私の社会時評

2015年8月10日

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参議院の「政策評価制度に関する決議」について

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 7月6日、参議院の行政監視委員会が「政策評価制度に関する決議」を全会一致で採択した。また、2日後の7月8日には、参議院の本会議も、全会派共同提案(無所属議員も含む)により提出された、委員会決議とほぼ同文の「政策評価制度に関する決議」を全会一致で可決し、採択した。

 そもそも、政策評価制度は、政策評価法に基づいて行われ、国の各府省の5000を超えるすべての政策を対象に、各府省が自ら評価し、その結果を以後の政策に反映させるという制度であり、まさに、行政運営のインフラともいえる制度である。また、総務省は、このような政策評価制度自体を担当し(制度所管府省)、各府省が行う政策評価をチェックし、さらに、府省横断的政策については自ら政策評価を行う仕組みとなっている。

 政策評価法施行から13年を経過して、制度自体は既に政府全体に定着したといえる。その間、制度所管府省である総務省を中心に、制度改善のための努力が積み重ねられてきた。この点は、大いに評価できる。しかしながら、未だに、「お手盛り評価」と指摘されるものが見られたり、また、評価結果が活用されず、評価がマンネリ化し、「評価のための評価」とか、「評価疲れ」といった批判も聞かれるようになっている。

 そのため、評価結果が有効に活用され、継続中の政策の改善、見直し、中止や次の政策の策定に活かされるといった、政策評価制度の本来の目的を発揮するための制度の改善が現在の課題となっていた。

 今回の参議院による本会議決議及び委員会決議は、このような観点から、政府に、政策評価制度の改善、機能強化を求めたものである。

 その内容は、いずれの決議も、八項目からなり、このうち、最初の四項目(一〜四)は、政策評価の結果がより活用されることが重要との観点から、その前提として、各府省が政策評価を実施するに際して、評価指標の定量化推進や要因分析の強化など政策評価の内容自体の改善を求めたものである。また、中間の二項目(五、六)は、制度所管府省である総務省に対して、各府省が行う政策評価のチェックの厳格化や各府省横断的政策の評価の充実を求めたものである。さらに、最後の二項目(七、八)は、地方創生政策を進めるに際して、総務省の政策評価機能も活用することを求めたものである。

 今回の決議の採択は、平和安保関連法案が参議院に送付されて、参議院での与野党対立が激化する前の「嵐の前の波静かな時期」に行われたというタイミングの良さはあるものの、政策評価制度といった、地味ではあるが、行政の在り方の根本を規律する制度であり、かつ長期的な視点から取り組むべき問題について、与野党の垣根を超えて共同で取り組もうとした点で、まさに、「良識の府」としての参議院らしさが大いに発揮されたものといえよう。

 行政府の側でも、この4月から、総務省に新たに「政策評価審議会」が設置され、政策評価制度の改善への新たな取り組みがスタートしている。7月31日には、同審議会の第2回会合が開催されたが、そこでは、今回の参議院の本会議決議も配布されたと聞いている。今後、政策評価制度のより適確な改善が行われることを期待する次第である。