核アレルギー小ネタで露日です。
ちょっとだけ出てくるメリカが黒い感じになってるかもしれません。
戦後のシリアスも不必要に入ってます(汗)
そういうのが見たくない方は避けてください。
不謹慎かもしれないけど書いておきたかったんです…。
「日本君」 振り返るとそこにはいたのはロシアだった。まだ傷も癒えていない身体で彼に背後に立たれると、どうしても敗戦直前のことを思い出してしまい、反射的にすくんでしまう日本であるが。彼との間には山のように懸案事項がある。弱みを見せてはいけないと、自然睨むような強張った表情になった。 「大変だったね、もう身体は大丈夫?」 残酷なことを平気な顔して執行するのに、日本を気遣う表情は本当に心配そう。うっかりだまされてしまいそうになる。いやむしろ、残酷なときも、優しいときも、ロシアは心から行動しているということが恐ろしい。 「アメリカ君に新型の爆弾を落とされたって聞いたよ」 「ええ、まあ…」 日本は目を眇めた。 敗戦国であるにもかかわらず、アメリカのみならず敵対していた連合国の面々も日本の体調を気にかけてくれる。アメリカの強力な新兵器の評判は全世界に喧伝されているようだ。敗戦した以上滅びても仕方がないと思っていたのだから、気遣われ、こうして生かされているのはありがたいことだ。しかし…日本はかすかに眉根を寄せる。 終戦直後、アメリカに伴われまだ床に就いていた日本を見舞ったイギリスに、日本は局所に近い患部をめくって見せなければならなかった。自分で起きることも困難な日本の様子を見て、痛ましいといった表情を浮かべていたかつての友邦は、患部の被害状況を食い入るように観察していた。被害の悲惨さに痛ましいと思う反面、新型爆弾の威力にイギリスは驚嘆していた。日本は屈辱的な気分を味わった。否応なく自分がモルモットだと知らされたから。 ようするに人体実験をされたのだ。被害・回復状況自体が一種の軍事機密であり、そのせいかアメリカは日本を自分の占領下においてなかなか他国に見せようとはしなかった。そして世界に向けてはアメリカは強力な新兵器を持っているとのアピールに成功した。だから戦勝国に声をかけられるとあなたも新型爆弾の威力に興味がおありですかとうがった見方をしてしまう。 「ひどいよねアメリカ君は」 「答える立場にありません」 日本は一つため息をついた。現在日本の支配者はアメリカであったし、たとえそうでなくても世話になっている相手の批判を声高にするような厚顔ではない。内心穏やかでないにしても。 大きな黒い目が伺うようにロシアを見上げた。強力なアメリカを恐れてか誰も何も言わない中、ロシアはアメリカの新型爆弾に関して批判を隠さなかった。日本はアメリカを批判できる立場にない。非戦闘員を大量殺戮することが更なる殺戮を防いだのだといわれても、反論せずにやり過ごさなければならなかった。ロシアは日本の悔しさの代弁者だった。たとえその批判が、アメリカが強力になると困るロシア自身の利益のためだったとしても。 善悪を断じるつもりはない。裁判が開かれ、日本が悪だと決められたのなら悪なのだろう。それでもせめて、あの恐ろしい兵器が二度と使われることがないようにと日本は願っていた。しかしアメリカの態度は正反対だった。アメリカは示威力抜群の新しいおもちゃ(!)をあちこちで使いたがった。 そんな中、ロシアから始まった原水爆禁止キャンペーンは日本の心をいくらか晴らした。ロシアは残酷なことも平気でする国だが、純粋な分だけ判断が本能に直結している。大量殺戮兵器は恐ろしい、被害者が可哀想だと思ったら、こんな兵器は捨ててしまおうという素直な反応になったのだろう。この件に関してだけは日本はロシアに共感していた。 だからロシアが握手を求めて近づいてきたときも日本は甘んじて受け入れた。 ぶわっ ロシアの大きな手に掴まれた瞬間、触られたところからじんましんが出た。何だか呼吸も苦しくなってきた。息苦しい日本は浅い呼吸を繰り返したが、状況は改善しない。 克服したと思っていたロシアアレルギーだろうか、いや、違うこれは…。 「…ロシアさん、核持ってますね」 「あれーばれちゃったー?」 日本はさりげなくロシアから距離をとった。それでいくらか呼吸が楽になった。日本の苦しそうな様子を見て取ったロシアも無理に近づいてこようとはしない。悪びれもせず、舌を出している。 |