35歳でセーラー服で





*この話はアホです。酔っ払いのノリと勢いでできています。
*罠ではありません。
*すべての松受けったーさんに捧げます。





 これを着てくれないかと如月克己が角松洋介に差し出したのは、二人にはおよそ似つかわしくないセーラー服だった。
 防大の夏用制服といった男物ではなく、どこからどうみても女子学生服。時代のせいだろう、紺色のスカートは膝下の丈だった。
 角松の眼が丸くなる。尾栗がぴゅうと口笛を吹き、菊池は凍りついた。梅津は何も言わずに如月を見つめ、説明を求めた。

「…別に私が用意したものではありません。草加少佐の使用していた部屋を捜索したところ、これを発見しました」

 如月が顔色ひとつ変えずに取り出したのは、一枚のカードだった。受け取った角松が見ると確かに草の筆跡で『角松二佐へv』と書いてある。彼は突然自分がシベリアにでもいるのではないかという気分に陥った。かわいらしいピンク色の、ハート型のカードに、いかにも昔の人らしい達筆。乙女なのか年寄りなのか、草加拓海がものすごく遠い境地へ到達してしまったようで、ちょっぴりやるせなくなる。


「いくらなんでも少佐が角松二佐にこのようなものを用意するのは、なにか裏があるのではと探ったところ、」

 如月の説明は続いている。やや口調が丁寧なのはここが「みらい」だからだろう。

「ところ?あったんだな、裏が」

 草加のことだ、むしろ当然だろう。あんまり知りたくないが、聞いておかないと気がすまない。
 如月はじっと角松を見つめ、「ああ」とうなずいた。しかし何故か言おうとしなかった。

「なんだ?」
「悪いが、着てくれなければ教えられん。着ないと言うなら他をあたる」

 自分が着るつもりはないらしい。どうも神妙な顔の如月に、草加のいやがらせ以外の何かがあるのだと察した角松は、不承不承承諾した。
 しかし、着てみたものの、おかしな感じだ。
 いつも作業服を着ているせいで、腹回りが見えそうという感覚に慣れていない。おまけにスカートは空気が流れ、足元がすうすうして落ち着かない。むずむずと笑い出したくなるような不愉快さだった。おまけに着る前は入らないのではと危惧していた女子制服はどういうわけか角松にぴったりのサイズだった。特注品だろうかと疑ったが、よく見ると名札らしきものがついていた。掠れていて名前は読み取れない。

「…で、なんだよ裏って」

 角松は部下たちの視線を苦労して無視し、真面目な顔を作った。如月も真面目な顔でうなずき、ひと息に言った。

「それを着ていた女学生はすでに死んでいるのだがそのセーラー服にとりついている」

 断定の口調だ。予想外すぎる『裏』に角松たちが一斉に固まる。着る前に言えと「みらい」総員のツッコミが心の中で木霊した。。

「そ、それで…?」

 すでに青褪めている菊池がふるえ声で尋ねた。

「彼女が言うには未婚のまま死んだのが悔しくてたまらないらしい。せめて一度くらい、男を知りたいと言っている」

 見えてるのか?相槌を打ちながら語る如月に全員冷や汗だ。

「つ、つまり…?」

 ぎぎぎ、と錆びついた機械のようにぎこちない笑みを作って尾栗が尋ねた。

「角松二佐。…彼女が満足するまで頑張ってくれ」
「ちょっと待て!!」

 バン!と机を叩いて角松が立ち上がった。羞恥と焦りで顔が赤くなっている。

「俺は男だぞ!だいたいなんだって俺が…!」
「女性にこんなふしだらなことを頼めるか」

 ふしだらときた。なにやら古めかしくも淫靡な響きがある。もっともな反論だけに角松も言葉を詰まらせた。だが引き下がれないのも確かだ。

「俺を選んだ理由は?納得できんぞ!」
「一番てっとり早い」
「?」

 はしょりすぎの説明に首をかしげた角松に、如月はどこか忌々しげに告げた。

「私がセーラー服を持って「みらい」へ来たという話はおそらく草加に伝わるだろう。少なくともそれから解放される手段のひとつは解決できる。ついでに少佐を拘束なり暗殺なりするのもいいだろう」

