DailyLife
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誰かがベッドに潜り込んでくる気配がした。
いや、誰なのかはわかっている。三蔵だ。
馴染んだ気配は警戒心を起こさせず、悟空は覚束ない思考でそのようなことを考えると、再び夢の世界に絡め取られていく。
それは、ここ何日か、繰り返された出来事。
けれど、この日違ったのは、悟空を引き止める声があったことだ。
耳元、ほとんど唇が触れるようにして、吹き込まれる熱い息。
「――――いいか?」
いいよ、とちゃんと返事ができたかどうか憶えていない。
いくつも優しいキスが落とされ、いつもより温かい手が触れてくるのを感じながら、悟空は意識を微睡ませていた。
目覚めると隣に、愛しい人がいた。
まだ完全にすっきりとしない思考ながら、それだけは明確に理解できて、悟空は破顔する。
「おはよ、さんぞ」
腕を伸ばして、腰を引き寄せられて、朝の挨拶を。
おはようのキスはすぐに離れて、しかし「眠気覚まし」とばかりに再び、今度はちょっとだけ濃厚なキス。
舌が優しく口腔をなぞって、唇の上と下、二度甘噛みして、ちゅっと音をたてながら三蔵の唇は離れた。
「おはよう」
もう一度、悟空は言う。
「ああ」
目に映る姿で、耳に届く声で、匂いで、触れる肌で、三蔵を確かめる。
ちゃんと顔を合わせるのは、久し振りのことだ。
このところ三蔵は、仕事が忙しくて夜は遅い上に朝は早く、悟空とはすれ違いの日々を送っていた。
悟空としては、三蔵の顔を一目でも見られるように、夜は起きて帰りを待っていたり、朝は目覚まし時計を掛けたりしていたのだが、睡魔に負けて三蔵にベッドまで運ばれたり、目覚ましのベルを三蔵に止められてしまったりして、努力は報われていなかった。
それが今朝は、間近に本物がいる。
「今日は仕事は?」
「休みだ」
「なら、ずっと一緒にいられる?」
「ああ」
それだけでも嬉しいのに、三蔵はさらに優しいことを言う。
「何がしたい? 今日はお前に何でも付き合う」
悟空はぎゅっと三蔵に抱きついた。抱き返す三蔵の手は、悟空の髪を優しく撫で、うなじをくすぐる。
「何も」
悟空は答える。
「一緒にいるだけでいい」
「それでいいのか?」
うん、と頷いて、悟空は微笑んだ。
「それがいい。それが、一番のプレゼントだから」
三蔵の耳元に、悟空の甘いささやきが落とされる。
――家で、二人きりで、三蔵のこと独り占めさせて?
【プレゼント2】