御長壽美術展 日本美術に見る長寿と老い

2004/12/04-01/10 板橋区立美術館

▼めでたい長寿、祝えや長寿、長寿にあやかり縁起物。絵画には高砂の尉と姥、寿老人、浦島太郎など、不老長寿の象徴が並びます。その周囲には松がどっしり構え、鶴や蝙蝠が舞い、足元には亀。完璧な布陣です。加えて、漁師の晴着や袱紗があったりと、様々な場面における祝いアイテムが見られました。

▼めでたさから離れ、老いや人生に関する展示も。「熊野観心十界図」は、いかに年を重ね、人生を歩んで行くかを問い掛けてきます。事と次第によっては、地獄で喰われたり。喰われそう。あらあら肉片に。

▼全体の雰囲気は、こちらの美術館独自のもの。作品は江戸期中心で、奇想や面白が発動していました。最高潮だったのが、「寿老人と福禄寿」コーナー。狩野芳崖・曾我蕭白による不気味な寿老人がいたり、河村若芝の「群仙星祭図」が濃厚だったり。高砂図各種も楽しかったです。西川祐信筆・若返りバージョンとか。それから、当たり前ですが老人がいっぱい。月僊「百老之図」だけでも百人。総数は如何程だったのやら。(01/10)

原美術館コレクション25年の歩み

2004/10/25-01/16 原美術館

▼よりぬき原美術館。日本、アジア、欧米を、現代美術で横断。

▼中途で古美術との出会いがあり、雪村+現代美術、円山応挙+現代美術といった、時と国境を超えた共演が繰り広げられます。応挙の「淀川両岸図巻」近辺には、杉本博司や周鉄海による水面があったり。水に因む、気の利いた展示。しかし、「淀川両岸図巻」の解説は、その場で読むには長過ぎるので、コピーを配ってくれればと希望。それなら、後からじっくり読めるのに。

▼久しく行かない間に、いくつもの部屋が出現していました。奈良美智の「My Drawing Room」は、小奇麗でシンプルで可愛らしく、今は亡きオリーブを彷彿とさせます。が、白いシャツの下に、苦くて息苦しさを覚える毒をしのばせていたりして。残念ながら私には見えないので、推測してみました。真相は藪の中。森村泰昌部屋は、珍日本紀行に違和感ゼロで溶け込むことでしょう。決して嫌いじゃないです。須田悦弘は、いつでもどこでも須田悦弘といった風情。いや、しかしそれを好んでいるもので。なんというか、書くにつれ、御無沙汰具合が剥き出しになってるような。さすがにレイノー部屋は、見たことありました。傷口に塩。

▼久しぶりの原美術館。会場は若者主体、新鮮な光景だ。という感想が頭に浮かび、己を危惧する午後のひととき。(01/10)

唐招提寺展 国宝 鑑真和上像と盧舎那仏

01/12-03/06 東京国立博物館

▼だだっ広い平成館を贅沢に使用し、金堂と御影堂の堂内再現がなされています。金堂は、盧舎那仏坐像、梵天・帝釈天立像、四天王立像を配し、建物の一部分と共に再現。像は、全て後ろから前から見回せ、細部を確認出来る位に近付けます。建物は材質からしてバッタもんで、なくても構わない代物でした。御影堂は、鑑真和上坐像と東山魁夷の障壁画全部。障壁画は、御影堂と同じように配されているようです。広がりを感じさせる力作。「障壁画」を把握した、空間・場面構成を披露しております。
見事な二点豪華主義。奈良時代の仏教美術、東山魁夷・画業の集大成を体感する、またとない機会です。それは紛れもない事実。しかし、東山魁夷にそれ程興味がないため、豪華さが豚に真珠でした。

