~U.P.R.F Research Data File~
●魔方陣とは一体どのようなものなのか?●
「正方形を縦と横とで同じ升目に区分し、それに特殊な配列で1から〔升目の数〕までの正の整数(=自然数)を入れて、縦(列)の合計・横(行)の合計・斜め(対角線)の合計(=定数)が同じになるもの」、これが方陣の性質である(魔方陣はこの別称)。初めは宗教的な象徴としてのものであったが、後に数論の問題として研究されるようにもなった。
実はこの方陣の起源は古く、紀元前4世紀の中国で既に存在していた。1275年、楊輝の記した書物によると、かなり古くから三次・五次・七次の方陣が知られていたという。三次や五次というのは、正方形の一辺の升目をさす。つまり、三次の方陣というのは、一辺が3升、3×3で9つの升目の中に1から9までの数字を入れたものである。
この中国より始まった方陣は、ペルシアやアラビアの商人・港町に居住するインドの商人たちによって、次第に西アジア・南アジアに広まっていき、西暦900年頃には、イスラム諸国で三次方陣が護符として用いられてきた。イスラム諸国ではその後、古代中国の方陣の作成方法がさらに発展していき、14世紀にはスペインを経て西洋に伝来したのである。そしてドイツよりフランス・スイス・アメリカなどの数学者・哲学者たちに深い関心をもたれ、発達していったのだ。
方陣は何も外国だけで研究されていたわけではない。この日本でも、数学の元祖と呼ばれる関 孝和が1683年に「方陣の法」を発表。その業績は、あの万有引力の法則で知られるイギリスのニュートンに匹敵するといわれている。
古くから研究されてきた方陣。数学の発達により、魔方陣の魅力は薄れていったが、その研究成果は決して薄れはしない。では、方陣にはどのようなものがあるのかをご紹介しよう。
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1.指定数方陣
指定数方陣とは、相手の指定する数を使って作る方陣のことである。ここでよく使われるのは、相手の生年月日を取り入れた方陣。右の方陣は、例として1957年6月1日生まれの人の年月日を四次方陣のいちばん上の行におき、その合計数である83を定数として方陣をつくったものである。なお、数の指定ではなく、定数を指定させて方陣をつくる2.定数方陣もある。
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3.転倒方陣
転倒方陣は、1・6・8・9の数字を使って方陣を作るものである。この方陣最大の特徴は、できたものを上下逆さまにしても定数が同じ方陣になるというところにある。それは、1・6・8・9の数字をひっくり返しても、1・9・8・6と、ちゃんと数字として成立するからだ。右の方陣は、定数264の四次方陣だが、これを上下逆さまにしても定数264の四次方陣になるのである。また、1と8のみの数字を使うことによって、上下逆さまにするだけでなく、裏から見ても同じ定数になる4.IXHOHXIの方陣もある。
この他にも、様々な方陣が存在する。
5.普通方陣/6.組立方陣/7.素数方陣/8.分数方陣/9.乗数方陣/その他図形陣 注)5・6以外は、自然数1からnまでの連続数ではない |
●魔方陣・その法則性を解き明かす!●
では、我々の手で方陣をつくるにはどうすればよいのか? 方陣も、一種のパズルゲームであるため、皆さんもかたっぱしから数字を入れ込んでいったのではないだろうか? そこで、ここでは三次普通方陣を例にとって法則性を探ってみよう。
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実は方陣によって導き出せる正解数は変化する。1から始まる自然数の四次普通方陣は880種にも及び、五次以上に至っては万単位にもなる。しかし、三次方陣は右の1通りだけなのだ。では、この三次方陣の解法プロセスをご紹介しよう。
(1) 3×3の升目を書く
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(2) 四隅以外の外周に補助枠(細線・計4つ)をつけ、もう一回り大きい正方形を作る
(3) 上側の補助枠から右下に向かって1〜3の自然数を入れる
(4) 1の左下から4〜6の自然数をやはり右下に向かって入れる
(5) 4の左下から7〜9の自然数をやはり右下に向かって入れる
(1)〜(5)の手順をこなすと右のようになる。
次に問題になってくるのが、補助枠に入っている4つの数字(1・3・7・9)をどう動かせばよいのかということ。実はここにも規則性があるのだ。
(6) 補助枠の数字は、上の補助枠なら、空いている枠のうち、下側へ、右の補助枠なら、空いている枠のうち、左側へ…というように、補助枠のある位置から中心の数字(5)を越えた先の空間に数字を入れていく。
これで、三次方陣は完成する。なお、この方法は五次・七次…といった、いわゆる奇数次方陣全てに通用する最も簡単な方法で、これを配列方法という。
配列方法の法則 1.升目を書いた後、四隅以外の外周に補助枠を付け加え、一回り大きい正方形ができるかたちにする(なお、補助枠の個数は「(升目の数)÷(一辺の升目の数)-1の2乗」個)。 2.補助枠の最上部に1を入れ、そこから右下に向かって数字を入れる。入れ終わったら、その次の数字を1の左下から右下に向かって入れ込む。この作業を最後の数字(=升目の個数)を入れるまで繰り返す。 3.升目の枠内に入った数字はその位置で固定。補助枠にある数字はその位置から中心の数字を越えた先の空間に動かす。 4.奇数次普通方陣の中心の値は必ず「(自然数1〜升目の数までの総和)÷(升目の数)」になる。 |
では、これを踏まえて、次は五次普通方陣を配列方法を使って完成させてみよう。
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まず、補助枠を付け加え、法則通りに数字を入れていき(以上、左図)、枠外の数字を今ある位置から中心値13を越えた先のところに移動させる(右図)。これにより、定数65の五次普通方陣が完成する。
方陣の作り方には、上に紹介した配列方法の他にも様々な方法がある。配列方法だけではあらゆる方陣をつくることはできないので、そのときは、あなたの持つ柔軟な思考力で作り上げてほしい。
現代の常識や既成概念で固くなってしまった我々の頭脳。それを解す機会が、今の我々には必要なのかもしれない…。