強い絆


もっとも強い絆とはなんだろう。

「血だ」

なぜだか妙に自信たっぷりに、シャアが答えた。
2人で暮らし始めて、最初のころこそ人目につかないようにひっそりと生活していたのだが、アムロが仕事を始めたことにより、近隣住民との交流が、望む望まざるに関わらず生まれた。
シャアはひとの眼を誤魔化すためにアムロと同じ赤茶色に髪を染めているので、兄弟だと思われている。独身の男2人、しかもかなりいい男の部類にはいる男がいれば、集まってくるのは女性の眼だ。主にシャアに集中する秋波に、アムロは苛立っていた。
で、冒頭の質問である。

「絆って、血なの」

不満な答えだ。アムロは拗ねてみせるが、シャアはそんな彼を小バカにしたように見下した。

「当然だ。死に別れても、血という絆は途切れることはない。生まれた瞬間から強固に結びつくもの。それが血の絆だ」

言い切ってるけどさ、その強い絆で人生棒に振ったの誰でしたっけ。
アムロは大いに不満だ。それでは自分とシャアの間には、何の絆もないような気がしてきた。
何年もかけてシャアとの間に築かれてきたもの。それは強い絆とは呼べないのだろうか?