~U.P.R.F Research Data File~

●株とは?―株を動かす株式会社のメカニズム●

現在、日本には数多くの株式会社が存在している。まずは、株式会社がどのようなしくみなのかというところから見てみよう。

例えばあなたが新商品のアイディアを生み出し、それを作って売り出そうと考えたとき、あなたはどうやってそれを実現するだろうか? たとえアイディアがひらめいても、それを作って世に売り出すには、多くの条件が必要となる。その条件とは、

1.商品をつくるためのスペース

2.商品を大量生産するのに必要となる機材

3.様々な仕事を行う作業員へ支払う賃金

などである。

つまり、金銭的な問題がネックになるのだ。通常、商品を大量生産して売り出す場合、多くの資金が必要になる。さて、あなたはこのとき、どうやって必要な資金を集めるだろうか?

このときに資金を準備するためにとる方法は2通りある。

方法1.銀行から借金する

銀行からお金を借りて資金にする方法である。銀行から借金をする場合につく利息は、およそ8%。消費者金融よりも少ない利息で借りられるのだが、銀行で借金をするには様々な条件があり、それに合わなければ借金はできないのだ。例えば、他の金融機関を利用している場合には銀行での借金は不可能なのである。

方法2.株式会社を設立する

これは、会社をつくって他の人からお金を集めるという方法である。お金を集める場合、会社はお金を出してくれた人、株主に「株」というものを渡す。つまり株とは、お金を出してくれたことを証明する書類のようなものなのだ。お金と株を交換するので、株もお金と同等の価値を持っている。極端な話、株主になろうと思えば、会社の株を買えばよく、やめようと思えば株を売ればよいのだ。東京や大阪などの主要都市にある証券取引所(株式市場)を通して株式を売買することで、いつでも株主になれたり、またはやめたりできるのである。

だが、ここで1つの疑問が浮かび上がった。なぜ株主となる人は会社にお金を出すのだろうか? ということである。それは、株に秘められたある魅力にあったのだ!

●株で一儲け―人が株に惹かれるいちばんの理由●

ご存知のように、郵便局や銀行にお金を預けると、利子がつく。株式会社もそれと同じように、会社からお金をもらえる可能性があるのだ。

株主メリット1.配当

例えば、先ほどの新商品の話を例にとってみよう。株主は売上げや収益に応じて、会社からお金がもらえる可能性があるのだ。これを「配当」という。もし新商品がヒットして、売上げが上がれば、それだけ配当も高くなるのだ。しかし、無論逆の例もある。

株主メリット2.株価変動

会社の商品が多く売れ、これからもいい商品を出してくれるという期待が大きくなると、会社の人気が上がり、多くの人々がお金を出し、株がほしいと考えるようになる。それによって株の値段、いわゆる株価が上がるのだ。株価は会社の収益や将来性によって変動する。それを指数として表しているのが株価指数である。

●株価指数―TOPIXと日経平均株価●

ニュースで「TOPIX」という言葉を耳にした方も多いだろう。TOPIXは株価指数の1つで、19697月より、東京株式市場一部の全銘柄の値動きを指数で示しているものである。TOPIXの基準値は、196814日の時価総額を100としたもので、以降毎日算出している。

だが、TOPIXの他に、日本でいちばんよく知られている株価指数がある。それは「日経平均株価」。東京株式市場の平均株価のことを指している。テレビなどで株の上下変動を言うときに使われるのはほとんどの場合が日経平均である。日本では日経平均株価の方が長年使ってきたために慣れているが、世界的にはTOPIX方式が主流となっている。

このような方式をあまり知らない我々にとって、株というものにはあまり関係がないのではないかとお思いになる方もいるかもしれない。だが、実はそうではない。株価の変動によって、我々の生活は大きく左右されるのだ。

●身近な株―生活・景気との関連性●

19291024日。歴史上かつてない大恐慌が世界中を不安のどん底に叩き込んだ。ニューヨーク株式市場の崩壊を機に始まり、資本主義各国を襲った経済パニック、世界恐慌(THE GREAT DEPRESSION)である。当時、アメリカでは4人に1人が失業するという惨状に至った。原因は、生産と消費の極端な不均衡にあったといわれている。

