「…変だな………」

 開いたままのパソコンから眼を転じて、アムロは電話回線を切った。
 もう一度ダイヤルを押す。短縮1。自宅だった。シャアが眠っていたとしても、広い屋敷には常に使用人がいるので誰もでないということはありえないのだ。
 回線が繋がる。1コール、2コール、3コール。誰もいなくても10コールで留守電に切り替わるはずだった。
 プッと音が変わる。やっと出たかと口を開きかけたが、そのまま切れてしまった。空々しい音を繰り返す受話器を戻して、アムロは考え込んだ。おかしい。
 先日のコクピット扉のことといい、このところシャアの周りでは説明のできない事態が起きている。なにより「彼女」と繋がらない。何か悩みがあれば「彼女」は夢に現れて相談に乗ってくれるのに。夢ではなくとも気づかない危険を何気なく伝えてくれたり、いつもアムロとシャアの傍にいてくれた。
 アムロは思考を研ぎ澄ませて「彼女」の気配を探る。だが手ごたえはなかった。
 次にシャアを探してみる。いつもならこんなことをしなくても彼が何をしているのか、ふっと頭をよぎることがあったのに。今はそれができない。
 変だ。異常事態だ。繋がるはずの回線が何者かにジャミングされているかのような不快感。
 アムロは今度はシャアのケータイに電話をかけた。朝、ベッドサイドのテーブルに置かれていたのを思い出したのだ。

『アムロ、メール!』

 その時、パソコンがハロの声でメールを受信したことを告げた。
 差出人のアドレスも件名もないそれは、用心して消そうとしたアムロより早く勝手に開いてしまった。

「う…わ………?」

 画面一杯に差出人の意図がズラリと映し出される。あきらかに敵意の込められた、たった一言の無数の文字。

『邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をスるな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をすルな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をするな邪魔をす