し、政府に提出したのだ。有線電気通信妨害罪として、ワン切り業者に対する罰則を、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金と定め、年内の施行を目指しているという。

  だが、20027月に大阪府や兵庫県尼崎市NTT電話網にワン切りによる通信障害が2回も発生したことからもわかるように、依然ワン切り現象は沈静の様相を見せない。コール回数が何回であっても、ワン切りへの対応策は変わらない。法治国家に身を委ねるのではなく、自分のプライバシーなどの財産は自衛しなければならない、そんな時代なのではないだろうか。

 

通信トラブル原因(3):チェーンメール

●チェーンメールとは一体何か?●

チェーンメール事例 1

【えり】は運命の人と幸せな結婚ができます。

上下の【】の名前を書き替えて、これを5人の友達に必ず転送して下さい。

守らないと一生独身でしょう。

私は、【まり】から送られてきました。

チェーンメール事例 2

19990917

鉄腕DUSHメールがどこまで届くか、実験中! 9人にメールを回してください。これは本物です。

国分太一チームです。宜しくお願いします。

 

  これらが、いわゆる「チェーンメール」と呼ばれるものである。本文のどこかに「この情報をなるべく多くの人に回すように」と書き置き、無差別的に情報をばらまかせようとするメールのことだ。だがチェーンメールの場合、ほとんどの情報が何の根拠もないデマなのである。現に、冒頭で紹介した「鉄腕ダッシュ」のチェーンメールも全くのデマで、日本テレビが自社のサイトで「そのようなことは行なっていない」と呼びかけるという事態まで発生した。

  このチェーンメールによく似たものとしてかつて流行したのが「不幸の手紙」である。内容は現代のチェーンメールと全く同じで、多くの人に回させる事を目的としたものだ。だが、「不幸の手紙」の流行が去った現代、なぜ多くの「チェーンメール」が飛び交っているのか? そして、なぜ人は、デマに突き動かされてしまうのか?

●拡散してゆく「デマ」の脅威●

  「デマ(DEMAGOGUE)」とは、どこからか、いつの間にか湧き出し、地域社会へと伝染し、ついには、人々を直接行動にまで駆り立てる怪情報のこと。その典型的な事例が、1970年代のオイルショック時に発生した、「トイレットペーパーがなくなる」というデマである。

  1973111日、大阪千里ニュータウン。突如、スーパーで主婦たちが、トイレットペーパーの激烈な争奪戦を展開。けが人まで出る大パニックとなった。主婦たちは、地元に流れた「トイレットペーパーがなくなる」という噂を耳にし、買いだめに走ったのである。そして、この光景をテレビで見た主婦たちが、翌日には全国のスーパーに殺到。トイレットペーパーパニックが発生した。

  だが後に判明した事実では、この時トイレットペーパーは、各地に十分な在庫があった。実はこの頃、トイレの水洗化が急速に進み、業界では需要の増えたトイレットペーパーが、オイルショックの影響で、品薄になると予想されていた。そのため、例年以上にトイレットペーパー生産の方へ石油をまわしていた。つまり、トイレットペーパーがなくなるという事態は、ありえなかったのだ。しかし主婦たちは、どこからか現れた「トイレットペーパーがなくなる」という事実に反したデマに突き動かされてしまったのである。

  では、なぜ人は、デマという不確実な情報を信じ、行動を起こしてしまうのだろうか?

  先ほどの事例で紹介した「トイレットペーパーパニック」は、オイルショックという不況の真っ只中に発生した騒ぎであった。デマには、蔓延しやすい時期というのがあり、それは「人命や金銭に対して強い不安がある時期」と言われている。そして、現在は平成不景気意識が行き渡っており、時代背景から考えれば、現在の状況は1970年代の不景気と似ているというのだ。つまり、現在はデマが蔓延しやすい時期と考えられるのである。

  その蔓延しているデマの原因としてチェーンメールが挙げられるのだ。先程も述べたように、チェーンメールには「なるべく多くの人に情報を送る」ように書かれている。だがもう1つの特徴として、「情報を送らなかったり止めたりしてしまうと、不幸が訪れる」ことについても記されているのだ。事例1がそれにあてはまるが、中にはもっと悪質な内容のチェーンメールも存在する。