 拘束はともかく暗殺はどうか。角松は一瞬眉をひそめたが、今は草加のことを議論している場合ではない。はっきりいって草加より、自分の貞操のほうが危機だ。

「俺がいやだと……っ」

 拒否をしたらどうするのだと言う事はできなかった。

「あ……っ?」

 角松は一瞬硬直し、よろよろと椅子にへたりこんだ。周囲の驚きの視線のなか、彼はせつなげに息を荒げている。

「く……ぅ」

 ざわざわと制服に締め付けられ、くすぐったさと紙一重の快感が走りぬける。ぎっと角松は如月を睨みつけた。

「お、まえが…、やれば、いいだろう…っ」

 まことにごもっともな意見を、如月はばっさりと切り捨てた。

「俺はだめだ。断られた」

 とりあえず自分で解決しようとはしたらしいと知り、角松の勢いが削がれた。どういうわけか角松にぴったりのセーラー服は、如月にはちいさすぎたのだと言う。

「なんでだ?」
「持ち主は未婚女性だと言っただろう。男と関係があった体ではだめだと言うのだ」

 衝撃の告白に今度は一斉に、如月に視線が集まる。角松たち現代人にはにわかに理解しがたいが、如月はいたって平然としていた。

「だまし討ちで着せたのは悪かったと思うが、草加に騙されるよりはましだろう」

 悪かったというわりに謝罪はなかった。如月にしろ草加にしろ、角松が着ることは決定済みのようだ。
 さすがに見かねた尾栗が口を挟んできた。

「脱ぐことはできないのか?」

 角松は力なく首を振った。ファスナーのホックはがっちりと閉じられ、開く気配もない。無理矢理脱ごうものなら先ほどのように官能をくすぐられてしまうだろう。

「好きな男に、抱かれてくれ」

 感情を殺した如月の声が、角松にトドメをさした。





1:まークンを幸せにしてみる
2:尾栗にセクハラされました
3:如月に責任とってもらう
4:草加に逆襲する
































1:まークンを幸せにしてみる を選択



 松は自室に閉じこもり、さてどうすべきかと頭を痛ませていたが、考えていても仕方がないと実に彼らしい結論に達した。

「雅行…ちょっといいか?」

 CICの主は不機嫌なオーラを撒き散らして部下をびびらせている最中だった。草加に怒るべきか如月を憎むべきかわからなかったせいもある。

「洋介!」

 それが角松が現れたとたんにぱっと変化する。部下たちは角松に感謝すると共にビミョーに似合ってしまっているセーラー服姿の副長に対し無言を貫くという礼節を示した。
 角松が菊池を呼びに来たということは、つまりそういうことである。「盛大に振られている犬の尻尾が見えました」と後に語ったのは彼の将来のためにあえて名を伏せておくがひげもじゃの眼鏡である。

「…こんなことを頼んでしまってすまない」

 部屋に入るなり角松はまず第一に謝った。菊池にしてみれば願ったり叶ったりであることを当然親友は知らない。気づきもしていなかった。

「い、いや。気にするな」

 菊池は眼鏡を抑えることで動悸を抑えようとした。セーラー服の角松洋介(35歳)はとてもまぶしく見える。他に頼めるやつがいないと角松がはにかんだ。尾栗を誘えば乗ってきたと菊池は思うが、彼はすでに結婚していて、奥さんとも知りあいだ。その点、角松は義理堅い男である。

「キスをして…いやじゃなかったら、抱いてくれ」

 好きな人から欲情して潤んだ瞳でそんな口説き文句を言われて、拒める男がいるだろうか。菊池はふるえる指で彼の頬に触れた。そっと、くちびるを重ね合わせる。

「……ん」

 角松が甘い声を漏らした。はじめからその気になって(させられて)いる角松は薄くくちびるを開け、舌先でちろりと菊池のくちびるを舐めた。

「う、わ…っ」
「えっ?」

 驚いてついキスを止めてしまった菊池に、角松はいかにもがっかりという顔をした。

「い、いやだったわけじゃないぞ。ただ、ビックリして…」

 あわてて言い訳をする菊池はまったく動転している。ディープキスくらいでいちいち驚いたと告白するのは甲斐性なしだと自己申告するのと一緒だと気づかなかった。角松は目を丸くし、やさしく微笑んだ。

「良かった。…大丈夫、俺にまかせろ」

 固い艦内ベッドに菊池を寝かせると、自分からキスをした。舌を絡ませあい、その間にも器用に菊池のベルトを外し、前を寛げてしまう。

「よ、洋介…」
「気持ちよくしてやるよ」

 すでに兆していた菊池のそれに指を這わせる。なんだか逆だと菊池は思うが、角松によってもたらされる快感の前にその思いは霧散していく。防大時代からずっと好きだった彼。言葉にすることはきっと一生ないのだと決め付けていた愛の言葉を囁いてもいいのだろうか。
 はじめて見るというわけではないが、菊池のそれを愛撫しながら角松は感動していた。セーラー服に取り付いているという彼女の感情が角松にも伝播しているのだった。しだいに熱を帯びてきた自分を感じ、たまらなくなった角松は自分も下着を脱いだ。スカートというのはこういうとき便利だなと男ならではの感想を抱く。色気もなにもない青い縦縞のトランクスを床に落とし、妖艶に笑う。

「雅行、俺のも触ってくれ」
「あ、ああ…」

 セーラー服のスカートの中に手を入れるのはなんだか背徳的だ。菊池はごくりと喉を鳴らし、そろそろと指を上へと這わせていく。引き締まった双丘を揉みしだくと角松が耐える顔をした。

「そ、そっちじゃない。…まさゆき」

 同じところを触って欲しいのだ。菊池はかまわずに双丘の奥に隠されている秘所をなぞった。びくりと腰が揺れ、菊池を弄る指に力が入る。

「あ……っ」
「っ……」
「あ、悪い」

 痛みについ顔を顰めた菊池に謝って、がっしりとした指を器用に蠢かせる。とろとろと溢れてきた雫に感嘆のため息が漏れた。

「ちゃんと…感じてくれてるんだな」
「…まあな」

 好きな人が触っているのだ、当然だろう。角松はうっとりと笑うと、勃ちあがったそれに自分をあてがった。

「慣らさなくて平気か?」
「ん…、へーき…」

 狭く熱いそこに飲み込まれて、菊池の声が詰まる。角松は首を仰け反らせながらゆっくりと腰を沈めていった。はじめて味わう、体が開かれていく痛みに、涙がでた。

「あ…ぁ……、あ…」

 セーラー服を脱ぐこともできずに男をまたいで喘いでいる角松は、なんとも倒錯的だった。菊池は腹の上に置かれた手首を掴み、腰を揺らした。汗ばんだ手が拳を作る。

「あっ、は……っぁん、あぁ…っ」
「……っ、洋介…っ」

 ギシッと狭いベッドが悲鳴をあげる。菊池は上にいる角松の表情にくちびるを噛み締めた。辛そうな、切なそうな顔をして眼を閉じている。胸元で結ばれた鮮やかな赤いスカーフが揺れていた。

