2006年
07/03 ガウディの教会に危機? トンネル建設計画に猛反発
スペインからの報道によると、バルセロナの観光名所でガウディ作のサグラダ・ファミリアのほぼ直下に、高速鉄道AVEのトンネルを建設する計画が持ち上がり、「大聖堂が危険にさらされる」と教会関係者らが猛反発しているとのこと。
教会下に全長約6キロのトンネルを建設する計画で、スペイン政府は「建設工事中に地盤がぐらつくなどの懸念はない。教会への影響はほとんどないか、皆無だ」と説明しているとのこと。
共同通信。
07/03 キトラ天井にまた黒カビ 石室内でバクテリアも増殖
文化庁は3日、キトラ古墳で天文図が描かれた石室天井の余白部分に、黒カビのようなものが見つかったと発表したとのこと。カビは黒い粒状で縦、横それぞれ約1.5センチの範囲に広がっていたが、既に除去したとのこと。
また石室全体に、ゲル状のバクテリアが増殖していることも判明。一番奥の北壁や、白虎図をはぎ取った後の西壁で目立つという。朱雀図が残っている南壁でも以前からゲル状物質が見つかっているが、状態が悪化している様子はないという。同庁は「除去作業を繰り返すと、かえって壁面を傷つける恐れがある」と話し、当面は除去しないという。
共同通信。
07/05 建築家の安藤氏ら 新タワーデザイン監修者
東京都墨田区に新東京タワーの建設を進める東武鉄道は4日、新タワーのデザイン監修者に元東京芸大学長の彫刻家・澄川喜一氏と、東大名誉教授の建築家・安藤忠雄氏に依頼したと発表した。来年からは実際の建設の設計に入り、2011年の完成を目指すとのこと。
東京新聞。
07/06 あわてて描き加えた? 奈良博の国宝 十一面観音
絵画の十一面観音像としては唯一、国宝に指定されている奈良国立博物館所蔵の十一面観音像(平安時代)が、頭上面を10面から11面に描き加えていることが、同館と東京文化財研究所の調査で明らかになった。銀泥を塗ったと思われていた水瓶(すいびょう)の色も、当初から青黒色だったことが判明。当時の技法や制作の背景を考える上で重要な資料という。
11面観音像は縦約169センチ、横約90センチ。平安時代を代表する仏画の一つで、斑鳩町の法起寺に伝来した。最新技術を用いた調査は平成16年に始まり、このほど報告書がまとまったとのこと。
奈良新聞。
07/11 芸術選奨の審査体制見直し 盗作疑惑受け文科省
小坂憲次文部科学相は11日の閣議後の記者会見で、盗作疑惑発覚で洋画家和田義彦氏の芸術選奨文部科学大臣賞の授賞取り消しを受け、芸術選奨の10部門の審査体制を見直すことを明らかにした。
今回問題になった絵画や建築などを審査する美術部門については選考審査員を現行の7人から11人に、推薦委員を10人から15人にそれぞれ増員した上で、盗作疑惑を見抜けなかった反省を踏まえ、選考審査員全員を総入れ替えするとのこと。
美術部門を含む10部門については、審査員の発令が遅く、選考作品について十分な情報収集ができないとの指摘を踏まえ、発令を選考期間(1月-12月)の前年末までに前倒して行うことで、選考対象者の展覧会などの業績を幅広く情報収集できるようにするとのこと。
共同通信。
07/13 青森県立美術館オープン
棟方志功や奈良美智さんら青森県出身の芸術家の作品を中心に集め、演劇や音楽なども上演し、ジャンルの異なる芸術の融合を目指す青森県立美術館(青森市)の開館記念式典が13日午前、開かれたとのこと。
常設展では、奈良さんが制作した高さ約8.5メートルの白い犬の彫刻「あおもり犬」やオブジェを飾った小屋、ウルトラマンの怪獣デザインを手掛けた成田亨のデッサンなどを展示。
美術館として開館する前から太宰治の小説「津軽」を題材にした演劇を館内の5つの舞台を移動しながら6時間かけて上演したり、コンサートなどを実施。秋には映画祭や寺山修司をモチーフにした演劇も予定しているとのこと。
