2003年1月
▼17世紀オランダ最大の巨匠レンブラント・ファン・レイン。その油彩画の傑作約50点を一挙に展示する大回顧展。(同展チラシより) ▼なめらかなようでいて、なめらかではない。近くに寄ると、筆の跡みたいなのが結構はっきりした、ガシガシした描きっぷり。遠目と近目の落差が、とても興味深かったです。初〜中期の作品は、ちょっと離れて観た方がよい感じ。 ▼晩期に近づくと、ラフになるというか、ガシガシがザザッとになり、時にはボロッとした画面になったりするのだけど、その風合いが愛しく感じられちゃったりなんかして。こちらは、離れても近くで観てもよかった。今回、気付いたのだけど、晩年の方が好みなようです。静かで、凛とした感情が滲み出ている所がよい。魅力でもあり、鼻につく所でもあった「これ見よがし」感も、晩年はかなり昇華されているように思います。(ここら辺は、まったくの個人的見解なので、怒らないで下さい) ▼文句ない大作は、「目を潰されるサムソン」でしょうか。とにかくデカイ。十八番の光と影のコントラストと、光の中に浮かび上がる表情は迫力もの。「ヨアン・デイマン博士の解剖学講義」で、脳味噌むき身状態で横たわる男性は、マンテーニャの「死せるキリスト」とダブります。それから、自画像の変貌ぶりがすごかった。個人的には、自画像がもっと観たかった。(01/12) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - |
▼考古から陶磁、彫刻、絵画、書跡、染織、漆工、金工まで。ジャンル、展示品の雰囲気は、東京国立博物館を髣髴とさせます。(逆の言い方もあり) ▼一番長居していたのは、江戸絵画。狩野探幽は小品の方がずっといいや。と、にじみが繊細な「布袋・花鳥図」を見て思ったり。狩野山雪「雪汀水禽図屏風」は、波の表現が印象的。異様に細かく立体的な線で形作られています。立体感は、図版では味わいにくいので、嬉しい展示でした。ところで、長澤蘆雪の鶴は、どうして首の羽が長いのでしょうか。蘆雪は山水もありましたが、色や岩の形などかなりのイカレ具合。音に例えると、GONG辺りでしょうか。師匠である円山応挙の「雲龍図屏風」は、普通。 ▼特別陳列 新春の寿 ▼特別陳列 古筆と手鑑 |
▼阪急グループを興した小林一三の旧邸「雅俗山荘」を、そのまま利用した美術館。洋風の室内に、江戸時代に焦点をあてた館蔵品が展示されていました。中でも、茶道関係の展示品が多目。 ▼1階には、松尾芭蕉など錚々たる顔ぶれによる句や、上田秋成の「源氏物語短冊貼交屏風」、狩野派、土佐派など。 ▼個人的には、小ぢんまりした作品が並ぶ、2階がしっくりきました。尾形光琳、乾山兄弟による、掛軸と器の共演。傍らに抱一。乾山は書もありましたが、随分と現代風味な字体。もしかして、書道的には汚い字?抱一の「水仙図屏風」は、太い輪郭線のせいか、どことなく様子が違う面持ち。それから、北斎と大津絵が並んでいたのだけれど、意外と似合いのコンビでした。が、これらのすぐ下に展示されていた仁阿弥道八の茶碗は、雰囲気が合ってないような。品自体は悪くないのですが。 ▼新館もあります。こちらには、いい感じの茶碗や茶道具がずらり。呉春の「白梅図屏風」も、でんと鎮座しております。絵画は、同作品が目玉になると思われます。さり気ない雰囲気で、梅の配置もよい感じ。部屋に置いたら馴染んでいいかも。でも、ピンとこないな。 |
