2001年9-10月

アメリカが創った英雄たち
08/07−10/14 国立西洋美術館

▼日米間の文化交流の促進を目指し、開催された展覧会。スミソニアン・ナショナル・ポートレート・ギャラリーの所蔵作品75点からなる「肖像が語るアメリカ史」と、「アメリカン・ヒロイズム」の2部構成。

▼「肖像が〜」は、タイトル通りアメリカ人の肖像画を集めたもの。著名人の筈なのに知らない人ばかり。解説読まないと、どうもピンとこない…。認識できた人物の中では、エドワード・ウェストンの肖像画が印象的でした。

▼「アメリカン〜」は、英雄主義を表した作品群。革命、開拓などを主題にした歴史画や雄大な風景画。テーマも雄大だが、作風もなんだか雄大。いわゆる「アメリカンヒーロー」の肖像画もありました。どれもこれも、いかにもアメリカ。

▼作品自体を楽しむというより、作中の人物・風景が内包しているアメリカを読み取るという感じの展覧会でした。少々マニアック(というのだろうか?)な匂いが。「アメリカ文化を理解する」という目的の展覧会らしいので、このような感想でいいのでしょうか。でも、美術展としては異端児のような気がします。(09/07)

作品:エドガー・ドガ「メアリー・カサット」…友人であるドガに肖像画を描いてもらったそう。が、どうにも気に入らなくて、しまいには売り飛ばしてしまったらしい。知人に見られないよう、アメリカでは売るなという注文付きで。そこまで嫌われてドガも不憫だ。
ベツィー・グレイヴズ・レイノー「ジョージ・ワシントン・カーヴァー」…科学者。ピーナッツバターを発明したことで本国では有名らしい。


江戸の不思議〜奇想の美と粋の光芒〜
08/01−10/27 大倉集古館

▼タイトルの「奇想」という所にひかれて行きました。加えて、例のごとく(?)伊藤若冲目当てです。

▼展示作品は、奇想とは少々遠い感じ。当てはまるのは2点出ている百鬼夜行図位か。それから若冲もそう評されますね。と、チラシを良く見ると「粋・洒脱、豪奢にして繊細、或いは奇想など」という文が…つまり江戸時代の美術全般ということじゃないですか?それは。

▼印象に残ったのは、歌川広重の肉筆画。筆の先1本1本まで神経を使っていそうな、繊細な筆致。いい意味で、観ていて息が詰まりそうでした。それから、円山応挙の巨大で荒々しい作品は、いつものイメージと違いとても新鮮。応挙って、どうも真面目でまとまりよい印象があるので。ちなみに中国の武将を描いた作品でした。

▼他には谷文晁、山口雪渓、酒井抱一など。手堅くまとまっていて、日本美術が好きな方なら楽しめる展覧会だと思います。ただし、奇想とは違います。(10/06) 写真:インパクトたっぷりの外観。設計は、築地本願寺や平安神宮を手がけた伊東忠太。 作品:尾形光琳画・乾山作「寿老図六角皿」


ジョージ・シーガル展
09/13−10/21 Bunkamuraザ・ミュージアム

▼ジョージ・シーガルは、人間から直接型取りした石膏彫刻で有名な作家です。この展覧会は、昨年急逝したシーガルの没後最初の回顧展。出品作の殆どは自身のスタジオに愛蔵されていたもので、日本初公開。彫刻、レリーフ、絵画など、98点出品されていました。

▼1950年代から90年代まで、10年ごとに区切った展示。どの年代もまんべんなく作品が揃っており、作風の変化を楽しんだり、年代ごとに作品を比較できる作り。初期の少々荒い彫刻が、制作方法を変えてリアルになっていく様が、とてもよくわかりました。
それから、様々なタイプの彫刻、レリーフ作品がてんこもり。全身から型を取った等身大彫刻はもちろん、身体の一部分を切り取った作品、床に置いてあり上から覗き込むようになっている作品など。個人的には、全身像より断片作品の方が、好みの作品が多かったです。妊娠シリーズとか。名画を立体化した、観ると不思議な作品もありました。

▼驚きだったのは、絵画が多数出ていたこと。今まで紹介されることが少なかったそうです。シーガルといえば彫刻という概念が崩れていく…。殆どがパステル画でした。色鮮やかな作品が多い中で、晩年の緻密なモノクロ作品が異彩を放ってました。