共同通信。開館記念展「シャガール 『アレコ』とアメリカ亡命時代」を開催中。9月24日まで。公式サイト
07/14 薬師さん、お里で“入院” 奈良博から唐招提寺へ
唐招提寺の国宝・薬師如来立像(平安時代)が修理のため6年ぶりに同寺へ戻るとのこと。薬師如来立像は高さ約3.7メートル。金堂の解体修理に伴い、平成12年から同博物館で展示されている。
木心に漆を塗って仕上げてあるが、はく落などの傷みが目立ち、アクリル樹脂を使って強化することになった。来年度までの2カ年事業で、費用は約3280万円。
奈良新聞。
07/14 金閣寺の茶室「夕佳亭」が模型で再現 相国寺承天閣美術館
改築工事を進めていた京都市の相国寺承天閣美術館に14日、金閣寺境内の茶室「夕佳(せっか)亭」の実物大の模型が完成したとのこと。夕佳亭は江戸時代前期創建で、当時の代表的な茶人、金森宗和の設計。明治初めに焼失し、間もなく再建された。眼下の金閣が夕日に輝く景色から名付けられた。
展示室中央に完成した模型は、3畳間と2畳敷きの上段の間からなる寄せ棟造りで、ナンテンの木を用いた床柱や「萩の違い棚」、眺望を楽しめるように三方に作られた中敷居窓や前面のかまどまで再現したとのこと。金閣寺などに伝わる宗和ゆかりの茶道具や掛け軸も飾られている。
京都新聞。改築完成を記念し、15日から「伝来の茶道具展」が同展示室で開かれるとのこと。有料。来年4月15日まで。公式サイト
07/15 京都の秘仏に奈良由来説─「岡崎文珠像」頭部に納入品
金戒光明寺(京都市)の文殊菩薩像の頭部に、金属製の納入品があることが分かった。2年前から修理してきた京都国立博物館の美術院がエックス線撮影で確認した。同様の納入品が西大寺(奈良市)の文殊菩薩像(重要文化財)からも発見されているため、「西大寺を復興した叡尊(1201―1290年)ゆかりの像ではないか」(同博物館)との仮説が打ち出された。
文殊像の頭部は密閉され、今回の修理では納入品を取り出せなかった。エックス線撮影で見えたのは茶筒状の金属。類例は「西大寺の像から出た高さ6.5センチの銅製容器だけ」(同博物館)だ。中には水晶製の舎利塔が入っていた。今回確認された金属は高さ10センチほどで、同様の舎利塔が入っていると推測される。金戒光明寺の像には舎利塔の容器のほか、西大寺の像と同様に大量の写経や願文などが納入されているようだ。
西大寺の文殊像は叡尊13回忌の1302年、弟子たちが完成させたことが分かっている。獅子に乗り、最勝老人や善財童子像など4人の侍者を従えた典型的な文殊五尊だ。金戒光明寺の像も同じ形式だが、善財童子が欠失している。「最勝老人の顔は西大寺の像にそっくり」(浅湫主任研究員)という。堂々たる体つきや彩色など作風の特徴から、西大寺より古く、1270年代ごろの作と推定されている。
日経ネット関西版。
07/15 篠原一男氏が死去 東京工大記念館の建築家
「東京工業大学百年記念館」などを手掛け、住宅設計の第一人者として知られる建築家で東京工大名誉教授の篠原一男氏が15日、死去した。81歳。
東京工大建築学科で清家清氏に学び、1970年、同大教授に。「久我山の家」「から傘の家」「白の家」「ハウス・イン・ヨコハマ」などを発表、逆ピラミッド形でガラス張りの「熊本北警察署」や、日本浮世絵博物館(長野県松本市)も手掛けた。
共同通信。
07/19 サメだと思ったら…タイ? 弥生時代の絵画に新説
鳥取市の青谷上寺地遺跡など、山陰地方の弥生時代の遺跡で見つかった「サメ」の絵は、実はフナやタイだった−。奈良文化財研究所の深沢芳樹上席研究員(考古学)が19日までに、こんな新説をまとめたとのこと。
