02/16-04/10 目黒区美術館

▼画材、作品共に、油彩と日本画的感性の折衷みたい。油彩、絹本、金箔を用いて描かれていたりして、意表を突かれます。金銀の世界に浮かぶ鳥たちや花に、ハッとさせられたりも。完成品は色が濁っていたり、肌が汚かったりするのだけれど、抗し難い魅力があるのも事実。

▼展示は、加島コレクションの油彩画に、江戸東京博物館蔵の下絵等をあわせたもの。資料の存在により、制作過程や作品の種みたいなものが見える感じ。加島コレクション〜出版社至誠堂創業者・加島虎吉との関わり、至誠堂をはじめとする書籍デザインや口絵、挿絵の紹介もありました。(04/03訪問) 展覧会資料兼展示品「川村清雄 作品と其の人物」(木村駿吉著)では、柴田是真への言及部分が見られました。作品から、是真の影は色濃く立ち上っているし。

03/12-04/17 府中市美術館

▼起点は、司馬江漢の「生花図」。色とりどりの花を生け、釣り下げた一品です。花弁がとりわけ美しく、上から下への動きや、伸びる茎の先の空間が印象に残ります。この作品から、同じような形態をとる2作品(椿椿山「花籠図」、上杉勝賢「花籠図」)へと移行します。3点の類似点、相違点、アレンジ具合などが興味深かったです。

▼さらに、司馬江漢の作品同様、南蘋派・西洋画を内包する花々や風景へ。濃厚でおかしな精緻さ、妙な質感を持った作品多し。若冲の「旭日松鶴図」もあったり。鶴が巻き付いています。それと、個性の強い作品も多し。織田瑟々の蛇腹のような幹にヒゲの伸びた葉、透ける花びらを持つ桜や、露珍のデロリとした花鳥図を見るにつけ、裾野は広いなと思う次第。

▼鈴木其一が最も奇に傾いた、蔓ぐるぐる巻きの「蔬菜群虫図」や、五百城文哉の「百花百草図」が見られたのも嬉しい。その他、渡辺崋山「渓澗野雉図」と、椿椿山「野雉臨水図」の共演があったり。充実した展示でした。(04/03訪問)

諸越画集 秋田蘭画
展覧会にあわせた販売の模様。秋田市産。
諸越とは「あずき粉・和三盆糖の持ち味を活かしたお菓子」で、「宝永2年に秋田藩主佐竹侯が家臣の功労をねぎらうため、煎り米を菓子につくらせたのがはじまりといわれる」とのこと。特筆すべきはその形状で、秋田蘭画をモティーフにしております。小田野直武・佐竹曙山作品から2点ずつ採用。ソフトな甘さの5枚入り。

パッケージ。小田野直武「不忍池図」

▼描かれた武蔵野・東京 3月12日〜4月17日
小林清親・井上安治による明治の名所図絵と、鹿子木孟郎・吉田博らによる克明なスケッチ。両者を勝手に対比させてみたり。江戸から連綿と続く表現に、明治の風景と作家の個性が流し込まれている様。ひなびた風景を写実的に描く、というより記録の如き感覚が存在する様。

▼その他、水彩画、画家たちが暮らしを営む場であると同時に絵画世界に転写された風景、描かれた都市の姿。府中という土地柄か、競馬系絵画が数点。(04/03訪問)

前期:03/11-04/10 後期:04/12-05/08 愛知県美術館

▼自然がキーワード。四季を感じさせる作品を並べたり、風景における表現や捉え方の変遷を辿ったりしています。が、構成云々より、「とにかく集めました、日本美術」感の方が強い。あちこちの美術館や展覧会で細々と見た作品が、ひとつの会場で顔つきあわし。一気に見られるから、効率は良いかも。大物あり。

▼印象に残ったのは、池大雅「瀟湘勝概図屏風」。光を含む色の粒。風に吹かれ拡散して。気持ちよさのありか。「琴弾宮縁起」の繊細な描写と俯瞰、「日月山水図屏風」の装飾性も目に焼きついたり。個人的ツボは、抱一の「八橋図屏風」、八橋模様の硯箱や小袖の勢揃い。抱一は毎年出光で見ているのだけど、今年は名古屋になりました。(04/09訪問) 週末・午後の割にはすいており、快適に見られました。この手の展覧会は込むことが多いと思うのですが。これからが山場?