チェーンメール事例3

あなたは、雑遊霊という物をご存じですか? 各墓に祭られている、霊魂が脱走したものです。でも誰かがある禁断の儀式をしない限りめったに雑遊霊など現れません。

ある、栃木県の中学生の男子3人がその儀式を興味本位でしてしまったのはわかっています。ところがその男子らはその後姿を暗ましてしまい、消息がわかりません。しかし私達はそいつらを探しています。必ず見付け出し、雑遊霊を呼んでしまった罪を負わせる為、殺していこうと思います。

なぜ、このメールを回しているかといえば詳しく言えませんが、犯人を探すために必要な組織上で回す必要があるからです。このメールの目的は真犯人を探すためですが、このメールを止めた奴ら全員、そいつらと同じように殺していこうと思っているので、このメールを見た12時間以内に、6人の人間に回してください。このメールには特殊なレーザーが、ついている為、今、このメールがどこを回っているのか、すぐにわかります。犯人を見付け次第、あるいはこのメールを止めた奴を見付け次第我々は活動を開始する。

今まで、メールを止めた人は、32人。このメールを止めた奴らはこの後とめて殺していきます。本当ですよ。まあ、それはもうすぐ分かると思いますが。私達は現に今このメールが中国地方をまわっている事もしっています。

栃木県からはじまったこのメール、止めた時あなたは…。とりあえず送ればいいんです。止めなければいいんです。それでは、健闘を祈る。御曹子四季―

これ、本当っぽいよ、やばいよ。絶対送った方がいいよ。来た人ごめんね、でも私まだ死にたくないよ、これ、やばい

 

  もちろん、これも全くのデマ情報であるので、決して信用しないでいただきたい。

●人が「デマ」を信じるメカニズム●

  デマが蔓延しやすい時期、それは、人命や金銭に対して強い不安がある時期だということを先ほど説明した。では、かつて「幸福の手紙」や「不幸の手紙」が流行していたときの時代背景は、どうだったのだろうか?

  「幸福の手紙」が流行したのは、1950年と言われている。当時、日本は連合国による間接統治という形で占領されていた。景気は、朝鮮戦争による特需景気が始まりだした頃だが、まだ息を吹き返したところからの成長段階であったため、人々が豊かな生活を送れる状況ではなかったと考えられる。

  一方、「不幸の手紙」の流行が報道されたのは、19701120日。この頃は、戦後最大と言われる「いざなぎ景気」だったが、その山を通り過ぎて後退し始めていた。つまり、景気の谷に向かっていたのである。翌年の816日には「ドル・ショック」と呼ばれる株式市場の大暴落が起こり、2年後の1973年には、第4次中東戦争によるオイルショックの影響で深刻な不況となり、トイレットペーパーパニックのような騒動まで起きたのだ。以上のことから、幸福の手紙も不幸の手紙も、流行していた頃は景気が不安定だった、もしくはぐらつき始めた頃だと言える。

  そのような状況下におかれると、人は口コミ情報に過敏に反応するようになり、その集めた情報の中から、良い情報よりも、より不安を強く感じさせるものを強く信じ、求める傾向があるというのだ。これは、いざというときのために、常に最悪な事態に備えようと心の準備をしておこうとするためである。

  そのため、事例3のようなメールが届くと生命にまつわる強い不安な要素が印象付けられてしまい、デマ情報が書かれたチェーンメールを、つい次の人に回してしまうのだ。そして、これが繰り返されていくと、いつか自分の元に、以前送信したメールがまた送られてくる可能性がある。そのとき「交差ネットワークによる2度聞き効果」が現れるのだ。

  例えば、事例3のメールを200311日の午前0時に、1人に送信したとする。12時間以内に6人に回さなければならないと全員が思い込んだと仮定すれば、11日の正午には6人に、翌12日の午前0時には、それぞれが6人ずつにメールを回すため計(1636=)43人がメールを見ることになる。単純に計算すれば、僅か5日後の16日の正午には、メールの受信者が日本の総人口を超えてしまうのだ(延べ435356467人=1636216129677764665627993616796161007769660466176362797056)。

 このことを考えると、同じ人が2回メールを受信する可能性も否定できない。すると、最初は半信半疑で送ったメールであっても、交差ネットワークによる2度聞き効果によって、他の人も知っているんだから信憑性がある、という確信が生まれ、またしてもチェーンメールを回してしまうのだ。また、チェーンメールの場合、迷惑がかかるのは受信者だけではない。