▼48点の大判のドローイングとその物語を紹介する回顧展。 ▼ダーガー自身が著した、15000ページにも及ぶ壮大な物語、『非現実の王国で』をベースにした絵画。7人の少女戦士「ヴィヴィアンガールズ」と、残虐な兵士たちとの戦いが描かれています。最初に物語ありきですが、未読でも何とかなります。多分。 ▼で、絵の出来はといいますと、少女たちは広告などからトレース〜着色と、ぬりえ状態。真面目に描いてるが下手くそだな、おい。だけれども、綺麗で妙ちきりんな色彩、縮尺が狂いつつも抜けのよい空間、ダーガーにしか生み出せないであろう世界にはかなりひきつけられます。 ▼この方、一人暮らしで友人もなく、仕事から帰った後は部屋で『非現実の王国で』を執筆する日々だったそう。推測ですが、彼が暮らした部屋は部屋ではなく王国だったのかも。天井は空と雲、床は大地と化し、壁には巨大なキノコや花々がむくむくと生え、少女たちが走り、戦い、逃げ惑い、首を絞められ、内臓をえぐり出される。王国に入り込めるのは、建国者であるダーガーただ一人という。(01/15) 少女たちの股間にはチ○ポがついてたりするのですが、中にはやる気満々なチ○ポの娘もいたりして、あらあらまぁまぁなのでした。 |
▼牛乳、花粉、米(種子)、蜜蝋など、生命を育み、それを次代へと橋渡しする「未来への種子」ともいうべき物質を用いた代表作17点の展示。(同展チラシより) ▼四角形に敷き詰められた花粉、等間隔に並ぶ花粉や米の山々、四角の大理石に注がれた牛乳、蜜蝋で作られた舟や建物。足し算が一切ない作品群。ここには余分なものを削ぎ落とした、静謐な世界がある。なんつって。 ▼作品を眺めるうち浮かんできたのが、竜安寺の石庭。感覚的に似てる気がします。それと、花粉の黄、米や牛乳の白が美しいなぁと。自然がもたらす色の美しさを再認識しました。(01/25) 余談ですが、夏に開催するのはキツイ展覧会ですね。牛乳腐るぞ。それと、牛乳の表面に糸くずが浮いているのが気になりました(「ミルク・ストーン」という作品)。会場内は蜜蝋の匂いがします。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - |
▼日本画のコーナーに、円山応挙「雪松図屏風」のバッタもんがありました。いや、山元春挙なんですけど。似せて描いたつもりが似なかった、似せたつもりはないが中途半端に似てしまった、その他。正解は不明です。あと、小品ですが、小茂田青樹の掛軸が見られてよかったです。 ▼印象に残った展示 ▼特集展示「植物から考える」 |
▼新作ポスター、映像、版画、CM、光のインスタレーション等幅広い内容で構成する展示となり、 宮下教授の視覚造形の世界観を、トータルなプロデュース、ディレクションのもとで構築します。(美術館サイトより) ▼自然を題材にした作品が大部分。持ち味は、ストレートな表現か。画面に凹凸がある、フジツボみたいな作品には触りたくなりました。展示室を丸々使用した、暗室に光が踊るインスタレーションも気持ちよかったです。安眠できそう。 ▼場内には、過去に携わったTVCMが流れており、「新三共胃腸薬 顆粒〜」や、可愛かった頃の大竹しのぶが見られたりします。見所違ってる気もしますが。(01/25) |
▼『二箇所』は、舞踏の足裏のために発案された板場から始まり (1975年「静かな家」土方巽公演)、次いで絵画場の一つとして発展させた継続体『着陸と着水』シリーズの一つである。又、本展は中西夏之が東京芸大教授としてゼミナールの際、記し、 学生に配付したノートに基づいて構成されている。(二箇所サイトより) ▼中西夏之の作品は、眼の快楽や、意識を飛ばせるために在るのです。私の中では。 ▼展示は、絵画やインスタレーションなど。講義ノート、ゼミナールの記録ビデオもありました。この辺り、「大学美術館」「退官記念」ぽい。で、ノートやビデオを読んだり観たりしたわけです。作品自体を楽しむばかりでも何だなってことで。 |