背中から抱きしめて・B






 何気なく、自分より大きな背中を抱きしめてみた。無重力の状態でなら普段は届かないその距離もふわりと一跳びで越えられる。甘えるみたいに、腕を回した。途端、背中が震え、僕の腕は振り払われた。
 あきらかに動揺している、サングラスの向こうの瞳。大きく見開いて、なんだか泣きそうなくらいに切ない蒼。
 あんまりびっくりされたことにびっくりしていると、カミーユ、とあの人はかすれた声で名前を呼んだ。
 カミーユ、カミーユ、カミーユ。
 何度も確かめるように呼んで、そうしてあの人はいつもの、僕の知っているあの人に戻った。



 僕のことを、誰だと思ったんですか?



 そう訊きたかったけれど、あの人の背中が僕を拒絶しているようで、できなかった。










実をいうとこの話がメインでした。
前話のガルシャアを前提とした一つの話にするつもりだったのですが、
これはこれでまとまってしまったのでこのまんま。
ちょっと勿体無かったな、と思う。