ロシアが日本の子供だったららぶらぶになるのでは…というメッセージをいただいたので試しに書いてみました。
父日本、子供ロシア、妻台湾だそうですvv日本君は大黒柱です。
いじくりまわしているうちに日台←露になったような気がします。
え〜…らぶらぶ…?(汗)
いつにもまして妙な感じです。
これは夢だ。 夢の中で小さなロシアはランドセルを背負って走っている。 さざんか咲いた垣根の曲がり角、見慣れたこげ茶色の板塀が見えた。 ガラガラッ 「た、ただいま…」 「おかえりなさい、お父様はもう帰ってますよ」 出迎えた長い黒髪の少女が笑いながら告げる。 靴を脱いで廊下を通って居間を覗くと、ちゃぶ台の向こうに広げた新聞が見えた。 「ただいま帰りました」 ロシアの声に反応してそれががさりと動いた。 「おかえりなさい。お疲れ様です、学校の勉強を頑張ってますか?」 生真面目な日本はいちいち読みかけの新聞をちゃぶ台の上において、こちらを向いて挨拶に答える。家族には、目を見て話すんだね。 なかなかに躾が厳しい日本に注意される前にロシアはうがい手洗いを済ませ、ランドセルを下ろして居間に戻った。 日本は真剣な顔をして新聞を読みふけっている。 目の高さに新聞を掲げて胡坐をかいている日本と新聞の間にスポッともぐりこめば「おや」と片眉を上げた。 ほとんど動かない表情、けれど膝の上にロシアを迎えて雰囲気は寛いだものになる。 ロシアは今日学校であったこと、隣の席の子の話、帰り道で見た小鳥のこと…ぽつりぽつりと話す。 背中を日本の懐に預けると温かく、新聞と日本に挟まれて、四方を包まれて守られているようでやけに安心する。 表情は見えなくても日本の空気は完全にロシアを許容しているものだった。 「日本さん、お風呂に入っちゃってください」 台所から居間にひょこっと顔を出した台湾は日本の膝の上の子供に目を留めて微笑んだ。 「あら、今日は甘えんぼですね」 と言いつつ唇に人差し指を当ててちょっと物欲しそうな、寂しそうな表情を作る。 日本はあなたまで子供ですか…とこっそり苦笑して、台湾を招いた。 「台湾さんもいらっしゃい」 「えっ、いいんですか?」 あからさまに表情を明るくした台湾はロシアが明け渡した片膝にぺたっと座った。 二人分の体重を支えて、小柄な日本はちょっとぷるぷるしていた。 ■ いーち、にーい、さーん… ちゃぷん、と水音が鳴る合間に子供の高い声と穏やかな低い声が唱和する。 浴槽の縁にあごを乗せてロシアはふと思った。 おかしいな、ぼく、お風呂は苦手だったはずなのに。 全身が濡れるのも、自分の匂いが消えるのも、好きじゃなかった、なのに…。 まあいいか、郷に入ったら郷に従えって言うものね! 洗い場で背中をごしごしと勢いよくこすっている日本に目を向ける。 日本の裸はやっぱり貧弱で、現実と同じで傷だらけだった。 「傷がいっぱいだ…」 「男は外に七人の敵がいるものですからね…」 真新しい傷に湯があたるのに顔をしかめもせずに日本はこともなげに言う。 一人で抱え込もうとしているなら、こんなこと言うべきじゃないのかも知れないけど。 夢だからか、勝手に口が言葉を紡いでいた。 「いたい?」 日本は驚いたようにロシアを見た。 大きな黒い目がふっと細められる。 泡だらけの手を洗い桶の中で泳がせて泡を落としてから、日本は薄い掌をロシアの頭に載せた。 「…優しい子ですね。何のこれしき、あなたや台湾さんを守るためについた傷なら痛くなどありませんよ」 ほら、見てごらんと力こぶを作るのだけど、頼りない盛り上がりは、通常のロシアならば片手でぐにょっと潰せてしまいそうだ。 けれど夢の中のロシアはそれを決して頼りないとは認識しなかった。 ■ 風呂から上がって台所のほうから漂ってくる食欲をそそる匂いに気もそぞろ、走り出そうとするロシアの視界が白に覆われた。 「これ、ちゃんと身体を拭きなさい」 苦笑と共に背後から乾いたタオルをかぶせられ、わしゃわしゃとかき混ぜられる。 決して油断してはいけない男に、背後から視界を覆われ、布で拘束されていじくられる、 時と場合によっては生命の危険を感じる状況だが、ロシアはふくふくとした幸福を覚えていた。 てぺてぺてぺっ 小さな足が待ちきれずに廊下を走る。 その後ろをゆったりとついてくる日本は、浴衣の袖に腕を通さず着流しのように崩して着ているが、それが不思議と様になっている。 「わーい今日はコロッケだぁ」 箱膳の上に用意された食事は肉もなく、質素なものだったがロシアは断食節食で肉無しの食事には慣れている、味さえよければ不満を覚えることはない。 それぞれの箱膳の前にきちんと正座して、日本の号令で手を合わせていただきます。 ロシアも器用に箸を動かしてゴハンを食べた。 日本の膳だけ小鉢が一品多い。 何かよく分からないデロリとした生もの―魚介類らしい―を別に食べたいとは思わなかったが、ずるいな、と唇を尖らせると台湾に軽く睨まれた。 「日本さんは私達のために頑張ってるんだから、一品多いのは当然なの」 その言葉は、先ほど傷だらけの身体を見たせいか、すとんとロシアの中に着地した。 ■ ゴハンを食べて、日本と台湾はお茶を飲んで、ちょっとの家族団らんをしたらあっという間に寝る時間だ。 大人が寝るにはまだ早い時間だが、日本と台湾もロシアを挟んで布団に横になった。 いわゆる川の字の体勢だ。 右を向くと日本、左を向くと台湾、南のほうのあったかい二人に囲まれて、ロシアは嬉しくなってふふ、と笑った。 寝るのがもったいないや。 けれど日本が布団をぽすぽすと叩きながら低い声で歌ってくれる旋律を聴きながら、ロシアのまぶたはゆっくりと下りていった。 ■ ■ ■ 「…………」 「おはようございます」 目が覚めると、そこは日本家屋の一室だった。 ロシアは日本に膝枕をさせて寝こけていたらしい。 「…台湾ちゃんは?」 「ロシアさんが寝てる間に帰りましたよ」 「何で帰しちゃうのさ、君が膝枕すべきは僕じゃなくてあの子じゃないの」 「…ロシアさんが乱入してきて無理やりさせたんじゃないですか」 日本は額を抑えてため息をついた。 数時間前にロシアが日本の家に侵入したとき、家の中には日本と台湾しかいなかった。 台湾はのぼせたのだという日本の頭を太ももの上に載せて、うちわで風を送っていた。 静かな情景は映画のワンシーンのようで。 二人だけの充足した世界を見て無性にイライラして「夫婦みたいだね」ってからかったら二人とも真っ赤になって、余計にイライラした。 だけど二人は兄のような存在の大国に遠慮して大っぴらに仲良くできる間柄じゃない。 ロシアが告げ口したらと危惧したのだろう、僕にもしてくれというおねだりはいつもなら却下されるはずなのに、あっさり叶った。 でも本当は――― 自分は介在しない静かな情景をぶち壊したいと思ったのは確かだ。 けれど同時に、穏やかな世界に混ざりたかったのかもしれない。 どうしたら雰囲気を壊さずに混ざれるのかと考えて、あんな妙な夢を見たに違いない。 ―――と自己分析して勝手に納得して一人でうなずきながら、それにしても、と嘆息する。 「そっか…台湾ちゃん帰っちゃったんだ…残念だなあ」 「彼女に手を出すつもりじゃないでしょうね…!?」 すわ台湾のピンチかと日本の目が剣呑な光を帯びた。 「あははやだな、そんな日本君と中国君の手を組ませるようなマネはしないよ」 快活に否定してやると、日本は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。 |