「あ……ぅ…、ま、まさ…ゆき…」

 せっぱつまった声で名前を呼ばれてたまらない気持ちになる。

「洋介…好きだっ」
「え…?」

 うっすらと眼を開けた角松の腰を抱え、菊池は動きを激しくした。すぐにきゅうと締め付けられる。体の一点を貫かれ支えている角松は急な追い上げに翻弄された。

「あ、あぁっ、ま、ま…って。や、何…っ?」

 角松が眼を見開き、結合部を振り返った。スカートに隠されて見えないそこから、熱い液体が吹き零れている。何をされているのか悟って、さあっと頬が朱に染まった。自分の下にいる男は息を荒げ、脱力している。

「あ、な、中に……?」
「よ、すけ……」

 菊池はスカートの中に手を入れ、中を犯されている快感に震える角松を掴んだ。上下に扱き、くびれを乱雑に押し撫でてやる。角松は泣き出しそうな顔をして、びくびくと体を震わせた。

「ん。あ…っい、いく…」

 一瞬角松の体が強張り、やがて弛緩した。菊池の手を濡らしたものに、自分が何をしたのかを否応なく自覚して角松は罪悪感に襲われた。いくら仕方がなかったとはいえ、親友とセックスしたのだ。
 体を離し、後始末をする。互いに気まずいせいで、無言だった。
 ぱちん、と微かな音がして、セーラー服のホックが外れた。どうやら解放されるらしい。

「雅行…すまなかった」
「いや。…別に」

 役得だったし、正直なところスッキリした。なにより菊池はドサクサまぎれとはいえ想い人に告白できたという満足感があった。

「洋介、さっきの…」

 本気なのだと言う前に、角松のなぜか哀しげな笑みを見つけて菊池はためらった。

「…嘘でも好きだって言ってくれて、嬉しかった。気を使わせたな」
「………」

 そうではないのだ。菊池はずっと角松のことが好きだったし、今も愛している。菊池は大声で喚きだしたい気分に襲われた。角松が自分に抱かれに来た理由に、深い意味がないと悟ったのだ。彼は本当に、ただ呪われたセーラー服を脱ぐためだけに菊池を利用したのだ。だからこその謝罪であり、感謝であった。

「………」

 青褪めた菊池に完全に誤解した角松は、如月と草加を殴っておくと約束して、別れを告げた。



































2:尾栗にセクハラされました を選択



 セーラー服姿の角松を上から下までじろじろと眺めまわした尾栗はつくづくと言った。

「エロいな、洋介」

 直後に飛んできた拳を受け止めてその場で一回転して後ろをとると、尾栗はスカートの端を掴んだ。えいやっとめくりあげたスカートの内部には魅惑の三角形ではなく、なんとも色気のない縦縞のトランクスが存在していた。

「な〜んだ。つまんねえの」

 あーあがっかり。わざとらしいため息は自分を慰める演技であると角松も親友の長い付き合いでわかっている。しかしやはり、ここは怒るところだ。

「まいっちんぐ。…なんて言うと思ってんのかこの馬鹿野朗!!」

 角松の怒号が士官室に響きわたる。結局言っているあたり、なんだかんだで角松もノリがよかった。

「…で、結局どうすんの?ソレ」

 どうどうと角松をなだめた後、うって変わって真剣な表情で尾栗は腕を組んだ。

「如月中尉に訊くが、ただ男と寝れば済む話なのか?」

 話を振られた如月はじっと角松を見つめた。正確には胸元で結ばれた赤いスカーフ。そこに彼女の顔やら口やらがあるのだろうかと想像すると不気味だが、顔色の変わらない如月が相手ではそこまでわからなかった。

「…好きな人。よくわからんが、自分のことを好いてくれる男と結ばれたいらしい」
「彼女のことを?それとも洋介?」
「角松二佐を、だ。こういってはなんだが、ずいぶん夢見がちだ」

 セーラー服の彼女と相性がいいのかシンクロ率の高い角松は如月の言い分にムカっとした。ふーんとうなずいた尾栗が立ち上がり、角松を背後から抱きしめ、耳元に囁いた。

「洋介…、好きだ」

 低い声は意外なほど真剣だった。角松はゾクリと膚を泡立ててしまった。胸が熱い。ごまかしようのない歓喜に包まれ、角松は振り返った。

「こ、康平…!」
「俺がどれだけお前のこと好きなのか、教えてやるよ」

 がっしりとたくましい腰に手を添えてエスコートし、立ち上がらせる。目指すは居住区、角松の寝室だ。士官室を出る直前、尾栗は振り返ってウインクを投げてよこした。うまくやってくれるつもりらしい。一部を除く男たちは安堵と羨望に忙しい。一部の男だけは先を越された嫉妬に燃えていた。



