10/25-12/04 東京国立博物館

▼すごく混んでいるようなので、休みをとり平日に行きました。開館前に並べば余裕で見られます(これからどうなるかは不明)。ポイントは、事前にチケットを入手しておくことかと。当日券を購入していると、入場が遅れてしまうので。

▼展示の方は、良く集めてあるというのが第一印象、構成・作品共に手堅いが第二印象。時系列にて、様々な試みを辿れる所が良かったです。

▼日本の博物学シリーズ 特集陳列「武芸 ―鷹狩、犬追物―」(〜12/11)が、個人的にヒット。展示品と解説をまとめた小冊子が欲しい位。東洋館の「中国書画精華」(〜11/27)は、前期が南宋絵画メイン、後期が元・明絵画(書跡は展示替えなし)。粒揃いの展示は、年に一度のお楽しみ。「紅白芙蓉図」が、いつもの場所に収まっていました。

▼「浮世絵―人びとの絵姿」 11月1日〜11月27日
国立西洋美術館の「キアロスクーロ」展(10月8日〜12月11日)にあわせ、「明暗や立体表現に挑戦した浮世絵」を展示。 国芳は、浮世絵に西洋銅版画を流し込ませています。国虎作品は、地層と陰影が一緒くたになったよう。異空間。清親「石榴に葡萄」(同系作品が「近代美術」にもあり。〜11/20)までいくと、油絵に足突っ込んでいる状態。画面が、こってりと重みあり。 明確なテーマがあった分、腰を据えて見られました。普段は季節感等はあれど、少々漠然とした展示に思えていたもので。

▼紅葉:狩野秀頼「観楓図屏風」(国宝室 〜11/20)は、鮮やかな色彩が印象的。狩野探信〈守政〉「龍田川図」(書画の展開 安土桃山・江戸 〜12/4)も紅葉が美しいのだけど、色づいた葉がグローブ化しているような。でかい。

前期:10/08-11/13 後期:11/17-12/25 三井記念美術館

▼平日だったからか、独特な客層。アダルト。

▼茶道具、書画、工芸、切手、能面などを展示。三井文庫と比べると、展示室は大分広がりました。応挙の「雪松図屏風」がまともに置いてあるじゃないかという。応挙のもう1点「水仙図」は、やさしいやさしい絵。あと、光悦「黒樂茶碗 銘雨雲」の切り口はスピード感に溢れてるとか、狩野栄信「四季山水図」は胃もたれ起こしそうな油っこさとか、是真の卵が見られてよかったとか、個人的見所は色々。

10/29-11/14 奈良国立博物館

▼購読者を多量に送り込み、入場者数更新を狙ったと思われる、読売旅行の激安ツアーをうっかり利用。あっけなく撃沈しました。展示ケースを幾重にも囲む、人の頭を鑑賞。入口付近の数点はどうしても見られず、図録で姿を確認。間違ってる。展示室の中では怒号が飛び交ってるし。鏡を初めとして、展示品は美しかったです。古文書が結構多かった。

10/15-11/27 府中市美術館

▼馴染みのない作家が新鮮でたまらなく、とても良い出会いが出来て嬉しい。展示は、「印象派の波」「ベルギーにおける展開」「抽象絵画へ」に分かれています。

▼「印象派の波」では、波の届き具合が興味深く。テオ・ファン・レイセルベルヘ「朝霧のフェーレ」はモネ、レオン・デ・スメット「陽のあたる室内」はボナールを想起。点描系もあり。エミール・クラウスの多幸感、ヤコブ・スミッツの極太輪郭と厚塗りでスポンジ状の絵肌も気になる。

▼「ベルギーにおける展開」は、象徴主義、フォーヴィスム、表現主義、シュルレアリスムが含まれています。グスターヴ・デ・スメット、フリッツ・ファン・デン・ベルヘの表現主義は、垢抜けないよなーと思うけど、直球勝負の潔さが魅力かも。こちらには、御馴染みのスピリアールト、アンソール、ペルメーク、マグリット、デルヴォーの展示あり。

