2004年1月

没後30年 福田平八郎展
2003/12/27-01/12 小田急百貨店新宿店

▼大分県立芸術会館所蔵作品を中心に初期から晩年にいたる代表作のほか写生、下絵など約70点を展示(同展チラシより)。作品の全体像を眺められる構成。水と雪の表現に焦点があてられており、複数の作品が展示されていました。

▼特筆すべきは水の表現。雨粒が落ちる水面、底が透ける水面、鮎のしなやかな動きに呼応するような水面。様々な顔の水面が漂っています。中でも、たゆたう水と、そこに映る光や影のみを描いた「水」には、削ぎ落とした心地良さがあるように思いました。画面一杯に描かれた屋根瓦に、雨が落ちる「雨」。それの水面版というか。平たい例えだな。もう。その「雨」は、下絵の出品がありました。

▼初期の、画風を模索する様が見て取れたのも収穫。短期間に、文人画風、女性像、影をつけ濃厚な仕上がりの南蘋風(?)など、多様な試みを行なっています。昨年見た、卒業制作に似た色合いの作品(驢馬と鵲)もあったりして。

▼全体を通して、画面構成の巧みさと、カラリストぶりが際立っていました。特に色彩は、実物を見てこそだなと。印刷では魅力が半減どころではないので。それから、過度に陥らない叙情性と、動植物を慈しむように描く所も、個人的にいい按配でした。(01/12)




奄美を描いた画家 田中一村展
01/02-01/25 そごう美術館

▼奄美群島日本復帰50周年記念。奄美時代の代表作をはじめ、青龍社展初入選から奄美に渡るまでの時期の秀作など、初公開作品を含め150余点を一堂に展覧。(同展チラシより)

▼「奄美の杜」シリーズ等、後期作品は密度が濃い感じ。奄美という題材を見つけた、納得のいく作品を残したいという気持が密度に結び付いているのか。とにかく見応えがあります。

▼少々地味ながら、千葉〜スケッチ旅行〜奄美で描かれた色紙も見所。一村の資質や、制作の手掛かりが詰まっている感じです。例えば、奄美の連作に登場する逆光の表現・植物の黒いシルエット。これって、色紙にも似た表現があるのです。薄暗い奄美のジャングルの中で見た、木々の間から差し込む強い光に触発されたものと思っていたが、実は違う?元来の得意分野なのか?と、色々妄想できます。色紙自体も味わい深く、特に千葉のひなびた風景がよかったです。

▼一村自身が撮った写真も出品されていました。撮影が上手だという話を聞き、興味を持っていたので、渡りに舟。で、評判通り上手いです。ブロスフェルト風の写真があったり。その他、幼少時に描かれた早熟作品、青龍社展初入選作「白い花」と繋がる作品、「倣〜」の署名が気になる南画、軍鶏の素描など、様々な展示があります。一村の世界に触れるチャンスかと思います。(01/25) 余談:奄美時代の作品「クロトンとカヤツリグサ」。版画のような、影絵のような、模様のような作風はどこから来ているのだろう。どういう経緯で制作されたのか気になりました。

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巡回:03/17-03/29 大丸ミュージアム・心斎橋、04/06-04/14 福岡三越、04/16-04/25 福屋広島駅前店、04/28-05/09 大丸ミュージアム・東京、05/12-05/24 大丸札幌店、05/27-06/08 大丸ミュージアムKOBE、06/12-06/21 山形屋文化ホール(鹿児島)、06/25-07/05 桐蔭学園メモリアルアカデミウム




[常設展]東京国立博物館

▼新年の企画展示、「博物館に初もうで」を開催中。年明け早々は、猿まわし、獅子舞などのイベントや、カレンダープレゼントなどが行なわれたようです。

▼「申・猿・さる」 1月2日〜31日
「博物館に初もうで」展示・その1。干支にちなみ、猿をモチーフにした作品が見られました。時代や表現様式は様々で、とにかく猿。東博では御馴染み、高村光雲作「老猿」がでんと構えていたり、ユーモラス且つ特徴をとらえた狂言面、伝毛松筆「猿図」があったり。後述の柴田是真筆の猿もいました。こちらは洒脱で勢いのある筆致でせめています。変わった所では、横山大観の摸写なんてのも。色々なタイプの猿がいて面白い展示。

