2001年1-2月

東京国立博物館・常設展

▼お正月や冬を題材にした、展示作品が多かったです。日本の四季、季節感。

▼実は、伊藤若冲目当てで行きました。題材が鶴だから展示されていたのでしょうか。縁起物ということで。迎春。しかし、昨年、山程若冲作品を観た反動はキツく、1点のみだとちょっぴり寂し…。いえ、観られるだけで充分です。それから、若冲の隣りにあった作品がいい味出してました。秦意冲・作で若冲風味。名前も1字一緒ですが、作風も実によく似てました。落款もそっくり。並べて展示している所が、実に面白おかしかったです。

▼若冲のことしか書いてないじゃないか。他には、尾形光琳のささっと描いた感じの富士山がよかったです。床の間に飾りたい。て、うちに床の間ないですが。工芸の間?にあった、鉄製の龍と蛇も連れて帰りたかった。どちらもすごく凝った造り。細かいウロコがたくさん重なっていて、ちゃんと曲がるらしいです。蛇はトグロも巻けて、龍は手足も動くらしい。根気があるというか、超器用というか、よく作るものです。

▼東洋館ではミイラに会い、ミュージアムショップもぐるりと回って、大変充実した時を過ごせました。あらゆるジャンルの膨大な展示品が堪能できて、420円なのだから、ありがとう国立という感じ。お金で計るのも何ですが、本当にお値打ちものでした。(01/21) 追記:文中の秦意冲は、若冲の門弟だった 作品:伊藤若冲「松樹梅花孤鶴図」


ベルギーの巨匠5人展
01/03−01/30 伊勢丹美術館

▼思ったより面白かったです。のっけから小学生。

▼ジェームズ・アンソール。掟破り半歩手前の色彩が、危ういバランス。絶妙。展示中唯一、「牡蠣を食べる女」という作品が、普通の配色でした。でも、この作品ではアンソールらしさが希薄になってしまうともいえる。危ない方が「らしい」気がします。

▼レオン・スピリアールトは、初めて観ました。初期の、ダークな色彩と、色鉛筆やパステルなどでこつこつ塗ったような硬質な画面が、とても個性的。荒涼とした風景。冷たい空気が張ってる感じ。あと、構図が面白いです。でも、年を経るにつれて、色は鮮やかになっていきます。「漁師の女房」の色は、少々ゴーギャンっぽい。気のせいか?「エヴァと蛇」という作品は、個人的にキツかった。題材が夢うつつな感じで。どちらかというと、初期の方が好みでした。

▼ポール・デルヴォーは、とにかくデルヴォー節。正直好きでも嫌いでもないのだけれど、彼の作品を眺めてると、小さい頃のプリミティブな感触がかすかに蘇る。それは、デルヴォー以外では感じることができない。まるで、脳の深い深い所へデルヴォーのチップが埋め込まれているような感じ。どうしてだろう。幼少時代に観てるのかもしれない。まったく覚えてないけれど。

▼コンスタント・ペルメーク。素人目ですが、形の概念?なのでしょうか(何だそりゃ)。形の捉え方は、個人的にはあまり。絵自体は嫌いではないんですけど。

▼ルネ・マグリットは個人的にお腹一杯です。私的な感想で、ファンの方ごめんなさい。

▼展示方法でひとつ。ペルメークの厚塗り作品、照明が凸凹に反射していて観にくかったのがありました。ちょっとヒドイ。(01/29) 作品:ジェームズ・アンソール「死神と仮面」


トゥールーズ=ロートレック展
01/02−03/04 東武美術館

▼平日昼間に行ったにもかかわらず、盛況でした。お客は、妙齢の御婦人方が大半をしめておりました。
そんな御婦人や、ちょっと若めのお姉様方を描くのがお手のもんや三度笠だったのが、ロートレックです。

▼とにかくリアル。女性のいやな所、恐い所、だらしない所をさらっと描いてしまいます。ただただありのままに描いているともいえるでしょうか?座ってお腹の肉がはみ出してる感じや放りっぱなしの手袋、ちょっとした表情や仕草、もうたまりません。女の人のことを、細部までよく観察していたのが伺えます。あまりにリアルすぎて、女性たちの息遣いや周りの雑多な音までも聞こえてくるよう。彼女たちは絵の中で生活してますね、きっと。かさぶた取ったり、尻をかいたりしてますよ。いや、そんな妄想も浮かぶくらいの出来なんです、奥さん。

▼女性の表現のことばかり書いてますが、他の部分でも「は〜、いいもん見せてもらった」という感じでした。どの作品も線が動いてる。踊ってる場面の躍動感たらないです。それから、油彩はうっすら青みがかっていて綺麗。そう、油絵はとても新鮮でした。ポスター、版画のイメージが強かったもので。

▼話しは変わりますが、ロートレックが公家コスプレしてる写真が展示されてました。右手に扇子、左手になぜかお人形(♂)。この写真、ハガキにして売ってほしかった。(02/27) 作品:「裸婦習作、長椅子に坐る女」「イヴェット・ギルベールの黒手袋」「レストランの個室あるいは「ラ・モール」にて(リュシイ・ジュールダンの肖像)」

この展覧会を最後に、東武美術館は閉館しました。不景気だし、しょうがない…のかな。これで、池袋には「美術館」がなくなってしまいました。
なんておセンチなこと書きながら、閉館後のミュージアムショップセールにいそいそ出かけてしまいました。






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