2003年2月

マーク・ダイオン 驚異の部屋
2002/12/07-03/02 東京大学総合研究博物館小石川分館

▼東京大学の所蔵する様々な学術標本を中心に構成。学生・院生を中心とするプロジェクト・チームと対話を重ね、相互の協力のもとにインスタレーションを実現。(同展チラシより)

▼「驚異の部屋」は8つ。気圏、地上圏、理性と規矩など、それぞれのテーマに沿って標本が分類され、マーク・ダイオンの世界として再構築されています。

▼子供の頃、飽きもせず図鑑を眺めていた。使いもしないシールやおまけを集めていた。そういった楽しみに、アカデミックと展示の意味合いを加えた雰囲気。いや、本当に、立体図鑑もしくはコレクションが詰まった箱のようでした。分類の仕方がダイオン流というだけで。
標本の山間には、作者によるオブジェ等が紛れ込んでいます。紛れるというか、見事なまでの溶け込み具合。創作物と標本が同系色にみえます。

▼何ていうか、創作物を「作り出す」行為と、標本に「触れ、遊び、選び、分類する」行為が、同じ位置にある感じ。どちらの行為も「作品」で、どちらかの立ち位置が変わると「作品」として成り立たないというか。だから同じ色なのかなぁと、つらつら考えてみたりして。

▼標本が古いせいか、部屋には微かな埃の匂い。それは東大の過去、そして自分の過去に引き戻してくれる匂いかも。なぜだか懐かしかったです。(02/08)

「水圏」という部屋があります。ここはグロ。埃だけでなく死臭も漂ってる気がします。




明るい窓:風景表現の近代展
02/01-03/30 横浜美術館

▼17世紀から20世紀初頭にいたるヨーロッパと日本の美術において、実景が絵の主要な題材として描かれ、その表現が東西の影響関係の中で変化し成熟していく過程を、政治的・社会的あるいは文化史的な背景を考慮にいれつつ両者を対照させながらたどる。(同展チラシより)

▼風景画の展覧会。ヨーロッパは、クロード・ロラン、ターナーと来て、クールベに到るまで。日本は、秋田蘭画から幕末を経て、高橋由一、白馬会の黒田清輝まで。19世紀後半のアジアの文化遺産や事件を撮った写真もあります。史料の補強も忘れません。

▼展示は、地域ごとではなく時代に沿った形。ヨーロッパと日本の作品が交互に顔を出します。順番に辿ると、時代によって風景画の捉え方や表現方法が変化していくのがわかります。
作品は、テーマに合ったものをしっかり集めていて手堅い感じ。派手さはないけれど味で勝負、通して観ると面白さが増す顔ぶれでした。

▼個人的にハマッたのは、江戸後期の展示。遠近法や俯瞰を用いた表現が見受けられたり、銅版画っぽい北斎があったり。時代と共に絵画も動いてるなぁと。小田野直武の「不忍池」が観られたのも収穫でした。あと、富士山は欠かせませんね。ヨーロッパ勢では、リチャード・ウィルソンが妙。この方の絵、どこか変です。

▼全体的には、確固としたテーマに基く、非常に真面目な展覧会でした。いや、解説とか本当に真面目で…。(02/21)


[常設展]横浜美術館 コレクション展 第3期
2002/12/02-03/25

▼6つのセクションに分けた展示。近現代なら何でも来い。

▼日本画:風俗画 鏑木清方がありました。いつでもどこでも鏑木清方という、よく見かけるタイプの作品。中島清之は、前面に犬と猫を配した、狙いすぎ構図。少々鼻につきます。それから…アウトサイダーアートと、悟りの境地を行き来するかのような作品がちらほらあったり。

▼日本洋画:大正期から昭和初期 村山槐多のタッチは、本当に独特。作者名を確認しなくても、村山が描いたものとわかります。里見勝蔵は、ヴラマンクの生き写し。清水登之の「ヨコハマ・ナイト」は、こちらで所蔵してこその作品。とっつきやすい雰囲気です。

▼西洋の絵画と彫刻:ダダと構成主義を中心に マックス・エルンストとか。

▼版画:言葉とイメージ 文学と美術の共演。文字の間を遊ぶ版画、静かに佇む版画。美しい装丁や印刷物としての表現も楽しめました。長谷川潔、ホックニー他。

▼現代美術:1980年代のアメリカ 「焼き鳥だ!」と思ったら、シシカバブでした。ジャスティン・ラダー「文化1984」より。これ、見ればわかります。「ヘリコプター」というタイトルの壊れた絵がありました。

▼写真:1950年代から現代 ダイアン・アーバス、キャパ、木村伊兵衛、やなぎみわ…他にも名の通った写真家がずらり。しかし、作風に共通点はないような。タイトル通り、1950年代から現代に当てはまる作品を展示しただけなのでしょうか。(02/21)




立教開宗750年記念 大日蓮展
01/15-02/23 東京国立博物館

▼日蓮諸宗のお寺に伝わる聖人ゆかりの品々、法華信仰にまつわる美術品、宗門に帰依した多くの芸術家たちの作品を取り上げ、一堂に展示。(同展チラシより)

▼長谷川等伯「仏涅槃図」に尽きます。単語や文章では追いつかない、体感こそすべて。デカさを受け止めようと試みるもよし、入り込むもよし、圧倒されるもよし。入口両脇に阿吽像、中央奥に「仏涅槃図」というベタな配置も素敵でした。等伯は、他にも何点か出ていました。新発見の「鬼子母神十羅刹女像」は、少し傷んでたような。

▼他には、本阿弥光悦、俵屋宗達など琳派がまとめて観られてよかったです。光悦は、東博では御馴染みの「舟橋蒔絵硯箱」の横に「花唐草螺鈿経箱」の展示。いかにも仏教関連展です。あと、目に付いたのが、伝趙昌「貝尽くし図」。綺麗で繊細。等伯に対し、こちらは小さな掛軸でした。

▼どっしり構えた「日蓮聖人坐像」、様々な時代に描かれた「日蓮聖人像」、日蓮使用の品々、クライマックス「立正安国論」「観心本尊抄」は、豚に真珠気味でした。この辺りを指して「大日蓮展」なのでしょうが。「日蓮聖人像」は、顔の微妙な違いを比較検討してみました。検討結果は、未だ出てません。(02/22)






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