▼中国絵画「吉祥―歳寒三友を中心に」 1月2日〜2月15日
「博物館に初もうで」展示・その2。松竹梅を中心に、吉祥を表す図像を集めています。印象に残ったのは、李●筆「霊鵲報喜図」。吉兆を報じる霊能力があるといわれる鵲が群れて舞う一品。作者は沈南蘋の高弟の一人とのこと。確かに納得の画風。南蘋派のある種濃厚な感じがよく出ています。趙之謙筆「花卉図」は、縦長のかなり巨大な掛軸。豪快で大胆です。描かれているのは、不老長寿を表す桃、子孫繁栄の瓢箪、多子の石榴、多福の仏手柑。いや、めでたいこと。

▼「博物館に初もうで」展示・その3。「染織にみる吉祥模様」 2003年12月23日〜2月15日もあり。

▼日本美術の流れ(近代) 柴田是真筆「漆画帖」。(1帖 明治時代・19世紀)(2帖 明治時代・13〜14:1881)手のひらにすっぽり包めるスペースに、技、神経の行き届いた線、興味深い図像が詰まっています。黒地に透けて見える羽、細かい細かい着物の柄、定番?後ろ向きの牛など。とにかくすごいよ是真。

▼その他、色々な意味で気になった作品 日本美術の流れ(桃山・江戸 II) 浮田一尠ヘ「駿牛図巻」…牛好きにはたまらん画巻。牛は14頭。黒毛が主、茶色も何頭か。結構厚塗りです。 日本美術の流れ(近代) 河鍋暁斎筆「豊干禅師」…でかい。暁斎の面目躍如な筆致が躍る。 横山大観筆「長江之巻」…水墨画。作品の奥底には、大観が意識した画人や画風が横たわっていると思われます。しかし、子どもが描いたような水鳥さんや牛さんは、なめているようにしか見えません。 国宝室 「地獄草紙絵巻」…炎と血の赤。肉。苦痛。素晴らしい、なんて書くと変態みたいですね。2月29日まで展示。 工芸の至宝室 本阿弥光悦作「舟橋蒔絵硯箱」…この意匠!! 3月7日まで展示。(01/25)




漂着物考展 浜辺のミュージアム
2003/12/01-02/21 INAXギャラリー1

▼海岸の漂着物を展示。種子、使い捨てライター、クジラの骨、玩具、缶などなど、ありとあらゆるものが近い国遠い国から流れ着いているのでした。漂着物って、想像以上にバリエーション豊か。中でも、馬の歯に陶片は意外すぎ。この2つは、解説が興味深かったです。それと、「オレンジ浮き」は現品に加え、魚拓ならぬ浮き拓の展示がユーモラス。

▼砂浜に放置は、ゴミもしくは落し物。系統立てて収集、理路整然と並べれば展示品。視点を変えた楽しみ方と、大げさだが博物館の原点を見た感じ。昨年見た、マーク・ダイオン展を思い出したり。(01/27)

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大阪展:03/05-05/21 INAXギャラリー大阪




`島庸二展 −1月のクローンド・ヴィーナス−
01/05-01/28 INAXギャラリー2

▼「以前に描かれた絵の一部を切り取って、それを新しい紙に乗せて、その切れ端の中に込められている様々な絵画的遺伝子を読み解きながら、そこから新しい作品を描き継いで」、制作しているとのこと。字面ではいい感じなのですが、ヴィジュアルが少々キツかったです。無茶苦茶に切り貼りして、色をのせて煙に巻くみたいな。

▼引合に相応しいかわからないけれど、ポロックや後の方のステラは、作品中に存在する独自の均衡(なのか?)みたいなものが目に大変気持ちよい。対して、`島氏の作品は、単にグチャッたまま終了。……していると思うのですが。(01/27)






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