09/10-10/23 損保ジャパン東郷青児美術館
▼14-18世紀にわたる約60点の出品作品を、都市の歩みにそって“「聖帯伝説」による愛郷心の創出”“聖母信仰”“カトリックの世界的プロパガンダ”という三つの視点から読みときます。(同展チラシより)
▼時代、政治、生活の様子などが、画面に潜んでいる所が興味深いです。聖帯伝説を核に、結び付きを深めるみたいな。
聖帯伝説作品では、やはりフィリッポ・リッピ及びフラ・ディアマンテ「身につけた聖帯を使徒トマスに授ける聖母」が出色。細部まで美しく、足元の草にはプラートを暗示させ。宝石が妙に立体的でした。フィリッポ・リッピ関連は他に2点。加えて摸写作品や、聖母の表情を似せている作品もあり、影響の大きさを窺うことができます。
▼聖母子像の作風バリエーションも気になる所。場面や時代に身をゆだね、時には素朴な家庭用浮き彫り、時にはマニエリスムに呼応。マリオ・バラッシ「聖ドミニクスの眼前に現れた聖母子」は、プラート司教区昇格記念だったりする。そういえば、気合が込められているような。隅では、天使がプラートの象徴である草を潤しています。栄華を願う。政治の香りを漂わせながら。政治といえば、プラートの有力者の肖像画なんてのもあり。
▼「至宝展」というより、「都市の物語」の方がしっくりくる展覧会。作品全体を通して、プラートを俯瞰する感じ。作品単位では、諸々の思惑を覗いてみたり。
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巡回:11/03-12/25:岐阜県美術館 2006/01/03-02/19:ひろしま美術館
09/27-11/27 HOUSE OF SHISEIDO
▼アール・ブリュットをひと巡り。しばしば見かけたり取り上げられたりするような作家は、あらかた押さえてあります。ゾンネンシュターンが寂しいとかありますが、コレクションから持ってきてるようなので仕方ないかも。それから、こちらの展示で行われている区分けは、個人的には果てしなく無意味だと思う次第。なんてミクロな小言も、作品の前では吹っ飛ぶのですが。
▼集めてあるし面白いし無料で何度も見られるし、開催してくれてありがとう資生堂。で、もう一丁踏ん張って「パラレル・ヴィジョン」の再来、あわよくば凌駕を目指してみないか資生堂。
10/04-11/27 資生堂ギャラリー
▼「二つの異なった風景から世界を見る試みの新作「TRANSPLANT」。異なる場所への移動、異なるものとの出会いからうまれる風景の変容を、二つの視点から提示します」とのこと。他国原産の作物が密集する農場や、各国にある移民居住地が撮影されています。ねじれた風景、浮かぶ言葉は侵食。というと語弊があるかもしれないけれど、ブラジルに佇む金閣寺とか写ってるし。
09/17-10/10 ブリヂストン美術館
▼「海の幸」には、裸の人々が描かれています。と同時に、作品自体も薄塗りで裸に近い状態。肉眼からでも、描き直しとみられる線や下描きが透けて見えます。しかし、あくまでもチラリズム。見えそうで見えないという、最もひん剥いてみたいシチュエーション。てことで、作品展示とともに、光学的調査の結果が示されていました(いや、「てことで」じゃないだろう)。薄衣の下が丸見え、に近い。調査により、制作過程が浮きぼりになった点も興味深かったです。
▼「海の幸」の傍らには、「海景(布良の海)」「海」が配されていました。制作の経緯や場所に関連させた展示。別室にて、現地調査の結果も見られました。