  2000129日。NTTドコモが、200111日午前0時の数分前から2時にかけて、電話と電子メール送信サービスの通信を制限することを発表した。これは、コンサートチケットの予約開始時に固定電話を対象に行われるのと同じ方法で、通信設備やコンピュータシステムのパンクを回避するためである。

  そう、チェーンメールのいちばんの問題は通信設備に大きな負荷を与えてしまう点にあるのだ。しかもチェーンメールの場合、新年の挨拶などとは違い、いつ発生・拡大していくかが不確定なため、ワン切りのように通信被害が出てしまう可能性も否定できないのである。そのためにも、チェーンメールは絶対に止めなければならないのだ。

●チェーンメールが届いたら●

  では、あなたの元にチェーンメールと思われるメールが届いた時、どうすればよいのだろうか? ここからは、疑問に答える形式で報告しよう。

【疑問1 チェーンメールが届いたとき、絶対してはいけないことは何か?】

  チェーンメールは、なるべく多くの人に回させることを目的としたもので、必ずそれを促すような文章がどこかに書かれている。いちばんいけないのは、何も考えずに機械的に指定された人数分にメールをばらまく行為である。先ほども述べたように、チェーンメールは受信者に迷惑をかけたり、メールサーバーに大きな負荷を与えかねないので、自分のところで止める勇気を持っていただきたい。

  しかし、悪質な内容のチェーンメールが届けられて不安になる方もいるだろう。次からは、チェーンメールに書かれる悪質な文章がいかに説得力に欠けるかを証明していこう。

【疑問2 チェーンメールの行方はすべて把握できるものなのか?】

  そもそもメールというものは、送信者や受信者のパソコンや携帯電話、もしくはメールサーバーの中に記録が残るものである。しかし、それらは他人が安易に見れるものではなく、侵入できたとしても、メールアドレスと時刻しかデータを入手できないのだ。しかもインターネット人口が急速に増加している今、20023月末時点で、日本のインターネット人口は5130万人と言われている。高校生のおよそ8割が携帯電話を持つ今日、膨大な数の媒体に侵入することは現実問題としてまず不可能であり、更なる個人情報を入手するとなると、天文学的な確率になるのだ。

【疑問3 チェーンメールを無視していて、見知らぬ電話がかかってきたら、どうすればよいのか?】

  悪質なチェーンメールの中には、本文の中に確認の意味での電話を入れるといった文章が書かれている場合がある。しかし、万が一電話がかかってきたとしても不安に怯えることはない。その電話の発信者のほとんどは、あなたの知人なのである。それはなぜか?

  知人であれば、メールアドレスや電話番号を知っていても全く不思議ではない。そしてメールを送信してから経過した時間を覚えていれば、時間通りに確認の意味での電話を入れることも十分可能なのである。また、通知や非通知の設定も自由にできるため、まさにチェーンメールを使って冗談を重ねた二重の悪戯になるのだ。

  その他の要因としては、電話番号のままのメールアドレスにしていたため、無作為に届けられたチェーンメールを偶然受信してしまい、電話もかかってきた。あるいは、チェーンメールと同様に問題視されているワン切りが同じような時刻にたまたまかかってきて、着信履歴に入っていた、という可能性が考えられるのである。いずれにせよ、チェーンメールの行方を把握できる可能性が皆無に近い以上、確認の電話はおろか、チェーンメール自体、怯えることはないのだ。

【疑問4 チェーンメールは、絶対悪な存在なのか?】

  チェーンメールには、事例で紹介したような冗談や悪質なメールも存在するが、それが100%を占めるわけではない。一口にチェーンメールと言っても、その内容は様々で、冒頭で紹介したデマが書かれたメールもあれば、面白い内容が書かれたメールも存在し、善意に基づいて流された情報がチェーンメール化した事例もある。真偽の判断をつけづらいようなチェーンメールに遭遇した際は、ワン切りと同じようにチェーンメールのデータベースを掲載しているサイトも存在するのでそこにアクセスしてみるとよいだろう。

  本文の内容に関係なく、チェーンメールの特徴である「○人にまわして下さい」という文章。これさえ実行しなければ、あなたはチェーンメールの送信者にならずにすむのである。

