ブツン、と。
真夜中の部屋に唐突に音が響いた。独り残業をしていたシャアは何事かと顔をあげる。TVもオーディオもつけていなかった部屋は静まり返っており、続くにぶい唸るような音がよく聞こえた。
「?」
ビデオだった。シャアは傍らを見る。リモコンを収納した籠は手の届くところにあるが、今、自分の手はペンを握っているのだ。動かした覚えはない。ビデオは急速に巻き戻しを終え、再生された。
TVがつく。何のビデオだったかなと怪訝に思いつつ見守る中、TV画面はただ砂嵐を映し出している。
ざあざあざあざあ。
砂嵐がやがて見覚えのある像を結んでいくようで、シャアは咄嗟にリモコンを取り上げて電源を切った。
途端、全ての音が消え、静まり返る部屋。
何だったのだろうかとシャアは首をかしげつつ、TVとビデオのコンセントを引き抜いた。
仕事は残っていたが、やる気が失せてしまった。部屋を出る。
誰かが背後で嗤っている――ような気がしたが、シャアは振り返らなかった。