▼その他の作品も、「自画像」「わだつみのいろこの宮」「大穴牟知命」など充実したラインナップ。資料の展示もあり。「海の幸」から放射される様々な青木像を取り上げ、ひとつにしたような感じ。良心的な展覧会でした。 「月下滞船図」は、柔らかな月明かりが印象に残る作品なのだけど、ギラギラとした主張やなんかは抜けてしまっている。油っ気なし。青木繁と思うと、少々複雑。
▼ちっちゃいものクラブ。マティス「静物」(1903)は、縦5cmあるか横10cmあるか。色彩が躍るというわけにはいかず。安井曾太郎は、1950〜55年の文藝春秋表紙から9点。実物大で描いてるっぽい。作風は、室内、金魚など、マティスを臆面もなくにじませております。配色やタッチとか憑依している。あきれる位に器用。まさに桃色の桃とか可愛いですが。セザンヌ「鉢と牛乳入れ」(1873-77)は、日常の光景が左に傾き、ほんの少し日常から逸脱するという絵画世界。(10-06)
09/01-11/19 INAXギャラリー
▼家を新築する予定のある方にいいかも。
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名古屋展:12/02-2006/02/17 INAXギャラリー名古屋 大坂展:2006/03/03-05/19
INAXギャラリー大阪
10/03-10/27 INAXギャラリー2
▼ハムスターが輪を回すと動く車を、ボーッと見ました。液晶をぶちこんだ首ふり扇風機、感知するコンクリもあった。どこかで何かと何かがつながって、連動しているようです。生物のように動く無機物とか。工作のような見た目は、魅力と捉えるべきなのでしょうか。
09/06-10/08 ギャラリー小柳
▼フロアが変わったら、内装が野性的になっていました。ギャラリー小柳。アントニー・ゴームリーは集積していました。
09/20-10/23 町田市立博物館
▼点数控え目でかなりコンパクトな展示。でも、無料だからいいですそんなこと。
▼近世部屋には、円山応挙「波濤図」が鎮座。大きな屏風で、岩と砕け散る波が描かれています。鈴木其一「山水図・宮女奏楽図」は扇面。山水は、生理的に訴えかけてくる筆致と、扇の形に対応した構図に注目。歌川広重「飛鳥山・隅田川・佃島図」は雪月花で、広重らしい細やかな肉筆画。「乗興舟」「百鬼夜行図」は、近所ならば巻替えにも対応可能かもと思いました。
▼近代部屋では、速水御舟「鯉魚」。連綿と在る「鯉魚図」を踏襲したような感じだけど、さすがによく描いてあります。隅に花を配してあるのが、少々センチメンタル形。しかし、何のかんの言ってもメインは横山大観「夜桜」(10月4日〜16日展示)でしょう。と、棒読み。いや、こちらの作品もよく描いてありますよ。相変わらず棒読み。
前期:10/08-10/30 後期:11/01-11/23 町田市立国際版画美術館
▼作家多数、作品も様々。「浮世絵モダーン」を合言葉に、広範囲な展示。時代の流れ、人や作品の動きなど全体を味わえる感じ。
▼作品それぞれも、個性的で楽しい。吉田博は「東京拾二題」が好みで、橘小夢は毒々でビアズリー風味でいやでも目に付き、石川寅治「裸女十種」の贅肉とモダンなインテリアがたまりませんでした。樋口五葉「夏衣の女」の老けとエロの融合にやられたり。透け透け。あと、ポール・ジャクレーは何にめざめているのでしょうか。
▼作品が集まっているのでカタログ的見方も可能。
▼版画いろいろ第3期 9月28日〜12月25日
小特集 ホルスト・ヤンセン −描くことに憑かれた男−
