2003年10月

NEW WORKS
09/09-10/04 西村画廊

▼舟越桂、一色ちか子、小林孝亘、三沢厚彦、押江千衣子、鴫剛、曽谷朝絵、横尾忠則の展示。ドローイング、完成作(?)と様々な出品で、各人の現在と途中経過が見られます。今、どこに立っているのか。これからどこへ行くのか。

▼横尾忠則はY字路継続中なのか。小林孝亘のドローイングは、相変わらず謎めいた手触り、どんな風に仕上がるのかな。曽谷朝絵の「corner」は本当にコーナー描いてて、目線が面白いな。とか思いつつ、眺めていました。ところで、植物以降の押江千衣子は、この路線で行くのでしょうか。(10/04)




福本潮子展 −くうかんの変幻のぬの−
10/01-10/29 INAXギャラリー2

▼会場内を横断する布と、点在する椅子によるインスタレーション。藍色に染まり、霞に煙る山々は、細い糸で紡がれています。凛とした空気、夜と朝のあいだという感じでしょうか。

▼作品と照明が合ってない気がしました。無理を承知で、ロウソクとかどうですか。危険極まりないですね。(10/04)




レイチェル・ホワイトリード
09/11-10/11 ギャラリー小柳

▼型取りでおなじみのレイチェル・ホワイトリード。今回も本棚などの型取りが見られます。加えて、主の去った部屋などの写真展示もあり。

▼いずれも、記憶の彼方から人の気配がしてきます。時は作品の中で止まったまま、人影は過去に向かい伸びている。記憶と現在、存在していたものと失われてしまったもの。雰囲気のある展示です。
しかし、湯たんぽを型取った作品に、マヌケ感をみてしまい。ハァ〜ぬくいなぁ。見る側の記憶やイメージは、だらしなくろくでもないのだ。って、そりゃ私だけか。(10/04) 追記:湯たんぽじゃないという話が。だとすると、まるで間違っているのですが…。とりあえず晒しものにしておきます。




浮世絵 アヴァンギャルドと現代
09/27-11/09 東京ステーションギャラリー

▼斬新な構図、戯画、あそび絵など、視覚に訴える浮世絵が勢揃い。葛飾北斎、歌川広重の定番ものを含みつつ、寄せ絵、やったら体壊れるぞの影絵、この絵は何を表しているのでしょうか?の判じ絵、畳み絵など手にとって遊ぶもの、刀の鞘に映して見る鞘絵…多彩な展示です。摺物も見られます。手にとる系は実体験コーナーあり。

▼絵師は、全体を通して歌川国芳が目立っていました。大活躍。個人的には、魚屋北渓が面白かった。奇怪な構図や表現。だけど、ちょっとユルイ所とか。

▼想像力とサービス精神溢れる作品ばかり。こういう展覧会は、理屈抜きに楽しめてよいなぁ。ところで「現代」と言いつつ、奈良美智しかいないのですね。いや、いいんですけど。(10/04)




小茂田青樹展 武蔵野を愛した詩情の画家
10/25-12/07 川越市立美術館

▼初期から晩年にいたるまでの院展出品作をはじめとする代表作や秀作約60点を集め、画業の変遷をたどる。(同展チラシより)

▼習画時代〜赤曜会時代、狭山・川越・松江時代、荻窪時代の3部構成。初期は手がついていかないというか、まさに習作という感じ。それが、金地に南瓜や茄子、トウモロコシなどがてんこ盛りで葉がわさわさの「菜園」辺りから、独自の色が出てきます。同時に、繊細な表現が目に付くように(と言いつつ、「菜園」は結構ワイルドですが)。後期は、基本的な表現を継承しつつ、空間を生かした構図が見られるようになります。中でも「睡鴨飛鴨」は、空間に琳派が混じった作品で好みでした。それから、全体を通して動植物が愛らしいです。

