メンテナンス






 この手にとどめておくにはどうしたらよいか。執務室の大きなデスクに横たえた体に顔をうずめて、ギレンはふとそんなことを呟いた。

「何をです?」

 色づきはじめた肌とは対照的に冷めた表情を崩さず、シャアが何のことかと尋ねた。

「戦場で散らすには惜しいと思ってな」
「………私が?」

 くすりと笑って、シャアは先ほどギレンの秘書が出て行った扉を見やった。

「私は兵器です。…秘書にはなれません」

 何をいまさら、と言いたげだ。

「兵器というのは、人を殺すためにあるのです。使い込まずにいれば、錆びついてしまいます」

 シャアは少し体を起こして、ギレンの耳朶に噛み付いた。きつく。
 歯形が残るほど力をこめても、男は顔色ひとつ変えなかった。ぺろりと血の滲む耳朶を舐める。
「……いざ、と言うときに、暴発するかもしれませんよ」

 挑発的にシャアは笑い、唇を舐めてみせる。男はフン、と肩で笑うと、

「では、せいぜいメンテナンスをしておくとするか」

 お気に入りの美しい『兵器』の手入れを再開した。








ギレンとシャアって基本的にはこんな感じ。
ようするに化かし合い。