展示作品の一部は、「1988年に行った作家招聘事業のために制作された」とのこと。「ヤンセンの銅版画の刷り師であるハルトムート・フリーリングハウスが版を携えて来日、町田に滞在し、刷りを行った」そうです。町田で栽培されている、大賀バスを用いた蓮紙も一部に使用されているらしい。丸写し状態。ええと、古き良き潤沢な時代を見ているようです。
▼作品は、明らかなネタ元が認められたり、痛点に入り込まれそうだったり。(10-08)
前期:09/17-10/10 後期:10/12-10/23 板橋区立美術館
▼中山高陽から始まる関東南画を時系列に展示。飄々とした中山高陽、汎泥亀・北山寒巖、グロ桜と清涼感溢れる魚を並べる渡辺玄対ときて、谷文晁、渡辺崋山、崋山を継承・椿椿山へ。文晁「枯木山鳩図」の勢いをもった墨と緻密な色彩の対比、崋山「渓山細雨図」「孤鹿図」の詩情が印象的。
▼各地で活躍した南画家の展示も。水戸の林十江〜立原杏所ラインとか。林十江は、拡大した蜻蛉や「松下吹笛図」の縁取りにびっくり。奇天烈。立原杏所は、淡い色彩の「雪月花」、繊細な「蘆雁図」にびっくり。唐突にメルヘンチック。しかし、最も目を離せなかったのは、仙台の菅井梅関でした。「鵞鳥図」は、ぼってりしたというか形容し難い筆遣い。前述の渡辺崋山は、時に心をひっかく絵を描きますが、鵞鳥は網膜をひっかきます。
▼こちらの美術館らしい、面白い作品が集まっていました。また、南画に関する説明コーナーも設けてあり、わかりやすく親切設計でした。
前期:09/27-10/10 後期:10/12-10/23 東京藝術大学大学美術館
▼「髑髏図」目当てで行ったら、後期展示とのこと。1ヶ月弱の会期に前後期あるとは。帰宅後、台東区ホームページを見たら、「髑髏図」の脇に「※10月12日から展示」って入ってました。前はそんなこと書いてなかったのに…でも、前期のみ展示の抱一が見られたからいいです。
10/04-12/04 東京国立博物館
▼点数が物足りないような。だから、すごい早足で概観という感じ。あと、写しとかも解説で済ませてるし。この辺りは食い足りない。作品自体は良いです。初期伊万里の大胆な絵柄と素朴さ、鍋島の洗練、乾山が印象的。でも、他にもあるじゃないか。沢山。と、どうしても思ってしまいます。乾山はあれもこれもそれも来てない。仁清だってあれもこれもそれも(以下略)
▼ドイツのシャルロッテンブルク城の「磁器の間」を再現というのがありますが。寂しい空しい。展示されている「色絵桜樹群馬図有蓋壺・広口瓶」は、豪華でギラギラでいうことなし。金襴手ここにあり。馬増殖、鶏もいます。
▼うずらうずらうずらうずらうずらがたくさん。土佐光起「粟穂鶉図屏風」(屏風と襖絵 安土桃山・江戸 〜10/23)、土佐光成「秋草鶉図」(書画の展開 安土桃山・江戸 〜10/23)の親子共演あり。鶉描法が、丸々遺伝もとい見事に継承されております。ここで「巨人の星」における、血の滲むような特訓シーンやら一徹のちゃぶ台プレイが浮かんでしまうのは、やはり修練が足りないのでしょう。て、何の修練だか自分にも不明。亀女「銅鶉香炉」(暮らしの調度 安土桃山・江戸 〜12/18)は、蝋型鋳物らしい。丁寧な細工で、羽部分は前述親子による絵画を立体におこしたような肌合い。作者は、長崎で活躍した女流鋳工とのこと。能茶山「色絵粟鶉図砧形徳利」(暮らしの調度 安土桃山・江戸 〜12/18)には、青い鶉が描かれていました。
