2003年5月
▼日本の絵画の植物表現への取り組みを、日本画・洋画、現代美術作品、そして植物図や写生図などを含むおよそ90点の作品で概観。(同展チラシより) ▼写実、シュルレアリスム、幻想―様々な表現で描かれた植物が並ぶ展覧会。小茂田青樹「四季草花」にて、涼やかに咲く朝顔の群れを通り抜け、いかにも岸田劉生カラーな「籠中脂香」の茶と朱になごみ、小絲源太郎「嬋娟」の花びらが落ちたケシに目を止めた背後から、郷倉和子描く悪夢のような植物に首絞められたりします。それ、葉でも茎でもなく触手でないの?牛島憲之、熊谷守一など、面や点で構成された作品もありました。 ▼オムニバス展では、思いもかけない出会いがあります。今回は、生・五百城文哉に初遭遇。掛軸も屏風も、巨大化した図鑑のよう。多彩な植物が、画面を埋め尽くしていました。えらく面白い。「高山植物写生図」の精緻な描写にもびっくり。 ▼同じ題材の作品を集めることにより、より魅力が増し力強い存在感を醸し出す。「みどりのちから」とは、よくできたタイトルだと思いました。(05/10) |
▼コレクションは近現代美術を基本に、なかでも「自然と人間」をテーマとして表現した、国内外の作品を収集しているとのこと。 ▼訪問した日はワンフロアを使用した常設展示で、現代の彫刻が並んでいました。ジム・ダインの鮮やかというより毒々しい色彩の巨大鳥は、なかなかのインパクト。他の作品は…あまり印象に残ってない。多分相性がいまいちだった。 ▼別館として「彫刻家のアトリエ」が建っていました。この建物はフランソワ・ポンポンのアトリエがモデル。煉瓦造りの牧歌的な一軒家で、絵本に出て来そうです。しかし、ポンポンのアトリエは実際にはアパートだったらしいので、外観は想像の産物のようです。中は、ポンポンが使用した道具・家具などを用いて、制作風景を再現しています。棚には、ポンポンの彫刻が飾られていました。ちょっと前の新聞に、「作者が遺言で禁じた『没後鋳造』があり、タイトルなしで展示室ではない場所に並べられている」と出ていましたが、どうもそれのようです。 ▼関係ありませんが、美術館の近くでヘビを目撃。気色悪く歩道を這っていました。街中でヘビを見たのは、幼児期以来。(05/10) |
▼細見美術館のコレクションは、初代細見良氏が集めた古美術品に、二代實氏による蒐集品を加えたものからなっている。この名品展では、東京・京都という二つの都市を巡る近世絵画の優品を中心に紹介する。(同展チラシより) ▼こういうと語弊がありますが、可愛らしいです。中村芳中、神坂雪佳の丸みを帯びた花々や、長澤蘆雪によるふっくらした雀、擬人化きりぎりすや牛車ならぬなめくじ車?が登場する「きりぎりす絵巻」、手にすっぽり収まる小さな絵巻。そういえば、若冲の「伏見人形図」「虻に双鶏図」も丸くてふっくらしています。 ▼かと思えば、俵屋宗達「墨梅図」のような、洗練された作品もあったり。こちらはシャープに伸びる枝を画面中央に配し、ちょっと抽象入った雰囲気。今観ても新しい。まぁ、琳派が多いということで。琳派以外では、沢山の人や犬が集う「豊公吉野花見図屏風」「犬追物図屏風」を飽きずに眺めてました。 ▼京都に行かずして、細見美術館体験できるよい機会です。特に琳派好きの方におすすめします。(05/10) 小さな絵巻の内、鈴木其一の「四季歌意図巻」はバカテクが優雅に炸裂中。外見は可愛らしく、中身は隙なし。 |
▼館蔵品の茶道具・書画の中より初公開品を含み、特に優れた作品を一堂に公開。(同展チラシより) ▼茶道具、書画共に端整な雰囲気。とりわけ茶道具フロアは、趣味がよいオーラを発しておりました。きっと名品揃いです。だから名品展だって。でも、茶碗などはわかるとしても茶杓は…うーん。ええと、「織部鮑形向付」はユーモラスでした。鮑を模した織部焼なんて、初めて観ました。 ▼絵画は、狩野派、山水画、彭城百川、田能村竹田をはじめとする文人画など。 |
