2004年2月

フランス・ハルスとハールレムの画家たち
01/24-03/07 佐倉市立美術館

▼17世紀オランダを代表する肖像画家フランス・ハルスをはじめ、ヤーコプ・ファン・ライスダール、ヤン・ステーン、ウィレム・ヘーダなど、貿易で栄えた町ハールレムで活躍した画家たちの作品を、フランス・ハルス美術館の所蔵作品の中から選定した60点で紹介する。(同展チラシより)

▼作品を介し、17世紀のハールレムを巡る趣向。ハールレムの風景、街を行き交う人々、教会の中や食卓風景が佐倉で味わえるという。時代や国をすっ飛ばし、当時の暮らしを見せてくれる風俗画の魅力を味わえました。雰囲気のよい展示です。

▼フランス・ハルスは、最も早い年記の作品1点と集団肖像画2点の出品。筆捌きは、「養老院の女性理事たち」が好みでした。(02/11)




逝きし芸術家を偲んで −勅使河原宏、若林奮をはじめとする11人の作家たち−
02/07-02/29 千葉市美術館

▼所蔵作品展として、2001年から03年にかけて亡くなった芸術家の作品を展示し、あわせてその業績を回顧する。

▼それにしても、しんみりしてしまうタイトル。亡くなったのつい最近じゃないか…と、若林奮の作品並ぶ部屋にてしんみり。
作品自体は、立体の方が面白かったです。陶の質感を生かした鈴木治とか。平面部門(つーのも何だが)では、小野忠弘の「ポニーの骨」が気になりました。画面の所々に、象牙色の物体が埋め込まれているのですが、もしかしてポニーの骨なのか?(02/11)




新収蔵作品展 −棟方志功ら近代版画の名作、内筆浮世絵の稀少作など−
02/07-02/29 千葉市美術館

▼「房総ゆかりの美術」「日本近世・近代の絵画・版画」「現代美術」という収集方針に沿って、コレクションを公開。

▼最も興味深かったのが「日本近世・近代の絵画・版画」。西川祐信「四季風俗図巻」は、細かい描き込みと綺麗に残った色彩が目を引く一品。人物の表情も生き生き。特に男性の顔がおかしいです。全部広げてあるので、お得な展示かも。箱まで置いてある。他に、鈴木春信の版木、長澤蘆雪による筆走り系の屏風など。やっぱりお得だ。近代では、「媽祖」という凝った作りの版画誌が印象的。谷中安規他が見られます。

▼「房総ゆかりの美術」では、横尾芳月「線香花火」が目立っていました。女性の顔立ちに表情、描法がいかにも大正時代。妖しさを発散。「現代美術」は、但し書き中に「須田悦弘の『朝顔』が所蔵品となりました。今回出てないけど(要約)」という記述が。出品して下さい。(02/11)




life/art '03
01/09-02/22 資生堂ギャラリー

▼今村源、金沢健一、須田悦弘、田中信行、中村政人の仕事を5年間定点観測する、シリーズ企画第3回。今回のテーマは、田中信行の発案による「触れる」。

▼昨年同様、統一感ゼロの展示風景が素敵です。「触れる」に対する解釈の違いを楽しめってことなのかな。触れるといえば、今村源の「2004-1 ふれるコト ファイルケース・キノコ」を回転させたら、妙に空しくなっちゃったんですけど。回転速度を上げると空しさもUP。あと、田中信行の「SHAFT OBJECT-千段巻」は、重さと感触が硬貨の束にそっくり。こんな感想ですまんです。個人的には、須田悦弘の彫刻に触れられて感激、満足。

▼テーマもあることだし、展覧会全体を見るべきなのでしょうが。でも、本当にバラバラなので、作家単位で眺めるしかない感じ。と、昨年に続き丸投げして終了。(02/11)