▼「抽象絵画へ」は、ガストン・ベルトランドの豹変ぶりが何ともでした。

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巡回:2006/04/29-06/04 佐倉市立美術館 2006/06/10-07/23 下関市立美術館 2006/09/08-11/05 秋田市立千秋美術館

▼平成17年度II期(後半) 10月15日〜11月27日
小特集 小山田二郎の水彩画
8点と数は少ないですが、濃密な作品が並ぶ質の高い展示となっていました。 どの作品にも美しい色彩が沈澱しています。深海に絵具の雫を落としたような、それが静かにゆるやかに拡がっていくような感じ。 「鳥女」が3点。筋張った腕や爪が気になる。「角達の狂宴」は、色の狂宴でもある。伸びるシルエットは何?「夏の虫」「子供」には、木漏れ日がさしていたように思いました。 別コーナーにて、油彩も展示されていました。

▼「ベルギー近代の美」展にあわせ、「ベルギーゆかりの作品」3点あり。

10/25-12/04 千葉市美術館

▼ミラノの長い歴史を、展示作品で辿る展覧会。メインは「レオナルド・ダ・ヴィンチがいた都市ミラノ」ということで、素描・レダの頭部でしょう。線の伝わり具合がすこぶる良好で、線が生まれ形作られていく様が浮かぶような。と、いう妄想がありましたとさ。えもいわれぬ表情も堪能。弟子・チェーザレ・ダ・セストの「聖母子と子羊」における、「聖アンナと聖母子」の転用ぶりも面白い。構図瓜二つで、顔は妙に女っぽい。マルコ・ドッジョーノ「カナの婚礼」には、「最後の晩餐」の影がちらついています。

▼他にも、所々見所あり。14世紀末から15世紀初頭の彫刻3点、個性比べとか。地域により、丸みを帯びていたり、少々硬質だったり、衣の表現に特徴があったりする。あと、ヴィンチェンツォ・フォッパに帰属「聖母子(トリヴルツィオの聖母)」の慈しむ感じ、ジュゼッペ・ロマーニ?「籠を手にした老年の物乞い」の毅然とした表情や力のある目元とか。珍品部門では、アルチンボルドの追随者「春」てのもありますが。花を山盛りにしただけじゃないか。なんで持ってきたんだろ。

▼全体の印象はそこそこ。決して悪くはないのだけど平均点という。

10/25-12/04 千葉市美術館

▼所蔵品と寄託作品を、6つのテーマに分け展示。「江戸絵画」から真っ先に想起される画家たちが目白押し、作品も見応えありで、千葉市美術館の底力を感じた次第。大変充実していました。

▼つらつらと。 / 立原杏所「宜男清鈴図」「馬上鍾馗図」。前者は透ける葉の重なりと可憐な花や鳥、後者は細く滑らかで粘度をもった線が印象的。この方は、酔っ払った勢いで描いた豪快絵からメルヘン世界までよりどりみどりだけど、今回もまた違った枝葉の作品が見られてよかったです。 / 円山応挙「富士三保図屏風」「秋月雪峡図屏風」。陽炎や、なぜか西洋のおとぎ話に見える。どちらも心象風景みたい。 / 抱亭五清「粧い美人図」。一部が拓版画のようになっている。墨をざっと塗り且つ塗り残しのある背景処理が謎。 / 長澤蘆雪「松竹梅図」。松の緑は四角く、竹は置いたように描き、梅はなんだか縮れてる。定番の松竹梅描法から逸脱気味。天邪鬼加減が、らしくて良し。 / 渡辺崋山。コレクター魂ここにありなエピソードや箱などと共に、作品が展示されています。他の作品も良質。 / 高嵩谷「渡舟雨宿り図屏風」。ネタ元の英一蝶と並べて見てみたい。殆ど丸写しでないの。
他にも良い作品多数。若冲は3点見られました。