【疑問5 チェーンメールについての知識・心掛けを教える際に注意すべきことは何か?】

  チェーンメールが知人から送られてきた場合、それは嘘の内容だ、とか、回す必要はないぞ、などというような、チェーンメールについての正しい知識を教えたいところ。しかし、それをメールで返信した場合、受信した知人がそのままそれを、またチェーンメールのようにばらまいてしまう危険性もある。そう、チェーンメールを止めるどころか、なおさら広げてしまうという逆効果を生み出しかねないのだ。有効な手段としては、チェーンメール自体を気にしないで消去するように教えること。そして、知人からのチェーンメールがあった場合に限って、同じようにアドバイスをすることである。こうすれば、少しでも新たなチェーンメールを生み出す危険性が低くなるのだ。

  根拠のないデマを載せたチェーンメール。しかし、本文の内容に怯えることなくメールを消し去り、その鎖を断ち切ってほしい。正しい知識とモラルを持って対処すれば、通信網の秩序は維持できるのである。

  かつての幸福の手紙や不幸の手紙、そして現代のチェーンメールは、不安な状況下に置かれた人間が、少しでも気を紛らわすために生み出した、自己中心的なストレス解消法なのかもしれない…。

 

●あなたの個人情報を知られない為に●

  今回のリサーチでは、近年問題となっているダイヤルQ2による請求やワン切り現象、また、チェーンメールをテーマに挙げ、調査を行なった。もちろん、通信トラブルはこれだけではない。コンピュータ・ウィルスの被害に遭ったり、インターネットから個人情報が流出してしまったという事例などもある。そう、コンピュータやインターネットの急激な普及によって、我々もこうしたコンピュータ犯罪と無縁とはいられない時代になったのだ。さらにそのようなトラブルは、インターネット人口の急増に伴い、爆発的な勢いで増え続けているのである。このような犯罪を防ぐには、どうしたらよいのだろうか?

  インターネットのような特定できない相手とのコミュニケーションでは、自分の住所や電話番号などの個人情報をむやみに公開してはならない。コミュニケーションを取る手段として、かつプライバシーを侵害される危険性の低い方法として、メールアドレスを使えばよいのである。こうすることで、多くのインターネット犯罪を防ぐことができるのだ。

  また、個人情報の流出が危惧されている要因として、住民基本台帳ネットワークシステムが挙げられるという。住民基本台帳ネットワークシステム、通称「住基ネット」とは、20011月に森内閣が、日本を世界最先端のIT国家にするために打ち出した「e-Japan」計画に基づいて、200285日からスタートした、電子政府・電子自治体の基盤となるネットワークシステムである。具体的には、国民11人に生涯不変の11桁の住民票コード・氏名・性別・住所、そして生年月日という本人確認情報を、コンピュータによって自治体や政府機関が必要に応じて利用できるようにするものなのだ。だが、e-Japan計画や住基ネットについて、大掛かりなプログラムであるにも拘らずあまり国民に関心が行き渡っていないのが現状であったりする。

  ちなみに、希望者にはICチップの内蔵された住民基本台帳カードが発行され、このカードがあれば、あらゆる行政サービスが受けられるというのだ。例えば引っ越しをする場合、引っ越し先の市役所などの窓口にこのカードを提示するだけで、書類を書くことなく全ての手続きが一瞬にして完了する。今まではそれまでにいた市町村に転出届を出した上で、さらに、引っ越し先の市町村に転入届を出さなければならなかった。しかし、オンラインで情報が集約的に管理されるようになると、引っ越し先の市町村に転入届を出しさえすれば、元いた市町村に自動的に情報が流れることになるのである(20038月実施予定)。

  情報が集約管理されると、それ自体便利な面もたくさんある。しかし、そのために一個人の情報が全て他者に漏洩・流出してしまうことも否定できない。例えば、もし配布されたICカードを路上で落としてしまい、全く気づかないまま、見知らぬ何者かに拾われ、個人番号を知られてしまったとしたら、そのカードからその人のプライバシーが全て知られる危険性が考えられるのだ。実際、事実上の住民基本台帳番号とも言える、社会保障番号や住民登録番号を国民のID番号として使用している外国では、既に現実的な問題が発生しているという。

  スウェーデンでは、住民登録番号制度が導入されており、1人ずつに与えられた番号によって全国民の個人情報が全て集約管理されている。その結果、銀行や保険会社の間で個人の預金情報や健康状態など、詳しい個人情報が書き込まれたリストが公然と出回っているという、恐ろしい事態が起きているのだ。