円山応挙 <写生画>創造への挑戦
02/03-03/21 江戸東京博物館

▼サブタイトル通り、「写生」に焦点を当てた展示。区分けや解説も、それに準ずるものとなっています。展示方法の目玉は、大乗寺襖絵の立体再現。

▼大乗寺の「松に孔雀図」。室内に松の幹がそそり立ち、枝葉が伸び、孔雀が佇む異界っぷり。金と黒で彩られた世界は、それはもう気持のよいもので、激しくリピートしてしまいました。と、字にするのがアホらしくなる体感至上型絵画。その他の個人的収穫は、「雪景山水図」「雪梅図」「雪中訪友図」で、降り積もる雪の表現を堪能できたことです。

▼作品・資料が、よくぞここまでという位に集めてあります。見所ある作品がそこかしこに並んでいる展覧会でした。加えて作品群から、初期から晩年までの応挙を俯瞰できたりもして。それに対し、展示自体は少々難ありでした。大乗寺襖絵が寄らないと全体を見られなかったり、狭い通路の間に屏風を置いたり。「雨竹風竹図」とか、もう少し広い所で見たかったです。(02/13)




亀山法皇700年御忌記念特別展 南禅寺
01/20-02/29 東京国立博物館

▼南禅寺本坊や塔頭の寺宝を中心に構成。普段は公開されない文化財を含め、亀山法皇の姿を表した彫刻や絵画、自筆の起願文、さらに、大方丈の障壁画などを展示する。(同展チラシより)

▼袈裟、頂相など、まさに寺宝な品々が多数、個人的には長谷川等伯、狩野探幽、円山応挙による障壁画の展示が印象的。それから、狩野派による「南禅寺本坊大方丈障壁画」は、豪華絢爛というか手加減なしの装飾性。「瀑布白鳥図」「垂柳椿図」とか何々でしょう。悪趣味なまでに大盛。しかし、過剰なものに惹かれる場合もあるようで、美味しく平らげてしまいました。腹いっぱい。あとは、書家・池大雅が見られる「天馬賦」に興味持ったり、祥啓筆「達磨図」の鼻毛と耳毛に萌えたりしていました。(02/14)

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巡回:04/06-05/16 京都国立博物館




ドイツ国立芸術展覧会ホール開催 「日本の美 日本の心」帰国展
I期:01/27-02/15 II期:02/18-03/07 東京国立博物館

▼昨年、ドイツのボンで開催された「日本の美 日本の心」の帰国展。帰国展では、ボンの出品作品の中から70件を選んで紹介。室町時代から江戸時代に焦点を当てた構成で、I期は「武士の装いと生活」「書院」「能楽」がテーマ。

▼平常陳列の体裁を整え、海外仕様にした感じ。東博の平常陳列だから、普通に国宝・重文が並んでいます。雪舟の「秋冬山水図」が見られたり。こちらは、「書院」に展示されていました。

▼色濃く海外仕様なのは「武士の装いと生活」。日の丸をあしらった甲冑、富士山形の兜に、エキゾチック・ジャパンbyヒロミゴーを見ました。加えて、私が永徳だ!巨木!ナンバー1!「檜図屏風」!や、でかいことこの上なし「龍虎図屏風」があったりして、視覚的にわかりやすい。で、あとは能面がずらりと並ぶ「能楽」と、がらんどうが待っています。埋まらない会場って寂しい。(02/14)




小川百合 BOOKS
02/07-02/28 ギャラリー小柳

▼黒の色鉛筆で図書館や本を描いています。独特の静寂、古びた紙の匂い、高く積まれた本と本の間に浮かぶ影、本に囲まれることで得られる不思議な安堵感。といった、心の奥底に潜む、純化された存在の図書館や本を、絵画で表現したという感じでしょうか。背表紙の傷みがツボ。ところで実際の図書館はといえば、携帯電話の話し声、なぜか漂うアンモニア臭、ざわめきで成り立っていたり。いえ、近所の図書館の話ですが。(02/14)




北山善夫展 −絵画の言挙げ−
02/02-02/25 INAXギャラリー2

▼INAXギャラリーとギャラリー小柳は目と鼻の先。という流れで見ちゃいました……語尾で察していただければと思います。単なる好き嫌いです。ええ。粘土細工を作り、それを黒インクで鳥の子紙に写し取っているそうです。宇宙風味の作品もあり。(02/14)