「洋介…」

 ドアを閉めるのももどかしいと、部屋に入るなり尾栗は角松にキスをした。焦った角松の手が尾栗の肩にかかるが、引き剥がす強さはない。がっつくほど求められて、体が疼いた。

「あ…っ、ん、…ちゅ…っ」

 セーラー服の隙間から、尾栗が手を伸ばしてくる。脇腹をくすぐられ、角松は身悶えた。
 尾栗は角松をドアに向き直させると、手を上へとすべらせた。少しずつ上着がめくれ、膚があらわになっていく。みっしりと筋肉のついた胸を揉みしだいた。

「ぁ、や……っ!胸は……っ」

 きゅっと乳首を摘まれ、角松が息を飲んだ。ドアに額を擦り付けて縋りつく。尾栗は片手をスカートの中に潜り込ませると、必要なぶんだけ下着をずりおろした。胸とそこを両方同時に嬲ってやる。

「ああっ、やぁ…っ、両方、やだぁ…っ」

 角松から溢れた雫が床に水溜りを作る。背を反らせ腰を引きそうになるのを許さず、尾栗は前のめりの体勢にさせた。ばっとスカートを逆さまにしてしまう。さすがに日焼けしていない、白い双丘が尾栗の眼前に広がった。つい、顔がにやけてしまう。

「かわいー洋介の、やらしいトコ、俺に見せて…?」
「ぅ、んんっ。康平、俺…っ」

 涙目になって角松が振り返った。ドアに縋っていた片手をひきはがし、尾栗は取り出した自分のものを握らせた。角松と同様、それは固く勃ちあがっている。

「あ…っ」
「わかる?すげえ興奮してる」
「これ…っ、これ……挿れんの?」
「そうだよ」
「…無理だ」

 はっきりいって入るとは思えない。怯んで脅えた表情に、尾栗の中で征服欲が刺激される。濡れそぼった指で蕾を撫で、少しだけ押し潰す。キュッと締まったそこに、獰猛な気分になった。

「ちゃんと、濡らしてやるからな…」
「え、や、やだ…っ」

 ずり、と双丘の割れ目に尾栗は自身をあてがい、先走りの液体を擦りつけた。時々尖端で蕾を突いてやることも忘れない。いつそれが挿入されるかわからない恐怖に、角松が脅えた声で訴えた。

「こ、康平…っ、や、こんなの……っやだっ」
「な、洋介、イイ、だろ…?」
「い、…いい、からっ。も、はや…く…っ」

 じれったくてたまらなかった。期待で胸が苦しくなる。セーラー服の彼女もそう思っているのだろう。早く、愛されたい。
 そこに熱い塊があてがわれた。と、次の瞬間には一気にそれが入ってくる。何の気構えもしていなかった角松は衝撃に目を見開き、叫んだ。

「ヒッ!ああああッ!」
「く……っぅ」

 尾栗も低く咆哮する。はじめて開かれた体は脅えて尾栗を排除しようとぎゅうぎゅうに喰い締めていた。痛みにいったん引き抜き、また突き入れる。激しさを増す尾栗に、角松は竦んでしまっている。

「も…ちょい、ゆるめて…」

 尾栗の声が聞こえているのかいないのか、角松はただ頭を振った。脱力し、膝から崩れて落ちそうになる。指先まで痺れている。ただ尾栗の存在だけが、うとましいほど熱かった。

「ぃや…っ、もぅ…やめろ…っ」
「洋…すけ…っ」

 とうとう角松が崩れ落ちたが、尾栗の楔は入ったままだ。腰を高く掲げられ、背を丸めて懸命に耐える。快感なんてものではなかった。嵐のように理性がなぎ倒されていく。
 尾栗も限界が近かった。どうしてやろうかと思う。角松のあえぎにはまぎれもない嬌声が入り混じり、彼と彼女が悦びに咽んでいることがわかった。
 ぐっと奥まで突きいれ、尾栗はすぐさま引き抜いた。反射的に締め付けられる。

「ぃ…っ、ゃあアッ」

 びくびくと角松が痙攣した。熱く火照り桃色に染まった形の良い双丘に、尾栗は精を吐きかけた。濃紺のセーラー服まで飛び散り、汚していく。尾栗につられたのか、角松も射精していた。



「あー…、すげー良かったー」

 尾栗が感想を述べた。正直すぎる男にようやくセーラー服を脱ぐことができた角松がじろりと据わった目を向ける。

「なにが良かった、だ。むちゃくちゃやりやがって…」

 叫びつかれた喉が痛い。喉だけではなく、むちゃくちゃやられたところも痛かった。結局のところ角松も満足したのだが、それしたってやりすぎだろうと思う。愚痴のひとつも言いたくなるというものだ。

「俺、はじめてだったんだぞ。もっとやさしくするもんだろうが」
「はじめてだからやさしくしてねって?言ってくれりゃよかったのに」
「言うか、馬鹿」

 あーくたびれたと角松はベッドに横になった。慣れ親しんだ固いマットは、ほのかに煙草臭い。尾栗がそんな角松を覗き込んできた。

「俺さ…」
「ん?」
「ちょっと、本気だった」

 過去形になってしまった告白に、二人とも微笑するしかない。済んだこと、終わったことだと互いに理解しているのだ。もう戻らないということも。

「そうか…。俺もちょっと、本気だったよ」

 セーラー服の彼女が、くすくすと笑った気がした。




































3:如月に責任をとってもらう を選択



 伝えるだけのことはしたと、如月はしれっとしている。角松は元凶のセーラー服を握りしめ、そんな男を睨みつけた。好きな男に抱かれろと言われても、「みらい」の誰かひとりを選べば誰であれ角が立つのは目に見えている。