▼二点以外の部分は(も)、空間を生かし過ぎの展示。ツッコミ入れたい。が、「金堂平成大修理記念」というサブタイトルには、しっかり合致してたり。どうも、ツッコミ要素が出ないよう作っている節があって、いやらしさを感じてしまいました。それでも、三彩瓦断片の色彩や、金堂隅鬼の顔つきと肉感の表現具合にはよろめきましたが。隅鬼は愛すべき存在だった。江戸期のは、木目や彫りが猿の毛並みたいでよろしくなかったけど。(01/16)

life/art'04

2004/12/07-01/30 SHISEIDO GALLERY

▼今村源、金沢健一、須田悦弘、田中信行、中村政人の5人の仕事を5年間定点観測するシリーズ企画展。本展が4回目。今回は今村源がイニシアチブをとり、他の4人とのコラボレーションを試みた。テーマは「私」。

▼ポイントは、コラボレーションかと。それが効果的に作用したのが、今村源と田中信行による漆で固めたごはん。謎を秘めたまま姿を現したのが、今村源と中村政人。効果と謎の違いは、何かしらの「点」を見出せたか否によるものでは…と推測。点は、互いの共通点に留まらず、反目を認識したうえでの点でもいいわけで。

▼全体の雰囲気は、前回前々回とあまり変わらんような。距離感というか分散というか。(01/21)

京菓子司 末富のデザイン展

2004/12/27-01/24 松屋銀座・デザインギャラリー1953

▼四季や干支の意匠に包まれた和菓子。そこに息づく、独自のデザイン・色彩感覚に着目した展覧会。

▼馴染みの意匠の合間に、クリスマスツリーやクレヨンを確認。これらは、伝統の殻を打ち破ったということで評価すべきなのでしょうか。個人的には迎合としか思えません。しかし、「桜前線」までは許容範囲でした。見た目も悪くなかったし。

▼干支菓子は姿形を模したもの、イメージや連想を菓子化したものがありました。具象と抽象。今年の干支・酉は、鶏を入れる「ふせ籠」からの意匠。発想の源は織部饅頭でしょうか。(01/21)

国芳 暁斎 なんでもこいッ展だィ!

2004/12/11-01/23 東京ステーションギャラリー

▼両絵師の作品を、1.役者似顔絵、2.武者絵・風景画、3.戯画・風刺画・動物画、4.画稿類、5.美人画といったテーマに分けて紹介。

▼熱気を発しつつ、ある意味爽快な展覧会。両者のエネルギーが溢れ、創造力が放出し続ける。熱は、暁斎の方が高目。錦絵、肉筆、下絵、巨大引幕など、バリエーション豊かな出品だからか。で、それらが技術の高さや視点の広さ・深さ等を丸見えにするという。

▼どちらも細部までこだわりあり。遊び心とも言う。暁斎が描く、捕まえられた鬼の動きや表情、天狗の折れた鼻。国芳は、着物柄が大津絵だったり。国芳の猫、暁斎の蛙に代表される、生きもの目線も良し。とにかく楽しい展示でした。(01/22) 暁斎筆「鍾馗図」に見られるような線は、暁斎だとピタリと嵌るなー。他作品で見るにつけ、密かに「粘着線」「不気味線」と呼んでいるのですが。解説曰く、狩野派の線。

椅子のデザイン 日本の<座>の誕生から未来へ

01/29-03/27 埼玉県立近代美術館

▼椅子の起源、日本における椅子の暮らしとそこで生まれた独自のデザイン、美術のフィールドに佇む椅子を、駆け足で辿ります。儀式や象徴的な「座」から始まり現代に至るまでに、椅子の意味や用途が変換していく様などは、もう少し腰を落ち着け向き合いたい。一部の展示椅子は座れますが。て、そういう意味ではなく。

▼個々で面白かったのは、1950〜60年代の日本の椅子。背が低い、座椅子みたいな。床との距離感は、畳に触れていた生活の名残でしょうか。木、紐、い草など、材質の選択や使用法に和を見たり。もうひとつ。奈良美智+graf「Room S」に置かれたミニ椅子と、grafの巨大椅子の対比は、まるでガリバー旅行記。両方座れます。「Room S」は隠れ家のようで、秘密基地に憧れた子供時代にひとっ飛び。

▼公募部門「あったらいいな、こんな椅子!」もあり。小・中学生考案の椅子は、解き放たれた感性が気持ちよくて仕方がない。(01/30)






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