背中から抱きしめて・C






 背中から抱きしめられるのを、彼はひどく嫌う。理由を聞いてみても、プライバシーだの一言で済まされてしまう。いろいろと過去のある男だ。きっとなにか、大切な思い出があるのだろうと、そう単純に思っていた。
 書斎で、本を開いたまま、うたたねをしている彼を見つけたのは偶然だった。風邪をひいてはいけないと思い、何気なく、彼の肩に手を置いた。とん、と寄りかかってきた彼の頭を支えるように、抱きしめた。安心しきった顔で眠る彼に微笑して、金色の睫毛にくちびるを寄せる。大好きな蒼い瞳が見られないことを、残念に思いながら。

「      」

 その時、彼が名前を呼んだ。それは俺の知っている名前だった。



 俺が殺した男の名前。彼の全てを奪った一族の、その、名を。





 たった一度だけ呟いて、彼は幸福にまどろみ続けている。









このアムロの話はWEB拍手用におまけ的に創ったものなので、
他と微妙に設定が違います。ネオジオンにいるのかな、アムロ。