  アメリカ合衆国では、更に悪質な犯罪にまで発展するケースがある。アメリカでは、社会保障番号を行政だけでなく、民間でも積極的に個人の身分証明として利用しているため他人の番号を手に入れさえすれば、生活のあらゆる面でその人物になりすますことができてしまう。これにより、他人のキャッシュカードやクレジットカードが悪用されるという犯罪が実際に起きているのである。

  社会の情報化が進むほど便利になる反面、情報の流出がより身近なレベルで起こりやすくなる。個人情報の流出を防ぐ方法としては次の3つが考えられる。

  1.パスワードの管理

  パスワードは決して他人に明かさないようにする。そもそも、他人がパスワードを必要とすることなど、本来ありえないのだ。

  2.パーソナルデータの管理

  住所・電話番号など、個人のパーソナルデータは、必要なとき以外は絶対に他人に教えないようにする。

  3.身元の確認

  電話など、顔が見えない相手とのやりとりでは、必ず相手の身元を確認する。

 

  情報化社会を生きる我々は、便利で快適な生活が送れるようになった。そしてそれは、本来軍事目的で開発されたものを平和的に利用するという、少し皮肉な歴史が創り上げた産物なのである。

  今後もさらに高度な技術によって、今まででは考えられなかったことが可能になってゆくだろう。しかし、それを悪用し、また新たな犯罪が発生してしまうことも、100%ないとは言えないのである。我々は、便利さを得て楽をできるようになった分、個人情報という自分だけの財産を守ることに力を注がなければならない。それは、現代を生きる上で決して逃れることのできない、情報化社会の義務なのかもしれないのだ。

   [参考資料]

ハローインフォメーション第25号・第27号(NTT西日本)

Q-PLAZAhttp://q-plaza.com

国民生活センター(http://www.kokusen.go.jphttp://www.kokusen.go.jp/soudan_now/keitai.html2002.4.30

NTT西日本公式ホームページ内「ダイヤルQ2」(http://www.ntt-west.co.jp/q2/

情報処理I(四天王寺国際仏教大学/1999

携帯迷惑メール★バスターズ内「ワン切り」を利用した悪質電話に関するQAhttp://www.age.jp/~busters/news/01_12_01.html

ZAKZAK 裏インターネット事件簿 vol.10「『ワン切り』10万円請求はデマだった!」

http://www.zakzak.co.jp/we/jikenbo/kiji010.html2001.12.15

携帯電話「ワン切り」の次は「ツー切り」ご用心 悪質業者が新たな手口

http://www.yomiuri.co.jp/nie/note/chu/04/kiji23.htm/讀賣新聞・2002.4.24

毎日新聞内「ワン切り業者を逮捕 警視庁が全国初」(http://www.mainichi.co.jp/digital/mobile/archive/200204/19/

Yahoo!ニュース-社会-毎日新聞「『ワン切り』業者に1年以下の懲役か罰金100万円 閣議決定」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20021026-00000021-mai-soci2002.10.25 19:42

ZD Net News

http://www.zdnet.co.jp/broadband/0207/23/nttwest.htmlhttp://www.zdnet.co.jp/broadband/0207/29/onecall.html

連鎖メール拡散防止プロジェクト推進協議会(http://www.hi-ho.ne.jp/t-kurata

新・変なメールを受け取ったら(http://www.hennamail.com

F.E.R.C Research Data File No.0963「デマ・パニックの正体を追え!」(1998.12.6

経済・労働年表(東京都労働経済局総務部企画調査課/2000.12.18

http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/publish/nenpou_pdf/25.pdf

市勢要覧2001年版-川崎のあゆみ-http://www.city.kawasaki.jp/25/25koho/home/youran/html/f_ayumi.htm

インターネットで時代を読む-1970-http://www.book-navi.com/jidai/1970/index.html

新詳日本史図説(浜島書店/1995

カウントダウン21世紀内「年越しのケータイ」制限 ドコモ(http://www.yomiuri.co.jp/21C/news/121002.htm

中国が日本を抜いて世界第2位のインターネット大国に(http://japan.cnet.com/News/Infostand/Item/2002-0423-J-4.html?rn

UNICEF:第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(http://www.iajapan.org/hotline/20011217unicef.html

F.E.R.C Research Data File No.1231「彼らはどうやって情報を盗み出したのか?」(1999.6.6

自治体情報政策研究所 電子自治体情報 住民基本台帳ネットワーク(http://www.jj-souko.com/elocalgov/contents/c101.html

総務省 地方行政 住民基本台帳ネットワークシステムの構築 QAコーナー

http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/020625_1.html

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