▼作風の移り変わりが掴める展覧会ではありました。が、所々、分岐点となった作品や見所のある作品が抜けています。それはある程度仕方のないことだと思う。でも、「虫魚画巻」の出品がないのは少々いかんです。日本画をなぞり、そのうち日本画に小茂田風味が加わるようになり、時が経つごとに小茂田風味は増してゆく。そして、「虫魚画巻」で小茂田青樹の世界が確立する。そんな、晩年に得た到達点であり、今後の展開を期待させた作品は、「小茂田青樹展」には必要なのでは。(10/25)


[常設展]川越市立美術館

▼2002年12月開館と、新しい美術館。郷土色強し。

▼《小特集・小茂田青樹と仲間たち》 10月7日〜12月27日
企画展「小茂田青樹展」にあわせたと思われる展示。小茂田青樹は3点の出品。内、「秋晴」と「トマトに蜻蛉」は掛軸。それぞれ、小鳥の足がピンと伸びている所と、トマトの添え木(?)が中央でプツンと切れている所が妙で気になりました。もう1点の「田園風景」は色紙。
「仲間たち」は、小茂田が所属していた赤曜会のメンバーと、小茂田の門下生。先輩であり、赤曜会の中心的存在だった今村紫紅の出品あり。これがまた、優品とも良品とも言えな(以下略)。紫紅の兄・興宗の作品もあり。他に、中村岳陵、牛田●村、小山大月、富取風堂、黒田古郷、岡田壺中、田中青坪。中でも、岡田壺中の「蛙」が可愛らしかった。雨の中、蓮の葉の上に蛙がちょこんと座るの図。

▼相原求一朗記念室 日本の風景…秋・冬
川越市名誉市民・相原求一朗を顕彰し作られたとのこと。主題であった、北海道の風景画を中心に展示されていました。
画面は白とグレーで覆われ、吐く息が白くなるような冷たい空気が張りつめています。印象的なのは、面を広く占める大地や木々。風景の切り取り方がとても面白かったです。普通の風景画なのだけど普通ではない感じ。構図から想像するに、写真撮るのも上手だったのではないかと。

▼他の常設は油彩や彫刻など。関根伸夫は金箔が光る画面と独自の作風が目をひくけど、それだけ。あとは印象に残らず。ところで、猪熊弦一郎が収蔵されているのは、相原求一朗が弟子入りしていた関係でしょうか。(10/25)




泉屋博古館名品展 第III部 近代の絵画と工芸
前期:09/02-10/26 後期:10/29-12/14 泉屋博古館分館

▼タイトル通りの展覧会。キーワードは近代以降。それ以外には、特に共通点がない感じ。近代美術に関しては、明確な方向性を持ったコレクションではなさそうです。

▼複数の出品があったのは、絵画では富岡鉄斎、工芸では宮川香山と板谷波山。ただし、鉄斎は扇子が主です。あとは、藤島武二が2点。内、「幸ある朝」は、果てしない厚塗りにびっくり。
それから、大ぶりな作品がちらほらありました。坂本繁二郎の「二馬壁画」は、いつもの馬にいつもの色合いにいつものタッチ。そして巨大。板谷波山による、独特の色彩に包まれた花瓶も、写真から受ける印象よりずっとでかい。新出でおどろおどろした、狩野芳崖の「壽老人」も大きめでした。

▼気になったのは、山田秋坪の「柘榴花白鸚鵡図」。真っ青な岩、オレンジ色の花々にグロ気味で凶悪顔のオウム。画面の埋まり具合、狂った配色、どことなく中華な雰囲気が混じり合い、異常さを醸し出していました。素敵。
目当てだった、岸田劉生の「二人麗子図(童女飾髪図)」は、鏡合わせの麗子さんが髪をいじったりいじられたりしているの図。これがまた、妖しい遊びをしているようで素敵。着物の少々ドギツイ色彩と、えんじ色の背景が妖しさを増幅させています。あと、印刷ではわからなかった、顔部分の陰影を確認できたのが収穫でした。(10/25) 後期は、前期と入れ替わり。引き続きの展示は、「二人麗子図」と工芸部門位です。富岡鉄斎は、前期と同じ作品数(作品自体は変わります)。






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