そもそも恐慌とは、景気循環の最終段階で、売上げが減少し、価格が下がり、企業倒産が続出、労働者は大量解雇され、その結果更に売上げが減るという厳しい状態のことを指す。

先ほども述べたように、売上げが落ちると、株主にわたる配当が少なくなる。すると、株主が物を買おうとする意欲がなくなり、更に物が売れなくなるという悪循環を引き起こすのである。

このように、株価の変動は我々の生活や景気に大きく関係しているのだ。

●投資―日本経済を相手取ったギャンブル●

我々の日常生活にも浸透している「株」。では、もしあなたが株主もしくは投資家になって成功するには、一体どうすればよいのだろうか?

「株を買おう」。こう決断するのは比較的やさしいものだ。しかし、一体何を買えばよいのか? その判断が難しい。それは、どの銘柄の株が上がるかが本当のところ、誰にもわからないからである。株式投資のギャンブル性はそこにあるのだ。

十分な経験がものをいう現代社会。自分で判断を下すには、それなりの知識が必要となる。経済の動向にも注意を向けなければならないだろう。それらを勉強してから株を買っても遅くはない。もしくは、とりあえず買ってみるという手もある。例えば、あなたが初めて自分のお金で欲しいものを買ったとき、それを何よりも大切に扱ったという経験はないだろうか? それと同じように、自分の判断で少しでも株を持つと、それまで以上に相場の動向や経済に興味が持てるようになり、判断力も身についてくるからである。

こうして株を買う決心がついた。では、ここからはシミュレーション形式で説明していこう。これを知れば、あなたもきっと株で一儲けできる! ……かもしれない。

投資STEP1.株を持つ

株を持とうと以前から考えていたAさん。Aさんは検討の結果、B社に狙いを絞った。資金は300万円。

株式が売買されるのは、証券取引所。そこで早速Aさんは証券取引所に向かって株を買おうとした。しかし取引所は、株をAさんに売ってくれなかったのである。一体なぜか?

実は、我々が直接証券取引所に行っても、株を売ってはくれない。通常、投資家が株を買うには、証券取引所ではなく、証券会社に行くのである。そして、証券会社は投資家の注文に応じ、証券取引所で株を売買する仕組みになっているのだ。もし、知覚に証券会社がなければ、通信販売という手段もある。

投資STEP2.手続き

近くに証券会社があれば、その店を利用しよう。何店でもある場合でも、その人の自由で決めればよい。ただ、会社や店によって雰囲気がずいぶん違う場合もあるので、そのような場合には、気に入った雰囲気の店を選べばよいだろう。

店が決まれば、印鑑を届け、取引口座を開いてもらう。その際に株を買いたいということを伝えよう。すると、「口座はお持ちですか?」と聞かれるので、持っていないと答えれば、すぐに設けてくれる。

ここまでは、証券会社の言う通りにしていれば特別難しいことはないだろう。難しくなるのはここからである。

投資STEP3.注文

注文を出すときには、少なくとも銘柄名・売りなのか、買いなのか・売買株式数・指し値か成行きか、ということをはっきりさせなくてはならない。Aさんは既にB社の株を買うことを決めていたので、銘柄名・売買については問題ない。問題なのは、どれだけ、いくらで買うかということである。

その日の朝刊には、B社の株価は870円と出ていた。1000株で、(870×1000=)870000円になる。300万円で3450株近く買える計算になるが、そう計算通りにはならないのが実情である。

まず問題となるのは、取引単位。新聞の相場欄に掲載されているのは、1株あたりの株価である。しかし、だからといって何株でも自由に売買できるわけではない。実は、売買の取引単位は銘柄ごとに決められているのである(通常、額面が50円の株は1000株。500円の株は100株)。B社の取引単位は1000株。つまり、1000株単位での売買しかできないのだ。この場合、買うことができるのは3000株まで。

また、朝刊に掲載されている株価そのものにも注意しなければならない。朝刊に掲載されているのは、前日の終値である。株式市場は、9時〜11時までと、13時〜15時までの間が開いている。株価は時間の経過と共に変動するため、同じ銘柄でも、1日のうちにいろいろな価格で取引されるのだ。つまり、朝刊に870円と書かれていても、それは前日の終値にすぎないため、その日に証券会社へ行っても870円で買える保証はない。それよりも高くなっている可能性もあれば、安くなっている可能性もある。つまり、いくらで買えるかは、注文したときにもまだわからないのだ。よって、代金は概算で支払う。取引が成立してからきちんと精算されるのだ。

次に問題になってくるのが、指し値か成行きかということである。これは一体どういうことなのか?