「サメ」の絵をめぐっては、因幡の白ウサギ伝説などと関連付け、「古代の山陰には独自のサメ信仰があった」とする意見もあっただけに、波紋を広げそうだ。
共同通信。真実は描いた人のみぞ知る。
07/19 写真ネガの一元管理拠点を 森山元文相ら散逸防止訴え
近現代の日本を記録した写真の散逸を防ぎ、財産として後世の人に活用してもらおうと、保存・管理の拠点施設「日本写真保存センター」(仮称)の早期設立の必要性を訴えたとのこと。
構想によると、センターは国営または公的機関と民間との共同運営を目指す。写真のネガやスライドなどの保存、管理に手の負えなくなった写真家の遺族らから寄贈や購入を通じて集め、原板と複製データを管理。100万点を所蔵目標とし、散逸などの恐れが出始めている終戦直後から1970年代までの作品を当面集める。保存対象の写真家はプロ、アマを問わないとのこと。
共同通信。
07/19 合成樹脂で壁画補強の方針 高松塚古墳で部会提示
石室解体後に壁画や石材を合成樹脂などで補強しつつ修復する方針を確認したとのこと。文化庁は壁画を約10年がかりで修復した後、古墳内に戻すことを決めているが、樹脂が劣化するため、20−30年に1度は石室解体を伴う定期的な措置が必要となるという。
また石室解体後に行う墳丘の仮整備について、部会メンバーが3案を提示。墳丘を可能な範囲で復元し、石室のレプリカを本来石室があった場所に設置した上で公開する案を軸に協議したとのこと。
共同通信。
07/22 清水九兵衛氏が死去
彫刻家で京都清水焼の名家、7代目清水六兵衛の清水九兵衛(きよみず・きゅうべえ)氏が21日、死去した。84歳。
共同通信。
07/25 ペルシャ霊獣の絵柄確認 バーミヤンで文化財研究所
アフガニスタン中部の世界遺産バーミヤン遺跡で保存・調査活動に当たっている独立行政法人文化財研究所のチームが25日までに、石窟内の7世紀の仏教壁画を覆っていたすすの除去に初めて成功、ペルシャ神話の霊獣「シームルグ」とみられる絵柄が描かれているのを確認したとのこと。同じくペルシャ起源の「グリフィン」とする指摘もある。いずれの絵柄でもバーミヤンで鮮明な形が確認されたのは初めて。霊獣は1−5世紀に仏教美術が繁栄したガンダーラ風の唐草模様とともに描かれていたとのこと。
共同通信。
07/25 国立博物館が料金値上げへ 最大で3倍に、10月から
独立行政法人国立博物館は25日、全国4つの国立博物館のうち、九州を除く東京、京都、奈良の3館で、常設展入館料を10月1日から値上げすると発表したとのこと。2001年の独法化以降初の値上げとなる。
常設展の入館料は現在、個人の一般、大学生・高校生(東京は高校生無料)がそれぞれ420円、130円で全館一律。これを東京は600円、400円に、京都、奈良は500円、250円に改める。
共同通信。随分前から告知されていますが、記事になっていたので紹介。
07/26 テート・モダンに新館 12年に完成予定
ロンドン五輪が開催される2012年に地上11階建ての新館を完成させ、展示スペースを約8割増の1万6000平方メートルとする大規模な拡張計画を発表したとのこと。新館はスイスの建築家ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計し、総工費は2億1500万ポンド(約460億円)を予定。
25日付共同通信。テート・モダンは2000年にオープン。入場者数は年間400万人以上と、ライバルであるパリのポンピドーセンターやニューヨークの近代美術館を大きく上回っている。そうです。
07/26 ガラス彫刻「鳥」に亀裂 県立館林美術館
群馬県文化課は25日、県立館林美術館所蔵のガラス彫刻「鳥」に亀裂が入り、撤去したと発表した。亀裂の原因は、日の出の光での温度上昇と、開館後の空調による下降の繰り返しと見られるとのこと。