[常設展]警察博物館

▼ヘリコプターや白バイなどの現物から、歴史資料まで取り揃えてありました。現物は試乗可能。動きませんが。訪れたときは、制服姿の中学生(推定)が搭乗中でした。とりあえず、警察あれやこれやという展示ですが、統一感は見られません。

▼度肝を抜かれたのは、「殉職者顕彰コーナー」。警察手帳、制服、手錠、縄などといった遺品や、遺影が並んでいます。何ヶ所も切りつけられた跡が残る制服、手帳の端にこびり付く黒に近い茶色のしみは刺されたときの血だろうか。生々しすぎて非常に怖いです。事件経過、死因などを記したキャプションも迫ってきます。

▼あとは、「明治時代の警察文書(刑事・鑑識)」コーナーにあった、『古今書画偽印譜』が興味深かったです。大正10年から昭和20年頃までの偽印一覧簿で、巻四まで展示されていました。頁が開かれていたのは1冊のみで、そこには牧谿、雪舟、雪村、是真、栖鳳などのニセ印章が掲載されていました。他の頁や巻も見てみたい。マニアの方には、歴代の制服展示がおすすめです。(02/14)




[常設展]東京国立博物館

▼日本美術の流れ(鎌倉・南北朝・室町 II ):音の造形 2003年12月9日〜3月21日
音楽と美術の融合?美を織り込む意識が見えます。

▼日本美術の流れ(桃山・江戸 I ):遊びのかたち…2003年12月16日〜3月21日
双六、貝桶、歌留多他の展示。双六盤側面に施された蒔絵、貝に描かれた美しい絵画など、遊びと装飾、美意識の相関図が見られます。対して歌川国芳筆「水滸伝豪傑双六」は、文字通りの豪傑さん。この双六は、まさに「遊んでいた」感じ。
この展示室では、絵画と立体作品の取り合わせ展示が見られます。今回は、掛軸「若衆双六遊び図」と、双六や歌留多の意匠をあしらった蒔絵箪笥が並べられていました。ちなみに、少し前は「羽根突き図」と羽子板の展示でした。

▼江戸開府400年記念特集陳列シリーズ「幕府と町人」 江戸の作法 1月27日〜3月7日
作法とは、他人との関わりにおける立居振舞の意。よって、礼法から甲冑着用法、「酒宴即興舞ひとり稽古」など、あらゆる場面において作法が存在しています。それらを資料により、具体的に表したのが今回の展示です。 個人的には、作法=小笠原流という感じ。当然の如く、資料の展示あり。面白展示品は、歌川芳員筆「甲冑着用備双六」。甲冑の着用手順がそのまま双六になっています。スタートは、もちろん薄着。絵画や書の稽古書もありました。絵画は筆の持ち方が図解で示されていたけれど、全部読んで実践したら絵がうまくなるのかな。

▼日本美術の流れ(桃山・江戸 II) 〜3月7日
谷文晁筆「公余探勝図巻」…版画を想起させる色彩や感触が印象的。描かれた場所は多岐に渡っています。海辺多し。俵屋宗達筆「鴛鴦図」…芦に鴛鴦。墨のたらしこみに琳派魂を見ました。長沢芦雪筆「方広寺大仏殿炎上図」…抽象絵画に近い感覚の作品。墨と朱で表現。朱は天高く燃えさかる炎。落款まで墨と朱の二色使いになっています。

▼日本美術の流れ(近代) 〜3月7日
川端玉章筆「玩弄品行商」…玩具、着物の柄、草花に至るまで精緻に描かれています。しかし、行商の爺様のねっとりした表情と相まって、細かな描写が粘着質に直結。恐ろしや。犬の描法に円山派の片鱗あり。が、やはりどことなく不気味なわんこなのでした。何ともいえません。

▼武器武具 〜3月28日 「鶴亀蒔絵鞍鐙」…表面一杯に鶴と亀が山盛り。日光東照宮・蒔絵版みたいな雰囲気。江戸時代・19c作と、割と新しいためか状態が良かったです。(02/15)






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