「…如月!来い!」
「………、俺か」
「お前以外の誰がいるんだよ。せっ、責任とりやがれっ!」

 くっと如月が肩を振るわせた。ウケを狙ったつもりのない角松は羞恥と憤りで頬を赤くする。如月は立ち上がると梅津に頭を下げた。艦長は仕方がないと言いたげに苦笑するのみだ。

「副長」
「はい」

 艦長の呼びかけにぴっと背筋をのばした副長は、

「負けないようにな」

 どういう意味ですかと問い質したくなるのをかろうじて飲み込んでいた。



「お前…本当に見えてるのか?」

 がっちりと締まったままのセーラー服のホックはやはりどうあっても目的を果たすまで外れるつもりはないらしい。とりつかれているのは角松にもなんとなくわかっていた。これからこの男に抱かれるのだというときめきで胸が苦しいくらいだ。これはおそらく彼女の感情だろう。

「はっきりと見えてはいない。声が聞こえる」
「声…」
「…すまない、角松」
「まあ…こうなった以上は仕方ない」

 如月は首を振って「嫉妬した」と言った。

「それを発見して由来がわかった時、俺はそれを着たあなたが草加に抱かれるのかと思った」
「それが俺にこれを着せた本当の理由か?お前が嫉妬することじゃないだろう」
「好きだから」
「え…っ?」
「好きだから、嫉妬したんだ」

 如月の表情は相変わらず透明で、嘘か真かの判別がしにくい。だがこの手の冗談を言ってしまえる性格ではないことを角松は知っていた。如月はひとの心を弄ぶことをよしとする男ではない。本気なのだ。頬が赤くなるのが自分でもわかった。他人のものではないときめきで心臓がうるさかった。
 おそるおそると伸びてきた手が頬を包み、そっと交わされるくちづけに酔う。いやらしさを感じさせない手つきで如月が左胸に触れてきた。そこに誰が棲んでいるのか、確かめるように。
 胸がつまりせつなくなった角松は大きく息を吸い込んだ。

「どうせなら…罠みたいな方法じゃなくてお前と愛し合いたかったけどな」

 婉曲で直接的な角松の告白に、如月のくちびるが笑みの形を浮かべた。

「それは、また今度にしよう」
「え……あ…」

 上着の中に手を入れられ、胸をまさぐられる。うって変わって性的な愛撫に角松は焦った。あらためて言いたくはないが、抱かれる行為ははじめてなのだ。よろよろとベッドに辿り着き、横にされる。ふわりと花びらのように広がったスカートに恥ずかしくなる。

「ん…っ」

 如月が上着をめくりあげ、胸に吸い付いた。くすぐったさの奥にある甘い疼きに角松は汗ばんでいくのを自覚した。口元にあった赤いスカーフを噛んで、声を殺す。

「んぅっ、ふ…っんン……っ」

 唾液まみれになり固く立ち上がったちいさな粒を、如月の指と舌が執拗に押し潰したり摘んだりしてくる。そこじゃない。角松は内股を擦りあわせた。もっと奥を、直接触って欲しい。

「きさらぎ…っ」
「……ん」

 じょじょに下がっていったくちびるが臍にちゅうと吸い付き、もどかしさが弾けた。頭の片隅で男の狡さに対する怒りがあったものの、もはや二の次だ。

「さ、触って…っ。もっとちゃんと…」

 してくれ。言い終わる前に如月はスカートをまくりあげた。縦縞のトランクスに一瞬硬直する。なんというか、角松にしては意外すぎる可愛らしさだ。下着といえば褌しか知らなかった如月は簡単に脱ぎ着ができるトランクスに感嘆した。それを脱がせてしまうと、角松を象徴するたくましい牡があらわれた。ふるえながら勃ちあがり、早くしろとばかりに濡れ始めている。

「かわいいな、角松」
「な、なに言って…、あ!」

 聞き捨てならないことを肝心な部分を見ながら言われて動揺した角松が、抗議をしようと頭を持ち上げた。獲物を見つけた肉食獣のような目をした視線とぶつかり息を飲む。如月がぺろりとくちびるを舐め、大きく口を開けた。

「あ……ぁ……」

 ゆっくりと口腔内に飲み込まれ、厚い粘膜に包まれる。ぞわっとした快感に跳ね上がった足を如月がさらに大きく広げた。慣れない体勢に付け根が痛む。それ以上に如月に咥えられたものが甘い疼きを訴えた。
 舌先が緩慢すぎる動きで肉の形をなぞっていく。時折如月の喉が上下し、唾液や溢れてきた淫液を飲み下しているのがわかった。可愛いと称されてしまったものはいまや凶暴な変化を見せているというのに、如月はやさしくするのをやめない。やわらかい快感が下腹部に溜まっていくようだ。

「はっ、…あぁ…っ」

 そんな愛撫などされたことのない角松がのけぞった。腰が勝手にくねり、もっと強い刺激を求めてしまう。シーツを掻く手に力が入った。緩やかに追い詰められて泣きたくなる。

「ゃ…っ。も、もう…や……。おかしくなる、おかしく…っ」

 如月は淫靡な液体をたっぷりと指に塗し、待ちわびているそこに埋め込んだ。どこよりも熱い蕾ははじめての侵入者に脅えて絡みついてくる。如月の濡れた指が隠された肉の中にあるやわらかくも固くもある果肉を見つけ、押し潰した。