▼義経、弁慶、曾我兄弟などの武者絵を、錦絵や絵馬、凧絵などによって真正面から取り上げる。(同展チラシより) ▼錦絵は、歌川国芳と月岡芳年が目立っています。 ▼絵馬は、傷みがあり少々不鮮明。でも、豪快な感じは伝わります。鳥居清長の新発見絵馬がありました。 ▼錦絵だけではなく、様々な場所に描かれた武者絵が揃っており堪能しました。そうそう、同じ場面を描いた作品が複数あります。比較検討するもよし。錦絵の鎧や着物の描き込み具合にクラクラするもよし。(05/11) |
▼京焼コレクションの中から、色絵などの装飾性豊かな茶道具の数々を選りすぐり展示。野々村仁清・尾形乾山の他に古清水焼、奥田穎川、仁阿弥道八など。長次郎をはじめとする楽家代々の名椀も特別展示。(同展チラシより) ▼一目で仁清とわかる「色絵芥子文茶壺」「色絵鳳凰文共蓋壺」。鶏や羽子板などを細やかに象った香合。どちらも華やかな雰囲気と色彩で、これぞ仁清・王道をゆく展示です。堂々としております。そんな中、白地にシンプルな形の水指や花生には意表をつかれました。 ▼乾山は、定家の歌を元にした角皿を作ったり、オランダのデルフト陶に倣ってみたり、「乾山」というブランド名を焼物界で初めて表面に出したりと、試みが面白いです。 ▼出光美術館いいもの持ってますねえ、ということで。個人的には、乾山がぶっちぎりの逃げ切り勝ち。本当にセンスいいんですわ…欲しい。いや、無理でしょ。(05/24) しめくくりは、抱一の「八ツ橋図屏風(5月25日まで展示)」と、窓から見える皇居の新緑。まったりと眺めるのが年中行事となっております。 |
▼会場全体を使ったインスタレーション。 ▼本を用いたオブジェ、ぽつんと置かれたベッド、棚には茶封筒が並べられています。長い時が降り積もったまま、止まっているような空気と色彩。 ▼現実の時間は止まり、現実ではない時間は緩やかに動く。矛盾するような何ともいえない感覚を味わいました。茶封筒の中身は何だろうなー、ガムテープの封は接着剤が染み出しているし相当時間が経ってそうだなー、みたいなどうでもいいことも気になりましたが。(05/24) |
▼明治から現代に至るまでの京都の日本画の歩みを、京都市立芸術大学芸術資料館の所蔵作品を中心に紹介。(同展チラシより) ▼京都市立芸術大学ということで、卒業制作の展示が多かったです。土田麦僊、村上華岳、小野竹喬など錚々たる顔ぶれの原点が観られます。 ▼福田平八郎の魅力は、独自の空間と動物や植物を愛でながら描く所。と、個人的に思っているのですが、その魅力は卒業制作から既に芽生えていたようです。過度の装飾に陥らない画面に鳩がポツリポツリと。しかし、色が妙に渋いのはどうしてだろか。不思議だったのは、堂本印象による3幅で1組の掛軸。なぜか作品ごとにサイズが違う。1幅は、瓢箪鯰がテーマでした。 ▼今回、最も気になったのが、井上常太郎の「雪」。雪の描き方が少々若冲気味です。デロリとした質感に、所々丸い穴が開いている。動植綵絵「雪中錦鶏図」を彷彿とさせます。うーん、この作者は何者?と思いつつ図録で確認したら、画歴も健在か亡くなっているかも不明とのこと。展覧会への出品もないそう。作者の存在は朧げで、確実に存在しているのは卒業制作の1枚だけなんて。 ▼メインの竹内栖鳳・上村松園、現代の作家は、卒業制作にあらず。栖鳳は兎が可愛らしいです。松園は「その眉毛ありえないだろう」。眉毛がデコを占領中。現代は…秋野不矩は洗練された感じでよかったです。 ▼この展覧会で京都画壇を一巡りできます。が、巡り先が卒業制作という部分をどう受け取るかによって、展覧会の面白さが変わるような気がします。(05/24) |
▼「本をめぐるアート」が収集方針のひとつ。常設展にも本が登場します。 ▼コレクションによるテーマ展VII 「本」の現代美術 |