10/08-11/20 埼玉県立博物館

▼過去と現在と未来を見つめた展示。過去は、創建から中世を経て、近世の類焼から市井の人々による再建他。それらを資料により示しています。現在は、展示の目玉でもある彫刻群。大羽目彫刻は、縁起物図像多し。縁下腰羽目彫刻は、唐子による四季の遊び。その他、愛嬌たっぷりな猿たち、金色が残る龍、花鳥系等。出入口では、獅子が出迎え見送ってくれました。それぞれ取り外され、本来の姿ではないけれど、間近で見られる利点大と思われます。未来は、平成の大修理に向けて。彫刻の彩色見取図、白描写、彩色の保存修理。

▼構想図、棟梁家に残された資料の展示もあり。当時の姿や色彩を、現在、未来へと伝えていく。時を横断していく様がいいなぁと。

▼時間があまり取れず、早足で一巡り。「法華経一品経」(慈光寺経)の前で足を止め、見返をはじめとする装飾を愛でる。詳細な解説カードが備えられており、ありがたく頂戴する。土佐光起「一の谷合戦図」の律儀な三者三様図、狩野栄信「梟・三日月・蝙蝠図」の弛緩した佇まい、葛飾北斎の妙に写実的で線の多いバッタを眺める。何れも前回はなかった展示。期間限定と思われ。

10/29-12/25 埼玉県立近代美術館

▼府中市美術館の「ベルギー近代の美」に続き、またもやベルギー関係。こちらは、印象派からシュルレアリスムに加え、新古典主義、ロマン主義、バルビゾン派等も見ることができます。が、新古典やロマン主義辺りはパンチ不足というか、王道もベルギーでの展開もうやむやのまま終了みたいな。展示作品は、他国の作家によるものも含まれています。

▼「この人の作品は府中にもあったな」と思いながら見ました。こうやって一人の作家の作品が、自分の中で増えていくのが楽しい。レオン・デ・スメットの室内、コンスタン・ペルメークの画面一杯に描かれた労働者、フリッツ・ヴァン・デン・ベルヘの立つ男、グスターヴ・デ・スメットのキュビスムな男と女を再び摂取。ペルメークは、プリズムのような厚塗り風景画なんていう変り種もあったり。ヴァレリウス・デ・サデレールは、府中で冬バージョン、埼玉で緑バージョンを摂取。前者はちょっとブリューゲルで、後者は生け垣や道が織りなす曲線が妙。ジョルジュ・ミンヌは、「期待」「青年」が破壊力満点。見せてくれてありがとうゲント美術館。彫刻と合わせると、相乗効果をフルに発揮。それから、アドリアン=ジョセフ・ヘイマンスは、府中と埼玉で続けざまに見て、好みかもしれないと思った次第。霧が白くかかったような画面とか、微妙に変化していく色彩の表現とか。

▼逆パターン「この人の作品は府中になかったな」では、エドワード・アトキンソン・ホーネル「春の田園詩」がどことなく怪しい。花に囲まれた少女2人が、何故だかアグレッシヴに描かれています。ミスマッチ感覚てやつでしょうか。変態要素を加えると、「乙女の祈り」になるかも。

▼11月2日〜2006年1月29日
「西洋近代の名画−モネからデルヴォーまで」「風雅の彩り−日本画名作選」は、馴染み深い作品多し。西洋部門は、よく見ると裸婦が横並びになっていました。日本画部門は、前期の展示(〜12月11日)。小村雪岱と小茂田青樹は複数の作品が見られます。あとは1点ずつ。版画は、駒井哲郎ファン必見といった感じ。

▼アーティスト・プロジェクト 関根伸夫「位相−大地」が生まれるまで
制作活動の起点から振り返る。高校〜大学時代の作品に、自身の言葉を添えた展示。「位相−大地」前夜と言うべき作品も。 映像版《位相−大地》は、まさに生まれるまで。後年作られたシルクスクリーンもあったけれど、制作の最中/ライブ感とは別物で。しかし、映像を見ている内に、昔やった遺跡発掘バイトが脳裏に浮かんでしまいました。……申し訳ない。カタログなど、当時を伝える資料の展示もあり。






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