「……ひっ?あ!ああぁっ。やぁっ」

 強烈な快感に角松の体が跳ね上がった。抑えることのできない嬌声があがる。涙が散った。咄嗟に手を伸ばして如月の頭を掴んだ。麻痺した指に絡みつく柔らかな髪さえも気持ちが良い。

「やめ、て…っ、……っらぎ、やだぁ…っ」

 肉壁を突かれ、擦られ、拡げられる。喘ぎ続けているせいで閉じられない口の端から唾液が伝い落ちた。
 如月がようやく口を解放した。ねっとりとした液体をちょろりと舌先ですくい、飲み込む。角松はぼんやりと潤んだ視界の中、彼を見た。解放されたものの極めていない体がせつなくてたまらない。悪辣な指はなおも体内に留まり、角松に逃避を許さなかった。2本に増やされ、動くたびにぐちゅりと卑猥な音が鳴った。
 角松はぱくぱくと口だけを動かした。何を訴えたいのか、言葉がでてこない。ただもっと、如月を感じたい。

「角松、欲しいか?」

 耳元に囁かれて電流のようにぞくりとしたものが背筋を焼いていく。欲しい。何が?わからないまま反射的にうなずいていた。くれるというのなら欲しい。もう許して欲しい。

「ん…っ、欲し…もっと…っ、…願ぃ……」

 手足を絡めて如月に擦りつけ、角松がねだった。我を忘れた媚態に如月は愛おしさでいっぱいになる。額にそっとくちづけた。それからようやく綻びはじめた蕾を花開かせるべく自身のもので貫いた。

「あ、あぁっ。…す、すご……っ、こんな…っ、こん、なの…っ」

 熱に魘されたように言われた感想に、如月ははにかんだ。きゅうきゅうに締め付けてくる肉壁と、角松の表情。それに声。どれもこれもが好きすぎて、泣きたいほどせつなくなった。腕を伸ばし、自分よりも逞しい背中を掻き抱いた。

「角松…」

 囁かれた高熱の囁きが蒸発し、皮膚に吸収されていく。たまらない。如月の呼吸にさえ感じてしまう。
 指よりも太く固いもので犯され、同じ箇所を攻めたてられる。強く弱く緩急をつけて出し入れされて角松の目から涙が溢れた。焦らされている。とうとう自分で自分のものを解放させるべく手を伸ばした。撫で擦るとあっというまに蜜が溢れて手を濡らした。体の内側と外側からくる快感に余計混乱してしまう。体内で熱く膨らんだものを如月の屹立が容赦なく突いてくる。同時に強く締め付けてしまい、その形を自覚した。くちびるがわなないて懇願する。

「もう…も…っ、許し…て…っ如月、お願い…っ」
「出してもいいか…?」
「いい、なんでも…っしてっ、い…っ、からぁ……っ」

 こんなのははじめてだった。角松は思う。この男、如月克己の情熱を独占できるという素晴らしい時間の代償なら、セーラー服など安いものだ。とりついている彼女の存在などとうに忘れた。如月は、俺のものだ。

「如月…好きっ。好きだっ…」
「角松…っ?」

 感極まった角松が叫び、達した。肉が奥へと導くように蠢き、如月を誘っている。如月は強く腰を押し付けた。熱いものを吐き出し、最後の一滴まで角松に注ぎ込んでいく。角松は蕩けきった表情でうっとりと如月を受け止めていた。



 角松は呆けた表情で、いまだ痺れている自分の指先を眺めた。二人とも夢中になっていたせいか、何回果てたのかもよく覚えていないありさまだった。

「…意外だ…」
「何がだ?」

 2度と着ることができないほどぐちゃぐちゃになったセーラー服をどう処分するべきか考えていた如月が返事をした。成仏したのか懲りたのかはさだかではないが、もう声は聞こえてこない。

「お前があんなに激しいとは予想外だった」

 如月が顔をあげた。

「そんな落ち着き払った顔をして、あんなことどこで覚えたんだ?」
「…妬いてるのか?」
「そうだ」

 角松がわざとらしく不愉快だと眉を寄せると、如月はわずかに考えるそぶりをみせた。

「どこでというか、当時の教官や上官が相手だ。妬くほどの仲ではなかった」
「好きだから」
「………」
「好きだから嫉妬するし、独占したい。俺が言うのもなんだが、他の男の話なんかするな」

 腕を組み偉そうに言ってのける男を如月の冷静な眼がじっと見つめた。そしてそれが角松なりの冗談であることに気づく。訊いてきたのは角松なのだ。

「貞節を守れというのなら、角松二佐。責任をとっていただくが」

 よろしいか。よろしいもなにもない。こんな時にまで表情の変わらない特務中尉に小憎らしくなった角松はデコピンをお見舞いしてやった。それから恋人のくちびるに思い切り、接吻した。


































4:草加に逆襲する を選択



 角松は脱ぐこともできないセーラー服姿で艦内を闊歩していた。胸中には草加と如月に対する怒りが渦巻いている。どういう予感か、角松は草加が(セーラー服姿の自分を犯すために)現れることを疑っていなかった。大いに癪だが、しかたがない。抱かれることについては割り切ったが、復讐はするべきだろう。

