リクエストいただきました日と不憫な英より
会社のそばの公園を借り切ってサプライズ花見を計画






楽しいリクエストをありがとうございましたーvv

リクは不憫ってことだったのですがつい書いちゃいました蛇足>>
救済ss





























































 「イギリスさん!」

 一人で泣きながら酒をあおっていたイギリスは、聞こえるはずのない声をかけられて、ビクリと肩を震わせた。おそるおそる顔を上げると、そこには後ろに製造部門の人員を引き連れた日本が肩で息をしながら立っていた。

 「よかった!間に合いましたね…」
 「え…お前らどうして…」
 「集会の後半は親睦会だったので、折角ですからこちらでやろうということになりまして…ご迷惑でなければご一緒してよろしいですか?」

 イギリスを嬉しがらせるようなことを言いながら、日本は眉を下げて微笑んだ。今まで一人寂しく飲んでいた分嬉しさが過ぎてどうしていいか分からなくなったイギリスはあわあわと口を動かすのみ。

 「…皆で押しかけてやっぱりご迷惑でしたか…?」

 しゅーん。目に見えて落ち込んでしまった日本にあわててイギリスは散らかした酒瓶を片付けてスペースを作った。
 
 「迷惑なんてっ…どうしてもって言うなら座らせてやらんこともないぞっ!」

 イギリスの高圧的な態度に日本の背後でかすかな不満のどよめきが起こったが幸いなことにイギリスには聞こえなかった。
 日本はつつましく微笑んで、ではお邪魔しますね、とちょこんとブルーシートの上に座った。皆もそこここに自分の居場所を見つけて座り込む。一気ににぎやかになった会場にイギリスは気分が上向いてくるのを感じた。朝4時に起きて作った弁当は誰にも手をつけられず無駄になりそうだが、催しはおおむね成功といえそうだ。何より来れないと思っていた日本が都合をつけて来てくれたことが嬉しい。
 と、日本が後ろにも聞こえるように声を張り上げて言った。

 「さあ皆さん、イギリスさんのお弁当ですよー」
 (え…?)
 「皆さんに行き渡るように一人一口ずつですよー」

 手回しよく紙皿を用意してきたらしい日本はイギリスの弁当をどんどん取り分けて後ろに回していく。
 いつもまずいまずいと言われている手料理がはけていくのを見てイギリスは感激していた。

 たとえ皆が苦悶の表情を浮かべながら咀嚼していたとしても。テロとまで言われるイギリスの手料理を進んで口にしていくのは、どんな困難も皆で少しずつ分け合って片付ければ何とかなるものです。ともに困難を乗り越えて結束を高めましょう!という号令の下にある行動だとしても。

 (ね?どんな困難も全員で対処すれば乗り越えられます…!)
 (((((はいっ日本さん!!!)))))

 イギリスが気付きさえしなければ、全員が満足なのである。
 さくさくとはけた重箱の中身に思いを馳せながらイギリスは機嫌よく提案した。

 「そんなに好評なら、また作ってこようか!」
 「え。いえ、それは遠慮します」

 思わず八つ橋に包むのを忘れた日本の返事に少しへこんだけれど。

 気付けば周囲には誘いを断った他部署の連中まで揃っていた。
 日本が来ていることをどこからか知ってわらわらと集まってきたものらしい。
 仲良しが多い日本は常に誰かに話しかけられている。

 企画した催しに人が集まった達成感と、手料理が平らげられた嬉しさと、友情を再確認した安心感で充足していたイギリスだったが、日本と桜の話がしたいのに話しかけられなくて、またすね始めた。

 「俺が呼んだのは日本だけだあっ」

 がばー。
 紳士を旨とするイギリスが普段なら絶対にしない大胆な行動に出た。ギリシャやフランスにお酌している日本に抱きついたのだ。

 「まあまあ…にぎやかなほうが楽しいじゃないですか。イギリスさんもどうぞ一献」
 「おいおいイギリスに酒を勧めるなんて知らねーぞぉどうなっても」
 「大丈夫ですよ、楽しい酒では暴れたりしないものです」

 自信たっぷりに日本は請け負った。この日本のイギリスに対する無限の信頼はどこから来るのだろうか。

 「脱ぐぐらい可愛いものじゃないですか」
 「日本の心は大海のように広いねえ…」

 あっはっは
 日本は生温かい視線を投げた。フランスはあごひげをひねって遠い目をする。
 彼らの目の前では普段社内にいる人間の中では最高権力者である取締役の男が全裸で踊っていた。

 やがてイギリスは日本を独占することに成功した。

 ぐー。
 酔いが回ったイギリスは日本の膝枕で眠りこけていた。全裸で。
 あまりに見苦しいので日本がそっと背広をかけてやった。

 「日本の犠牲によって被害は最小限に抑えられたよな、うん」
 「うむ、さすがである」
 「いっそ埋めちまうかあ?」

 あっはっは…と乾いた笑いが広がるが、イギリスは何だかんだで人望があるのだろう。各々のツッコミには愛がある(と日本だけが信じている)

 「…さてと。皆さんそろそろ片付けに入りましょうか」

 日本はイギリスに膝を占拠されているため動けないが、日本にしっかりしつけられている(?)製造部門の面々は手際よく動き始めた。しかし他部署の人間はそうはいかない。

 「業者にでもさせりゃいーじゃん」
 「何言ってるんです、立つ鳥跡を濁さず。社名を背負う社員として地域の皆さんに迷惑をかける行動は慎まなければ」
 「固い、固いよ日本…!たまには理性をぶっ飛ばしたらー?おにーさんはいつもお堅い日本がべろべろに酔ったところが見てみたいなあ。どんな風に乱れるのか…」

 起きていればフランスをぶっ飛ばすであろうイギリスはぐーすかと寝こけているため、フランスも大胆に日本に色目を遣う。困惑する日本に助け舟を出したのはドイツだった。

 「やめておけ」
 「ちっ保護者の登場か。見てみたいじゃん〜きっと可愛いだろうなあ〜vv」

 によによと日本の乱れぶりを想像するフランスは、ドイツの顔が若干引きつっていることには気付かなかった。

 「何言ってるの、日本君が酒で理性を飛ばしたらすごいよ?惚れ直すよ!ねえイタリア君?」

 いつの間にか背後に忍び寄っていたロシアがほのぼのと笑いながら言うと(一体何を知ってるというのか)、話を振られたイタリアは何故かイギリスに凄まれたときのようにガタガタと震え始めた。

 「え?何々何なの?おにーさんにも教えてよ」
 「ほら、フランスさんもゴミを拾ってください」
 「へいへい」

 怒らせると意外に怖い日本にそれ以上逆らうことはせず、フランスも片付け始めた。
 動けない日本は優しい表情を浮かべながらイギリス(全裸)の髪を梳いている。
 ドイツとイタリアは日本と周囲に転がる酒瓶を恐ろしげに交互に眺めた。

 酒で理性を飛ばした日本がどうなるかだって?そんなこと―――

 ((恐ろしくて言えない…!))