▼気になった作品:「慧文大師像」(仏教の美術 平安〜室町 〜10/10):大らかな姿を、丸みをもった太い線で表しています。特に手が印象的。対して、衣の文様はどこまでも繊細。手彩色によるものらしい。隈取りも良好。/「後三年合戦絵巻 巻下」(宮廷の美術 平安〜室町 〜10/10):首が転がり、腸がはみ出し、腕が切り落とされ、(可哀想に)馬は腹を射抜かれ、死体が折り重なり、血と炎の赤がほとばしっています。見ながら牛の如く反応。鼻息も荒く。結構傷んでいるのが惜しい。描きたてほやほやの時点では、もっと血なまぐさかったのだろうな、と夢想。/霊彩「文殊菩薩像」(禅と水墨画 鎌倉〜室町 〜10/10):線が命。いくつかの種類の線を使い分け、そのどれもが非常に美しい。所々に含まれる、金泥の線がまた美しい波紋となっている。/「紺糸威二枚胴具足」(武士の装い 平安〜江戸 〜12/18):黒に紺の組み合わせがシック。兜の前立ての金がアクセント。これは着用してもいいかなと思った。て、出来ませんが。/「菊折枝据文鞍鐙」:木目を漆塗りで表現。見てると気が遠くなるような。
▼あとは、江戸絵画は面白い「浅間山図屏風」は質感がルソーとか、是真はやっぱり素晴らしいとか、巴水を江戸東京・町田に続き見れたとかそんな感じです。(10-10)
10/22-12/18 東京都美術館
▼チラシに「モネ、ルノワール、ゴーギャン、マティス、ピカソ…世界屈指のフランス近代絵画コレクション」とありますが、まさにその通りの内容。屈指かどうかは不明。
▼つらつらと。 / セザンヌ「池にかかる橋」。緑と橋、それらを写す水面が、色彩の断片となり、走る筆捌きでもってつなぎ合わされたような感じ。セザンヌの先進性が、ストレートに表出。していると思います。最も印象に残った作品。で、出品リストの但し書き「…セザンヌやボナールといった穏やかで装飾的な作品に…」にツッコミを入れたい日々。 / ボナール「洗面台の鏡」。鏡の系譜に位置。するのか?室内と鏡の中に浮かぶ世界とが交錯して。こもったような空気と薄く広がる光が、粒子のように表されています。 / ドラン「水差しのある窓辺の静物」。窓の向こうの風景と、キュビスムの取り合わせが妙。アンバランスで足元ぐらつき気味。 / 40年ぶりといわれる「金魚」は、色彩溢れる空間にねじれが。あと、ルソー2点が見られてよかった。
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巡回:2006/01/11-04/02 国立国際美術館 公式サイト
▼《ローマの景観》:ピラネージのまなざし 10月8日〜12月11日
連作「グロッテスキ」とそれ以降の作品が、かなりの違いっぷり。波打ち短くつながれた線と硬質な線、イメージは白と黒。
▼連作「ローマの景観」「パエストゥムの古代遺跡の景観」は、現在に過去が堆積。画面には、視点の移り変わりが転写されているかのよう。(10-15)
前期:10/07-11/13 後期:11/15-12/18 大倉集古館
▼大倉集古館の狩野派大集合って、結構珍しいような。狩野派にまみれる良い機会かと思われます。
展示構成は、「狩野派の始まりとその周辺」「探幽登場」「探幽以降の狩野派」。最多は探幽作品で、出展作の3分の1程を占める状態。次に多いのは常信。ただし、前後期で殆どの作品が入れ替わります。
▼ちゃんぽんな探幽には、学習や吸収の跡がちらり。「花籠に牡丹図」は、花弁は南宋風味、葉や籠は粉本に探幽がミックスされたようなタッチ。同居具合が面白い。「鵜飼図」は、やまと絵風味。潜る鵜と、透ける水面の表現がなかなか。「瀑布之図」は、極端な細長画面にて滝の落差を強調しているのだけど、こういう工夫もしていたのだなと。いや、どこかから学習したのかも。「探幽縮図」には、雪舟の写しがありました。本家に比べ、少々薄味。
その他、英一蝶「大井川富士山図」の軽妙且つ細かな筆致や、富士山を強調した構図に惹かれたりしました。肩車、輦台、身ひとつなど、川の渡り方もわかる。