▼会場内は、どことなく静かな雰囲気。それは、シーガルが生み出した作品たちが醸し出す雰囲気なのかもしれません。休日の割に人が少なかったせいもある?(10/06)

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巡回:2002年3月16日(土)〜5月12日(日) 宇都宮市美術館


カラヴァッジョ 光と影の巨匠−バロック絵画の先駆者たち
09/29−12/16 東京都庭園美術館

▼カラヴァッジョの名が前面に出てますが、作品は数える程。カラヴァッジェスキ(カラヴァッジョ追随者の呼称)作品の方が、遥かに多いです。

▼間近で観るカラヴァッジョは、想像より落ち着いた色彩でした。結構意外。それから、生作品は淫靡さが益々増して、大変よろしかったです。口元、目線、微妙な表情がたまらない。同行者は「観てると、パゾリーニの映画を思い出す」ともらしてました。言いえて妙。

▼カラヴァッジェスキの作品も同様に淫靡、尚かつグロテスク。彼らは多分、カラヴァッジョの嗜好や感性に共通点を見出していたのでは。絵のスタイルより何より、本当に継承しているのは精神という感じがします。歪んだ愛やら残虐性やら。

▼観終わった後、独特な濃密世界にクラクラしました。実は結構好きだったりして。人込みにもほんのちょっとクラクラ。休日の午後行ったせいか、結構込んでました。人気者なのでしょうか、カラヴァッジョ。(10/20) 作品:カラヴァッジョ「果物かごを持つ少年」 ジョヴァンニ・バリオーネ「聖愛と俗愛」

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巡回:12月22日(土)〜2002年2月24日(日) 岡崎市美術博物館


広重の画業展−名所江戸百景を中心に−
前期09/13−10/14 後期10/18−11/18 馬頭町広重美術館

▼栃木県・馬頭町にある美術館。歌川広重と建物が自慢(らしい)です。今回、初めて行って来ました。

▼展覧会は、開館1周年記念として開催されたもの。広重の晩年から没後にかけて出版された、「名所江戸百景」の展示が中心です。前期、後期半分ずつの展示で、両方に足を運ばないと全作品観れません。後期のみで残念。

▼展示作品は初摺という、とても良い品。豚に真珠で、有難さが実感できませんでした(…)。作品のひとつひとつに、現在の写真が添えられてる所がよかったです。江戸時代と今の景色を比べて、たまげることが出来ます。当然の如く、江戸の名所は見る影もなく変わり果てているのでした。それにしても、こうして作品が並んでると、似た構図が多いことがわかります。

▼肉筆画も、5点出ていました。先日の大倉集古館同様、繊細。浮世絵とは違った魅力があります。

▼もうひとつの売りである建物は、地元の杉や和紙、石を使用した現代和風建築。平屋建てで、自然光を生かした造り。壁が和紙で面白いです。庭には竹が植えてあります。

外側も中身も和風で統一された、綺麗な空間でした。ただひとつの難点は、交通の便。こちらへ行かれる際は、車を強く、強くおすすめします。電車で行ったら、かなり大変でした。(10/21) 作品:歌川広重「名所江戸百景 深川洌崎十万坪」


MoMA ニューヨーク近代美術館名作展
10/06−2002/02/03 上野の森美術館

▼1993年、96年に続き、3回目のMoMA展。今回は、マティスとピカソを中心とした展示です。

▼文句なしの作品群。マティスなんて「ダンス」ですよ、奥さん(意味不明)。この展覧会を逃したら、日本では二度と観ることが出来ないかも。それから、マティスは彫刻の展示も見所のひとつだったように思います。ピカソは「石膏像のあるアトリエ」が印象的。個人的には雌山羊もいたく気に入りました。

▼あとは、ダリの「記憶の固執」が本当に小さいことにびっくりしたり、ルソーの「夢」を観て、画面中の果物がとてもうまそうに見えて食べたくなったという、幼少時の間抜けなルソー体験を思い出したり。後半に展示してあるポロックも、とてもいい作品が並んでました。

▼このように(どのように?)作品自体は文句のつけようがないのですが、配置の仕方が何とも。マティスもピカソも、飛び飛びで作品が展示されています。同作家の作品は、ひとつにまとめてある方が観やすい感じがしました。(10/27) 作品:アンリ・ルソー「夢」 *入口では荷物検査をしていました。テロの影響がここにも。






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