わたしはツバメ



 若いツバメ、というとなんだかイカガワシイ響きだが、もちろんそんな意味ではなくむしろ自虐的な気分で、ギュネイは自分がそうであると思った。
 理由はあれだ、あの他愛無いおとぎ話。王子の願いを聞き入れて、結局は命を落としてしまったツバメ。
 あなたは俺になにもしてくれない。ただ哀れっぽい瞳で俺を見つめ、あれをして、これをしてと命令するだけ。
 そして、あなたを飾っていた美しいメッキが剥がれ、醜い素顔が露わになり、やがて誰もあなたを振り向かなくなるように。そんなあなたをの願いを俺に叶えてくれと言うだけ。
 最後に俺が死んで、あなたの足元に転がっても、きっとあなたは泣きもしないのだろう。

「彼の心は鋼鉄でできているから、なにがあっても傷つかないんだよ」

 笑ってそんなひどいことを言うあなたの、たったひとつだけ残された美しい心が、俺は欲しかっただけなのに。




おとぎ話をテーマに。
これは「幸福の王子」です。
同人誌「3Q!」に収録。