「角松二佐!」

 と、そこへ満面の笑みを浮かべた草加がまんまとやってきた。そこまで喜ばれてしまうと怒りが吹き飛ぶ…というより怯んでしまう。一粒300メートルもかくやのスピードで駆け寄ってくる草加に一瞬ためらい、角松は決意した。ぐっと固い生地で作られたスカートを掴む。

「草加…っ、これでもくらいやがれ!」

 不穏なセリフに草加が止まりかけたのを見逃さず、角松はスカートをガバッと広げた。

「たっ…縦縞っ」

 当然のことながらご開帳とあいなった角松の下着に草加の目が釘付けになる。一気に間合いをつめた角松はもっとも効果的な攻撃を開始した。

「この…変態セクハライメクラ野朗!!」

 空気を切る音をさせて蹴り上げた角松の足が、容赦なく草加の股間にめりこんだ。反応しかけたところを潰された草加は目玉が飛び出るほどの痛みに声もなく前屈みになりそのまま倒れ付す。
 やるだけやってスッキリした角松も、この宿敵ともいえる男の醜態にちょっとやりすぎたかと焦った。同じものが自分の体にもついているだけに痛みの想像がついた。とりあえず腰をトントンしてやる。草加は無言のままそこを抑えていた。
 やっつけた場所が場所だけに桃井一尉の厄介になるのは草加の沽券に(股間に)関わると、角松はひとまず自分の部屋に草加を運び込んでやった。

「すまん、さすがにやりすぎた」
「…ひどいと思います」
「冷やすか?」
「……舐めてください」
「馬鹿」

 そんなことが言えるのなら大丈夫かと、草加の頭を軽く叩く。自業自得だ。ごろりと頭をめぐらせて、草加が角松を見上げる。
 このセーラー服をツテで入手したのは草加だが、本当に着るとは実は思っていなかった。どうやって舌先三寸で言いくるめようかと悩んでいただけに、あの忌々しい特務中尉の手腕に喝采を贈りたくなる。角松洋介の女装に色気はないが、また別の可愛らしさがあった。草加の視線に気づいた角松の頬がうすく染まる。

「…この好きモノが。よくもこんなの…」
「すみません。無理矢理でもなければ、あなたを手に入れることができないと思ったので」
「無理矢理って、…お前、最低だぞ」
「そういう意味ではなく…。それを着ると拒めなくなると聞いたものですから」
「…………」

 拒めないというのはあながち外れではなかった。角松も自分の体の変化を自覚している。体が火照り、草加に触れて欲しくてたまらない。セーラー服の彼女の影響だろうが、その気になっているのだ。

「角松さん、どうなんです?」
「ソレ、使い物になるのかよ」
「…舐めてみれば、わかりますよ」

 熱の籠もったため息を吐くと、角松が草加ににじり寄った。逆襲の被害をモロにうけたモノをそっと取り出す。大切なものを扱うような丁寧な手つきだった。
 草加のそれは赤くなってしまっていた。慰めるようにやさしく撫でると、すぐさま反応してくる。なぜかホッとした。
 角松はそこに頬をよせた。牡特有の匂いに頭がくらりとする。

「ん……っ」

 ちゅ、と軽くキスをしてからそろりと舐めあげる。草加が息を飲んだのがわかった。唾液を絡ませて吸い付き、ゆっくりと形を変えていくものを育てていく。
 女装、それもセーラー服というある意味正統なエロアイテムを着て口淫をしている自分を脳裏に思い浮かべ、角松の中にも熱が溜まっていく。無意識に掲げていた腰が揺れた。

「美味しいですか…?」

 草加が角松の頭を撫でている。ちゅく、じゅぷっと狭い口腔内で液体が攪拌される音がやけに淫靡だった。

「ぷ、はぁ…。ヘン、な、味…っ」

 舐めているうちに溢れてくる汁の味が変わっていた。粘りがでて、少し苦い。顎まで垂れているそれを指先ですくいとり、草加はこれ見よがしに舐めて見せた。ぴくんと角松の肩が跳ねる。

「飲ませて欲しい?それともかけてあげましょうか?」
「…変態め。好きにしろ」

 角松はわざとらしく顔を顰めた。頭に置かれた草加の手に力が入り、それを顔に押し付けてくる。目の前にあるやわらかくて硬い、熱くべとついた肉塊が頬を擦り、嫌悪と背徳感の奥に隠されていた快感を引きずり出してくる。再び口内に招き、しゃぶりつく。

「ン、ちゅく…っ、ふぁ…っ」

 瞼を伏せて自分のものを舐めている角松にどうしてやろうかと思う。息苦しいのだろう、目の端に涙が滲んでいる。角松自身も感じているのか腰をくねらせていた。けして上手とは言いがたい口淫だが、視覚的にくるものがある。

「…かど、まつ…さ…っ」

 尖端の孔を舌先でくすぐられ、草加が弾けた。咄嗟に腰を引き、驚いている顔をめがけて放つ。

「あ…っ、ぃやぁ…っ」

 びゅくびゅくと断続的にかけられて、角松が悲鳴をあげた。濃く粘りのある液体が顔だけではなくセーラー服まで汚していく。首筋を通り鎖骨の窪みに溜まったものがとろりと流れていった。

