バルブタイミング

吸気行程ではピストンが上死点から下死点まで下がる時に吸気バルブが開く。
排気も同様で、ピストンが下死点から上死点に上がる際に排気バルブが開く。
この時のバルブの動きを小さい時間で区切ってみると、バルブは少しずつ開き始め最大開いた後は少しずつ閉じていく。
また、吸気も排気も気体の流れなので一瞬のうちに完了する事はない。

吸気だけを考えてみると、ピストンが下り始めると同時にバルブを開き始めるより、ピストンが下がり始める前にバルブを開き始めピストンが下がる時にはバルブが大きく開いていた方が効率が良い。
また、ピストンが下死点に達しても流れ込む混合気の勢い(=慣性)があるため少し開いていた方が、より多くの混合気が入ってくる。
排気も同じように下死点に下がりきる前にバルブを開け燃焼ガスの圧力が残っているうちに排出し始める。
また、上死点を過ぎても慣性があるため少しの間バルブは開けておき、排気を完全に行うようにする。(そもそも排気ガスが残っていたら、その分の吸気量が減ってしまう)

整理すると吸気バルブは上死点の前から開き始め、排気バルブは上死点を過ぎても開いている事になる。
つまり両方のバルブが同時に開いている時間帯がある。
実はこの時、燃焼ガスが排出される勢いによって混合気が引き込まれるために、更に吸入効率が良くなるバルブオーバーラップという現象が起こる。
バルブオーバーラップは排気が速く排出される高回転時ほど効果が大きいが、高回転時に合わせてバルブオーバーラップを設定すると低回転時に都合が悪くなる欠点がある。
総合するとエンジンの回転域によって最適なバルブタイミングが存在すると言う事。

これにより市販車では低回転時と高回転時にバルブタイミングを変化させるシステム(可変バルブタイミング機構)が登場するが、F1の超高回転エンジンでの優位性は低く採用されていない。
例え優位性があっても、メカニズムが複雑化したり重量やレイアウトでリスクが生じる場合は、バランスを取るので・・・。

VTEC方式

ブイテック。Variable valve Timing&lift Electronic Control systemの略でホンダの誇る看板技術。
低回転時用と高回転時用のカムを油圧で切り替え、吸排気バルブのタイミングとリフトを変更する。
また、低回転時に2本ある吸気バルブの片方を休止させるVTEC-Eや、連続位相可変機構を組み込んだi-VTECもある。
ミツビシのMIVEC(Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system)やニッサンのNEO-VVL(Nissan Ecology Oriented performance - Variable Valve Lift & timing)も同じような機構。

VTC方式

ブイティーシー。Variable Timing Control systemの略。
カムシャフトの角度をずらし吸気バルブの開閉タイミングを切り替える。(高回転時にバルブオーバーラップを大きくする感じでしょうか?)
トヨタのVVT(Variable Valve Timing)、VVTの進化版であるVVT-iがある。
スバルのAVCS(Active Valve Control System)、ニッサンのCVTC(Continuous Valve Timing Control)もVVT-iと同じ機構。
また、ニッサンは油圧ではなく電磁石で切り替えるeVTC(electronic Valve Timing Control)も実用化している。

電磁バルブ

F1で一時期騒がれたシステム。
スプリングや圧搾空気でバルブを閉じたり、カムシャフトでバルブを開ける動作を全て電磁石で行う。(カムシャフトは無くなると思う・・・)
これによりエンジンの全回転域で最適なバルブ動作が可能となる。
しかし、電磁石を動作させるための電源や、それによるエンジン重量や重心が上がる事など問題が多く噂のまま消えていった。

バルブトロニック

こちらも一時期騒がれたシステム。
バルブトロニックとはBMWがつけた称号でシステム的には可変バルブタイミング+スロットルレスと言った感じ。
吸気バルブのリフトをモーター駆動で無段階に変更する究極の可変バルブタイミング機構と言える。
また、バルブ動作が自由に出来るので吸気バルブにスロットルバルブの役割も持たせ、スロットルバルブを無くしたスロットルレス・システムでもある。
※スロットルレスのエンジン(左)と通常のスロットルバルブを使ったエンジン(右)の違い

インジェクターは燃料(たいていの場合はガソリン)を霧状にスプレーするような装置で、吹かれた燃料が空気と一緒にシリンダーに入る。
その際に通常はスロットルバルブ(ポートの中に丸い板があり、回転してする事で開閉する)がアクセルと連動し混合気の吸気量を変化させている。

ところでバルブトロニックはミラーサイクルに適したシステムで高回転型のエンジンには向いていないらしいとか。
ミラーサイクルとは、吸気バルブを意図的に早閉じ又は遅閉じして吸気の充填効率を低くし混合気の圧縮比を低く抑える事で高い効率と安定した燃焼をするシステム。
難しいので興味のある人は調べてみてください。(汗)

2001.07.11
2006.04.14