そもそも、売買の注文を出すときには、指し値か成行きかをはっきりさせねばならないのである。指し値注文とは、買いたい価格をはっきりと決めて出す注文のことをいう。B社を870円で3000株買いたい。このような注文の出し方が指し値注文である。Aさんの注文は、直ちに証券取引所にいる証券会社の担当者を通して、取引所に伝達される。870円以下の売り注文があれば即座にその価格で売買が成立するが、全ての売り注文が870円を超えていた場合、売買は成立しない。このように、指し値より安くは買えても、高い場合は売買が成立しないという特徴を持っているのが指し値注文である。ゆえに、買えない場合もあるのだ。逆に、指し値の売り注文の場合は、指し値以上の価格でしか売れない。

一方、成行き注文というのは、いくらでもいいから買ってくれというもの。確実に買うことができるが、いくらで買えるかがまったくわからないという特徴を持っている(もちろん証券会社の担当者はできるだけ安く買えるように努力はしている)。

投資STEP4.受渡し

売買が成立すると、それから4日目に証券会社間で株の受渡しが行われる。投資家は4日目以降に、概算で支払ってあった代金を精算する。こうしてAさんは、B社の株券3000株を受け取った(なお、自分で株券を持っていると紛失したり、盗難に遭うなどの危険性があるため、心配ならば証券会社に保護預りの口座を設けて、預かってもらえばよい)。これで売買は終了である。だが、これで全てが終わったわけではない。

投資STEP5.株式の名義書換

実は、株を買っただけではB社の株主にはなれないのだ。株主名簿に登録されて、はじめて株主になれるのである。そのためには名義の書換えが必要となるが、これも手数料を支払うことで証券会社がやってくれる。しかし、名義書換をしなくとも、株は売却できるわけであり、必ずしなくてはならないものでもない。では、名義書換には一体何の意味があるのだろうか?

実は、名義書換をしないと、配当が貰えず、増資新株を引き受ける権利も発生しないのである。配当をしていない「無配株」も結構あるが、B社は配当をしているため、Aさんは名義書換を行なった。こうしてAさんは名実ともにB社の株主になれたのである。

投資STEP6.投資戦略

株式投資でいちばん怖いのは、株価の下落である。購入した株が順調に上がり続けてくれれば儲けることができるが、下がればその分損をする。ご存知のように、上がることもあれば、下がることもある。それが株価だ。よって、株式に投資する以上、株価下落によって損をすることを、投資家は覚悟しなければならない。

だが、投資家は考える。株価が上がったときに利益を獲得でき、下がったときに損をしないですむ方法はないものだろうか、と。こうした願いを叶えてくれる投資戦略が存在する。それは、ポートフォリオ・インシュアランス(PORTFOLIO INSURANCE)である。

インシュアランスは、保険を意味する。生命保険や火災保険をいう、あれである。つまり、ポートフォリオ・インシュアランスとは、株価の下落に対して保険をかけてしまおうというものなのだ。だが実際に保険会社からポートフォリオ・インシュアランスが販売されているわけではない。巧みに株式の売買を繰り返して、あたかも保険をかけたときと同じような成果を得ようとするのである。この他にも、投資戦略として様々な方法があるが、企業によって異なるので、そこは投資家の判断に委ねる。教科書どおりにいかないのが株式投資だからだ。

 

株で利益を得れるか、財産を失うか。全ては投資家の勇気と俊敏な反応・決断が握っているのである。

   [参考資料]

朝日新聞(2001.4.30

F.E.R.C Report No.026「借金を返す一つの方法」(1998.11.1

知恵蔵 朝日現代用語 1996(朝日新聞社/1995

株入門 現代資本主義を動かすもの(鎌倉 昇/1965

株式市場 資本主義の幻想(倉澤 資成/1988

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