温かな瞳






周りのひとたちは彼のことを冷酷な指揮官だと、そう思っているようだけれど、私は彼が実はとても優しいひとなのだと知っている。
 そもそも指揮官なんて、冷酷で無情でなければやっていられないでしょう?部下を戦場へ送り出すのだから。死んで来いと言っているようなものだ。自分から出撃していく彼は、だから部下を守り、導き、有無を言わさずに生還させる。やさしいひと。
 彼は、だからとても損をしているのだ。あのマスクの向こうにある瞳の優しさに、気づく人がいままでいなかったのだから。

「ララァ」

 彼が私を呼ぶ。私はシャアをまっすぐに見つめ、その瞳に確かな熱があることを確信する。絡み合った視線はやがて私の体をも熱くし、私は生きていることをかみしめるのだ。

 やがてひとは死ぬ。誰の上にも平等に死という現象は訪れる。でも、私は思うのだ。私の身に死が訪れる、その時は、どうかこの瞳が私を忘れえぬ瞬間でもありますように!