03/12-04/17 出光美術館

▼展示兼研究発表という趣き。雪舟とされていたが実は等伯だった、やまと絵が師匠な着色画の発見など、新たな作品がごろっと出てきます。また、等伯像を浮彫りにする試みもなされています。従来の水墨画から脱却した作風が感じられる、情感漂うよ等伯みたいな。個人的には、「そうなんだ」。琳派への影響や繋がりというくだりは興味深かったです。「波龍図屏風」と宗雪作品との類似を指摘、所蔵先である本法寺から関わりを導き出したり。「柳橋水車図屏風」や「波濤図屏風」にみられる、“ヒット図像で商品量産体制”も面白かった。図像コピーをしくじってる作品が出てたりして。等伯のネタ元である「宇治橋柴舟図屏風」の方が、細やかな感覚を備えてる気がしたり。それぞれ、等伯作品と比較・検討対象である作品が並べられており、その場で独自の推理も可能です。

▼これらは現時点での研究成果であり、今後、変更や修正、新発見が加えられていくのでしょう。そういった意味では、ライブ感溢れる展覧会かも。過去が現在も動いているという。
作品は、水墨着色とバラエティに富んでおり、画風の広さを示しています。植物など、モチーフの使いまわしも結構認められたり。「萩芒図屏風」とかの揺らぎ流れる様子も。(04/10訪問)

04/09-07/18 横浜美術館

▼「歴史画」「時事的絵画」「オリエンタリスム」「動物画」「肖像画」「風景画」「風俗画」と、ジャンルごとに分けた展示。サブタイトルは、時系列を意識させるのですが。フェイント。

▼作品は、結構頑張って持ってきてるのでは。特にアングル強化?ということで、「泉」「トルコ風呂」の他に、「スフィンクスの謎を解くオイディプス」もあったりします(作品貸与の条件は、モナリザの間への資金提供?)。陶器のような肌を持つ作品や、画家自身の訴求力をかってのラインナップか。ジェラール「プシュケとアモル」のような美し系や、入水の系譜も見られます。系譜といっても、ドラクロワ、ドラローシュ少々ですが。

▼その一方で、ドラクロワの「サルダナパロスの死」はエスキースだった等、要は不在気味だったりも。時代的に、ナポレオンと切ってもきれない間柄だけど、その辺も薄味だったり。が、要は巨大作品ばかりで入らないだろう、大体貸してくれんだろう、無理。と、投げやりに結論付けました。ナポレオンに関しては、グロの「アルコレ橋上のボナパルト将軍」が来てたので、良しとすべきでしょうか。(04/10訪問) 会場は込み込みで人垣が出来ていました。ダヴィッド「トリュデーヌ夫人」の前で、「ライオンに食われた人に似てる」「松島トモ子!」とか話してる人がいたりして、面白かったです。 唐突にジェリコーの馬絵情報:「白馬の頭部」1点あり。念の入った描写が、馬への興味と愛を感じさせる作品です。が、「エプソムの競馬」とかも見たかったなあ。

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巡回:07/30-10/16 京都市美術館

▼コレクション展第1期 4月4日〜7月20日
院展の画家たち―大観と観山を中心に
横山大観、下村観山、今村紫紅、安田靫彦、前田青邨、小茂田青樹といった顔ぶれ。日本美術院の親・子・孫展示といいましょうか。随分と乱暴な例えですが。岡倉天心は、胸像(平櫛田中作)にて参加。恰幅いいなあ。
観山は、案外と自在な芸風。に見受けられました。「鎌倉武士」は、漫画のひとコマに限りなく接近。画面構成が、枠と一場面のような。人物は、目が丸くキャラっぽい。「辻説法」は、よく見ると不思議な光景。俯瞰構図。屋根の上には割れ物や魚の骨が放置され、トッド・ブラウニングを少々含有。ラファエロの摸写もあり。絹本に描かれていました。
大観は、燦然たる存在であると同時に、一流の釣師でもあると思う今日この頃。その存在感は、見る者によって変わるという。私は釣師に1票を投じます。生まれ出でた作品群、発せられた御言葉は非常に美味。ひしひしと伝わるは「他人からこう思われたい」。あーまた釣られてしまった。いや、しかし。良し悪し問わず、ひっかかる部分があるのだから、大変な芸術家であることは確かです。と、フォロー。

▼その他、「フランスの近代美術―セザンヌを中心に」「幕末・明治から大正期の絵画と版画」「19世紀の写真」。「幕末・明治から大正期〜」では、渡辺幽香「幼児図」に惹かれ。いつ見ても、得体の知れない魅力を発しています。子どもをめぐる場面設定が奇妙で、念の入った描写が奇妙さに拍車をかけて。額は、玩具をあしらったデザインで可愛いですが。ちなみに子は、加藤清正の幼き姿といわれているらしい。
写真は年代を絞った展示で、まとまっていたように思います(幅広い展示が、意味のない羅列に見えた時もあったので)。フェリックス・ベアトによる、日本の風景が印象に残りました。手彩色が味わい深い。ジュリア・マーガレット・キャメロンによる、少年少女の危うさとヘタウマテクニックの融合もおつなもの。(04/10訪問)