「鳥」(縦25センチ、横123センチ、高さ72センチ、重さ約100キロ)は、現代ガラス彫刻の創始者とされるスタニスラフ・リベンスキー夫妻(チェコ)の97年の作品で、県が同年、約430万円で購入した。
毎日新聞。
07/26 広重の写生帳、米国で発見 流出し不明のまま約80年
歌川広重(1797−1858年)の写生画と旅日記が記された「甲州日記写生帳」が、米国に現存していることが分かった。明治時代に海外に流出し、その後行方が分からなくなってから約80年ぶりの発見。
写生帳は広重が1841年の秋、甲州の商家に招かれて江戸から旅をした際に携行したもの。和紙19枚を二つ折りに和とじし、縦19.6センチ、横13.1センチの冊子にしてある。冒頭に「旅中心おほえ(覚え)」とあり、昇仙峡(甲府市)や富士川など道中の風景を墨で描いた18点の絵と、末尾に日記が記されている。
共同通信。読売新聞によりますと、写生帳は9月5日から千葉市美術館で初公開される予定。その後、佐川美術館(来春)、郡山市立美術館(来秋)などでも公開される予定とのこと。
07/26 イラク古代石像 国立博物館から盗難、米国が返還
米国土安全保障省は25日、イラク戦争でのバグダッド陥落(03年4月)前後にイラク国立博物館から盗まれた古代メソポタミアの王エンテメナの石像を訪米中のマリキ・イラク首相に返還したと発表した。紀元前2400年ごろの製作で「イラクの文化遺産としては貴重なものの一つ」(同省)という。ニューヨーク・タイムズ紙によると、石像はシリアに持ち出され、古代美術品の国際市場に売りに出されていたとのこと。
イラク戦争では米軍主導の多国籍軍が進攻した前後にバグダッドなど各地の博物館、美術館や遺跡などで貴重な古代の遺品や美術品の大規模な略奪が発生。国土安保省の移民関税局はイラク盗難品の回収・返還作業を進めており、これまでに約1000点をイラク側に返還したという。
毎日新聞。
07/24・27 高松塚古墳三題
「石室解体後に墳丘埋め戻し」:文化庁の恒久保存対策検討会は24日、石室を解体してカビなどで劣化した壁画を修復する来年からの約10年間について、墳丘内の石室のあった場所を土で埋め戻したままの状態にする古墳の仮整備方針を決めたとのこと。古墳南側にある壁画保存のための空調施設も撤去するため、墳丘は1972年の発掘前の姿に戻ることになる。来年3−4月に石室を解体し、10年がかりで壁画を修復。埋め戻し作業は来年度実施し、年度内に終える予定。
「高松塚石室、傾斜してゆがみ 過去の地震で?測量で判明」:最大7センチ程度ゆがんでいるそうです。
「石室のリアルな3D映像」:奈良文化財研究所が石室内をレーザースキャナーで3次元計測。石室の精密な画像とコンピューターグラフィックス映像を作成し27日、公開したとのこと。墳丘を実際に測量した結果と合わせ、埋もれている石室の正確な位置も判明。解体や、壁画の修復後に検討されている石室埋め戻しに役立つ貴重な資料となりそうだ。
上から24日付共同通信、27日付時事通信、27日付共同通信。
07/30 網干善教氏が死去
高松塚古墳(奈良県明日香村)を発掘調査し、極彩色壁画を発見した関西大名誉教授の網干善教(あぼし・よしのり)氏が29日、死去した。78歳。
関西大助教授で同県立橿原考古学研究所研究員を兼務した1972年、高松塚古墳発掘の現場責任者になり、「飛鳥美人」と評された人物群像や四神図など極彩色の壁画を発見。壁画の劣化が発覚してからは文化庁の姿勢を厳しく追及。文化庁が計画する古墳の解体に強く反対していた。
共同通信。






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