パラレル日台。
色々注意が必要そうなパラレル。
死にネタ?かもしれません。
菊さんが遠くへ行ってしまいます。

色々地雷かもしれませんので日台なら悲劇でも何でも食べられる!という方にしかオススメできません。
























































 真夜中、家人が寝静まった屋敷の一室、暗い部屋の中で菊はベッドに眠る少女を見下ろしていた。
 ぷっくりとサクランボのように色づく唇から規則正しい寝息が漏れている。
 心の底から愛しさがせり上がってきて、べろべろと顔中を舐めまわしたいという衝動を何とか抑えつけた。
 眠る少女を見下ろす黒い瞳は潤んでいる。





 …お嬢様とはいつも一緒でした。

 このお屋敷には、お嬢様がお生まれになる前からお仕えしております。
 お嬢様がお生まれになってからは、忙しいご両親に代わって見守ってまいりました。
 小さい頃はやんちゃでいらっしゃって、私にまたがってはご機嫌で―――毛を引っ張られたりもしましたっけ。
 高いところがお気に入りで、木に登るたび私はいつも下から見上げてハラハラさせられてばかりでしたよ。
 小学校に上がると、一日中一緒ということはなくなりましたが、それでも学校から帰ってくると、私の後ろをついて回って…いえ、私がついて回っていたのでしたっけ。
 おやつも一緒、ご飯も一緒、小学校の低学年までは寝るのも一緒でしたね。
 何でも悩みを打ち明けてくださったお嬢様のことなら、ご両親よりもよく存じ上げております。
 ご両親からくれぐれもと頼まれておりましたが、そうでなくても、お嬢様をお守りするお役目は私の誇りであり、幸せでもありました。
 暴漢からお嬢様をお守りして戦ったこともありました。
 
 けれどそれも過去のこと。
 昔のようにお守りできない、近頃では寝てばかりの私の頭を抱き寄せて、
 “菊さんが寝たきりになっても、あたしが面倒見るから、長生きしてね! ずーっと一緒にいてね”
 笑顔で言ってくださった、優しい優しいお嬢様!
 お慕い申し上げておりました。
 ずっとずっとお守りするのだと思っていたのですが―――
 年をとると、感傷的になっていけませんね。

 離れがたさに今日まで延ばし延ばしにしてきましたが、出て行かなくっちゃなりません。
 心残りがあるとすれば―――ときれいな黒髪に鼻を寄せると甘いシャンプーの香が香る。

 年々娘らしく、美しくなっていくお嬢様の恋人を見られなかったことです。
 こんなに可愛らしいのですからおモテになるのでしょう、来るべき日に向けて私は覚悟を決めていたのですが、見ることはありませんでしたね。
 ショックを受けるやもと気を遣われましたか?
 屋敷に連れてきた恋人を、お嬢様にふさわしくないとひねって差し上げるのも楽しそうだと、楽しみにしていたのですが。

 しかしもう時間切れです。
 これ以上は―――動けなくなる前にここを去らなければ。
 お嬢様との約束を守れないのは痛恨の極み、ですが、それ以上にお嬢様を悲しませたくないのです。

 やがて動けなくなって、私が心臓の鼓動を止めるとき、そのときが怖いのです。
 お嬢様の期待にこたえられなくなる、この身が…。

 あとがまを育成しておけばよかった。
 悲しみが少しは軽減されるかもしれないから。
 しかし―――

 お嬢様の気持ちが私以外にむけられるのは嫌だという嫉妬心を抱いてしまったのです。
 あとがまのことを考えるたびに、心配と嫉妬という、相反する感情に常に引き裂かれておりました。
 愚かな嫉妬などせずに、後を託せる者を育成しておけばよかったと今になって後悔しています。

 私は馬鹿な男です。
 お嬢様を悲しませたくないと思うのに、同時に、お嬢様が泣き叫んで悲しんでくれると思うと、浅ましい喜びの感情が浮かんできます。

 やはり私は去ります。
 一片の希望の欠片もない悲しみを与えたくはない。
 絶望が襲ったとしても、もう私がそれをなぐさめることはできないのですから。
 菊はきっとどこかで生きている―――と思っていてください。
 悲しまないでください。
 たとえ遠く離れていても、あなたの笑顔が私の幸せなのですから。

 うまい具合に外は雨です。
 もはや見苦しく這うことしかできない私の歩行の痕跡を消してくれるでしょう。
 いただいたものはすべてお返しして、身一つで菊は出て行きます。
 ご挨拶の一つもしない不義理をお許しください。





 まろやかな頬に唇を寄せて、菊はしばらくためらったあと、ぺこりと頭を下げて静かに部屋を出た。
 外はざあざあ降りの雨、叩きつけるような雨に紛れて消えていった。





 翌朝、愛犬が消えたことに気付いた娘は泣き叫んで嘆き、
 屋敷のものが総出で探したが、ついにその黒い犬の姿が見つかることはなかったという―――
















というわけで!執事パラレルに見せかけた犬化パラレルでしたー!
いやほんとごめんなさいまじで(汗)
わんちゃんわんちゃんいうなら犬化すればいいじゃない!と当初は湾ちゃん犬化で妄想してたんですが、
本田さん犬化おいしいじゃない!でっかい黒犬がお嬢様に仇なすものは容赦しません!って
湾ちゃんのナイトなんだよ!となりまして。気付いたらこんな体たらくに(汗)死にネタ?ですみません…orz



実はこの絵↓のオマケだったんですが…誕生日祝いにこれはないよ!と思って…(結局出しちゃいましたが)