04/17-05/29 栃木県立美術館

▼作品は、曾我蕭白と鈴木其一が目立っています。複数出ているうえに良質。
蕭白は、質感に対するこだわりが窺えます。「松に鷹図」では、花は柔らかに儚げに描き、松は幹にこぶしとうねりを注入、違いを際立たせています。さらに鷹は、手動CG(て、何?)の如きタッチ。重ねられた羽は立体化し、段階的に浮かび上がっています。三様の質感が一体となり、力技で貼り付けられている感じ。「林和靖・太公望図」は、墨の階層により構成された世界。破綻は一切なく、隙のなさが塗りを金属化させています。色の薄い部分が浮かび上がっており、それが奇妙な酩酊を呼び覚ましています。
其一の「富士越龍図」は、線や暈し滲みを惜しげもなく披露。思わず、近寄って見てみたり。「品川・吉原図」は、湿潤な空気で覆われた夜の品川に、小雪舞う吉原。品川は漁火が叙情を誘い、吉原は傘の模様と形と配置がデザイン魂を感じさせます。
両者共、発想や嗜好が面白く、またそれらを具現化させるだけの手業を持ち合わせていたのかなと。そんなことをぼんやり思いました。

▼その他、渡辺小華「百菜魚図」、森徹山「水禽図」で、尽くしや数の勝負や盛り合わせを楽しんだり。森徹山の鳥はやたらに細密。それと、若冲の墨画2点は丸に接近していました。

▼岸派の孔雀や森派の猿もいるし、狩野派も出展。大まかに、江戸絵画体験が出来るようになっていました(ちょっと穴あり)。詳細不明の画家による作品も、興味深かったです。(04/29訪問)

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今後の巡回:06/10-07/10 北九州市立美術館

▼4月17日〜7月10日 コレクション企画I 花のこころ、草のいのち
コレクション企画は、どこからどこまでなのか。実は区切りは無く、フロア全体で「花のこころ、草のいのち」を表現しているのか。確かに花や自然を描いた作品は多い。しかし、どこからどう解釈しても、テーマに合致しない作品も展示されている。と、謎を含みつつのフロアを徘徊してきました。

▼器はどうあれ、作品にはさしたる問題も無く。ジョルジュ・ビゴー「文を読む女」は、部屋の片隅にいるような錯覚を覚える一品。ほの暗さがよいのかも。川島理一郎「蘭花図」は、暖色を主とした花々に、寒色系のアクセントをズバズバ効かせ。大胆な筆勢が、生命を吹き込むという感じでしょうか。藤田嗣治「花を持つ少女」は、透け感がそこはかとなく淫靡。顔は福笑いチックなキュビスム。かもしれない。アンソニー・グリーン「スコール・6・デイ」は、作者特有の気味悪くも気持よい描写が誘いをかけて来ます。しかし、これってもしや競輪選手が花束抱えるの図だから採用されてたり。花のこころというか、花はモチーフのひとつ。行き当たりばったりで父ちゃん泣けてくるよ。青木世一のルソー キット「フットボールをする人々」は、名画模型。人々や木がパーツ化。型抜き。それらを組み合わせ完成に到ると、妙な奥行きが生まれます。箱付き。AOKIT 1/2SCALEと書いてあった。

▼小杉放庵の「一本杉」の隣りに、前回展示されていた「べぼうの木」を並べて欲しかったです。(04/29訪問)

04/08-05/29 東京藝術大学大学美術館

▼東京芸大が収蔵する、芸術資料を生かした展示。

▼高橋由一の「鮭」は、水彩や写生帖とあわせて展示されています。写生で培った観察眼により、鮭が生まれた。てーことですか?その他、併せ技系では「日本画と下絵」に目が行きました。下絵が語る、完成に到るまでの試行錯誤を語る。割に雄弁。下絵と完成品との間を想像したり、双方向から見比べてみたり。
熊谷守一の油彩裸婦と、「裸婦集」「素描集」展示も、上記と似た形態。こちらは、後の展開をも示唆しているような。

▼安井曾太郎による、留学時のデッサンもあり。さすがに巧みです。傍らには、描く過程について書かれた文章が添えられていました。結構詳細な記述。しかし、文章は安井の直筆なんですよね?80年代に一世を風靡した、丸文字風味の筆跡に、軽い衝撃を覚えました。(04/30訪問)






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