「あぁ…、あつ、い……」

 荒い息の中、角松が呟いた。すがるように草加を見つめている。やるせない疼きに火照った体を持て余し、次の命令を待っていた。

「自分で見せてくれたら、私も舐めてあげますよ」
「え……」

 つまり角松が自分でスカートを持ち上げて、そこを晒せというのだ。卑猥なポーズを要求され、角松が動揺する。草加は彼の頬を汚しているものを拭うこともせず、にこりと笑うと、スカートに手を潜り込ませた。下着の中で角松はすっかり兆している。

「く、草加……っ」
「ほら…角松さん」

 角松はぎゅっと目を閉じて横を向いてしまった。そろそろとスカートを持ち上げていく。さっきのように一気に広げてしまえば楽だろうに、羞恥とためらいが消えないのだ。それが余計草加を煽る結果となっている。

「あ……っ」

 膝立ちになっている角松の下着をずり下ろし、草加が角松のものを舐めた。角松が背を丸めて草加にすがりつき、スカートの中に男の姿を隠した。

「くぅ…っん、ぁ…あっ、や、草加…っ」

 手と舌で丹念に愛撫され、角松の体が小刻みにふるえる。草加は濡れた指で蕾の襞を拡げた。わずかな隙間に爪を立てないよう慎重に、侵入させていく。

「ひ、ああ…っ、だ、だめ…だっ。そこ…っ、やぁ……っ」
「…っちゅぷ…っ」

 びくん、と口の中で角松が跳ねた。口では嫌がっているが、彼が味わっているのはまぎれもない快感だ。ひくひくと蠢くそこが草加の指を誘っている。

「…どこ、がいいですか?ここ?それとも…」
「やああっ」

 2本を一気に奥まで突き入れると、苦痛と快感の入り混じった嬌声があがった。すがりついてくる手に力が入る。顔が見たくなった草加がスカートから脱出すると、汗と涙と唾液と草加の精液でどろどろになった角松がそこにいた。
 ごくりと草加は喉を鳴らした。途中で放置された角松が睨みつけてくるのがかえって苛虐心に火をつける。奥まで入れていた指を抜き、入り口で止めた。意地悪く振動させると涙目になって頭を振った。

「ゃ…だめ…。も、もうっ、くさかあ…っ」
「…角松さん」

 草加のほうが耐え切れなくなった。背後から抱え込み、子供に排尿を促がすような体位をとった。膝裏をかかえ、限界まで足を広げさせる。角松の媚態に再び硬く勃ちあがったものを、勢いよく挿入した。

「あああぁぁっ、やらぁ…っ」

 舌足らずな嬌声。草加の手に手を重ねて爪を立ててくる。ぴっちりと狭く熱いそこがさらに締まり、草加の息も詰まった。

「…っぅ…」

 痛みに草加が首に噛み付くと、角松のそこも草加に噛み付いてきた。太腿までまくれあがったスカートから、すっかり勃ちあがった角松が淫蜜を垂らしているのが見えた。

「や…ぃや…っ、ひ、ひど、く…しない……で…っ」

 腹の中が熱くて壊れそう。弱々しい訴えに草加は歯形のついたそこをねっとりと舐め、限界にふるえているそこを強く扱いた。溢れ出る粘液を人差し指で塞ぎ、それ以外をばらばらに動かす。草加が腰を揺らす必要はなかった。解放されない苦痛と追い詰められる快感に角松のそこが蠢いている。

「あぁっ、くさ…かぁっ、や、う、うごく…っ、動くな…っ」
「私は動いてません、よ。…角松二佐、いやらしく動いているのは、そちらだろう」
「や、違…っ、そんなこと…っ…あ…っ」

 ぱっと草加が手を離してしまうと、絶望的な表情で涙が膨れ上がった。くすくすと笑みを耳に吹きこんで、さらに彼を追い詰めていく。

「気持ち、良いか…?」
「………っ」

 角松は首を振ったが、止められてしまった快感に逃げることも達することもできずにおそるおそるこくんとうなずく。草加は彼を許さなかった。

「ちゃんと、言え」

 ぴんと爪弾かれ、角松の中で最後まで残っていた理性が吹き飛んだ。

「い、イイ…っ。すご…ぃ、くさ……のが、気持ち、イイ…の…っ」

 涙まじりの告白と同時に前に倒され、草加に腰を抱えられた。熱い肉塊に体内を擦られ、泣きながら、角松が達した。身の内を犯す男の迸りを受け止め、植えつけられてしまった何かを自覚した。



 互いの精液で汚れたどころではないセーラー服を草加の顔に叩きつけ、角松はただひと言「出て行け」と言った。

「用は済んだだろ。さっさと帰れ」
「角松二佐…」

 あれだけの激しさが嘘のように怒っている角松に、草加も消沈した。やり方がまずかったといえばこれ以上ないほど悪い。ほとんどだまし討ちだし、着せたのは如月だがそもそも草加が用意しなければこんなことにはならなかったのだ。

「草加……」

 立ち上がり、出ていきかけた草加の手を掴む。なんだと問う前に角松がキスをした。

「この卑怯者。罠っていうのは、相手もわからないうちに陥れるものだ」
「角松二佐?」

 角松はドアを開け、草加の背を押し出した。つんのめって廊下に出た草加が凍りつく。「みらい」総員が彼を待ち構えていたのだ。

「…じゃ、死ぬなよ」

 good luck.my sweet.
 甘い声を草加にだけ聞こえるように囁き、角松は逆襲の扉を開けた。