(大人の純愛5ステップ)3:色々話したいんです
舷一郎のすごいところは、相手の何もかもを認め、本質を見抜いてしまうことだ。舷一郎と話をしていると自分がかれに沁みこんでいく気がする。舷一郎は、すべてを受け止める。そのうえで、理解をしていくのだ。誰に対しても決して否定はしないし、偏見も持たない。
そして一度かれに認められ理解されたら。舷一郎はたとえどのような人物であっても見捨てないだろう。
舷一郎と二人で話がしたいと雲井が申し出た時、舷一郎は気楽にいいですよと応じた。しかし、かれの両脇を固める二人の男は不満げな顔になった。
二人きりになろうと別室へと舷一郎を促すと、当然のようにかれらもついて来て雲井に無言の圧力を与えた。笑って大丈夫だからと舷一郎がたしなめると、しぶしぶと部屋の前で立ち止まる。しっかりと雲井に何かしやがったらただではおかないと目で語り、番犬ヨロシクドアの前で待つ構えだ。
二人の屈強な男を身の内に引き入れた強さを持つ、舷一郎。しかし雲井はまだその中へと入れていない自分を感じていた。やわらかい泡の膜で護られているような舷一郎の心は、だが一筋縄ではない。雲井は舷一郎を支える一人になりたかった。それこそが自分を強くするのだと思えたのだ。尊敬する公文に対する感情とは別のものだ。仕えたいというのではなく、力になりたい。かれの輪の中の一人になり、そこで自分を発揮したかった。そのためには舷一郎に認められなくてはならない。かれのきょうだいに認められるためにもまずそれが必要だった。舷一郎はすべてを聞き、受け止めてくれるだろう。いろんなことをわかりあえたら、それはとても素晴らしいことだ。舷一郎、色々な話を君としたい。