2006年
02/01 高松塚解体の実験場公開 文化庁、同条件の墳丘再現
国宝壁画の修復・保存を目的に高松塚古墳石室の解体へ向け準備を進める文化庁は、京都府加茂町に解体実験場をつくり1日、報道陣に公開したとのこと。ほぼ同規模の墳丘と石室を造り、2月中にも解体実験を始める予定。天井石に入った亀裂や、しっくいの劣化など石室内部の状況もできる限り再現。実験を繰り返し、壁画に影響を与えずに石室を解体、壁を取り出す方法を検討する。
実験用の墳丘は、土を突き固めて重ねた高松塚の「版築」とほぼ同じ工法で既に造成。中心部に縦7メートル、横6メートル、深さ4.5メートルの穴を掘ってあり、今後はクレーンで凝灰岩の石壁16枚を入れ、石室を組んでいくとのこと。
共同通信。続報:「解体実験の石室完成 ひびも再現」(2月22日付Yahoo!ニュース-共同通信) 実験場で、造成した墳丘に石室を組み上げたとのこと。3月から実験を始める。
02/02 屏風絵「堅田図」を襖絵に“復元”
大徳寺塔頭・瑞峯院は、明治初期まであったが、その後売却され、現在、東京の美術館が所有している屏風絵「堅田図」(伝・土佐光信作)から襖絵を復元するとのこと。京都国際文化交流財団(中京区)がデジタル技術で、写真から複製技術を駆使して襖絵に仕立て、3月にも「里帰り」する。
襖絵は、瑞峯院の「檀那の間」に設置されていたが、明治期に三菱財閥の岩崎弥之助が購入、屏風に改装され、静嘉堂文庫美術館で所蔵されている。長年行方が分からなかったが、15年ほど前、同美術館の学芸員が、東京国立博物館に所蔵されている同図の模写を手がかりに、「堅田図」が瑞峯院にあったものであることを確認したとのこと。
京都新聞。檀那の間には戦後に描かれた「金剛山の図」が設置されており、復元した襖絵を並べて置き、一般に公開する予定。とのことです。個人的に気になったのは、行方知れずの襖絵を発見〜屏風にといった辺り。
02/02 ゴッホ晩年の肖像画、競売に
晩年の作品「アルルの女(ジヌー夫人)」が5月2日にニューヨークで競売にかけられることになったそう。落札価格は4000万ドル(約47億円)以上とみられているとのこと。「アルルの女(ジヌー夫人)」はゴーギャンやゴッホがよく通っていたフランス・アルルのカフェの女主人を描いた作品で、ゴッホが自殺する5カ月前の1890年2月に制作された。
競売会社クリスティーズ主催による印象派・近代美術作品競売のハイライトとして出品される予定。同社によると、同作品はバックウィン一族のコレクションに所蔵されていたもので、落札価格は4000-6000万ドルになるとしている。
1日付ロイター通信。
02/05 光琳の「八橋図」所有者で見解
鳥取藩が所有していたとみられているメトロポリタン美術館所蔵の尾形光琳の「八橋図」は、鳥取県立博物館の調査で、同藩・池田家が所有していたのは長くて1915(大正4)―19(同8)年までの5年間だった可能性も出てきたとのこと。
19年に美術商が池田家の美術品560点を売り出すために作製した「池田侯爵家御蔵品入札目録」には、「八橋図」が写真入りで掲載、鳥取藩所蔵の根拠とされている。ところが、最近の調査で県立博物館が所蔵している幕末期の鳥取藩政資料「御国残御道具根帳」には「八橋図」は記載されていないことが判明。また15年の「光琳二百年忌・光琳図録」に津山松平藩の分家で、十一代将軍徳川家斉の曾孫松平斉光男爵が「八橋図」を所有していると記載されていることが分かった。ただし「御国残御道具根帳」は鳥取で保管されていた宝物目録なので、江戸屋敷で所蔵されていた可能性がないわけではなく、鳥取藩や津山藩など江戸時代の資料調査の必要性が強まってきた。
「八橋図」は19年に池田家が売却後、国内の画商や資産家などを経て、53年にメトロポリタン美術館が入手した。
山陰中央新報。
02/05 国宝の格子のこぎりで切断 法隆寺で仏像盗難
5日午前、法隆寺から「国宝の建物『西室(にしむろ)』の格子をのこぎりのようなもので切られ仏像が盗まれた」と、届けがあったとのこと。一方、南に約15キロ離れた明日香村の橘寺で同日午前、仏像を盗んだ男が職員に取り押さえられ、橿原署が窃盗の現行犯で逮捕した。男は折り畳み式のこぎりを所持しており、県警は法隆寺の事件との関連を追及しているとのこと。
西室は僧侶が寝泊まりする僧坊として建てられたが11世紀後半に火災に遭い、現在の建物は1231年(鎌倉時代)に再建された。1955年に国宝指定。窓の木製格子29本のうち6本が切断されていた。
共同通信。2月6日付共同通信によりますと、法隆寺で盗まれた文殊菩薩像は無事見つかったそうです。現行犯逮捕となった橘寺では、本堂の薬師如来像を盗もうとしたとのこと。さらに仏像1体が発見され、こちらは秋篠寺の不動明王像とみられるらしい。
続報1:「浅草寺の仏像窃盗も供述 捜索で18体発見」(2月8日付Yahoo!ニュース-共同通信) 調べでは、浅草寺で昨年11月「聖観音像」が盗難に遭い、12月は台東区の寛永寺両大師堂で江戸時代の木造仏像2体、西徳寺で「親鸞聖人の御木像」が盗まれていたとのこと。
続報2:「寛永寺や広島の寺でも 仏像盗で逮捕の男」(2月13日付Yahoo!ニュース-共同通信) 押収した仏像18体は、すべて東京、奈良、広島の3都県で盗まれたとみられるとのこと。寛永寺、西徳寺のほか、東京都中野区の新井薬師、立川市の普済寺でも盗んだ模様。
02/07 ナチス略奪の絵画、オランダ政府が遺族に返却へ
オランダ政府は6日、ナチスによって略奪された総額数千万ドルに上る絵画200点余りを、元の所有者である故ユダヤ人美術商の遺族に返却することに同意した。
戦前の著名な美術商だった同氏は、1940年5月のドイツ侵攻直前に家族と共にオランダを脱出したが、出国の際に国内に残した自身のコレクション約1300点のほとんどをナチス部隊に略奪された。同氏の遺族は戦後オランダ政府所有となっていた絵画の返却を数十年にわたり求めてきたとのこと。
オランダ文化省は、遺族が返却を求めていた絵画全267点のうち202点については返却することに同意したものの、残りは同氏がオランダを脱出した際に所有していたことが確認できないとして所有を続ける方針。現在少なくとも17の国営美術館に展示されているそれらの絵画には、17世紀オランダの画家サロモン・ファン・ロイスダールやヤン・ステーンらの作品が含まれているという。
6日付ロイター通信。
02/08 ゴーギャンの絵画、25億円で落札
「二人の女」が7日、ロンドンでサザビーズによりオークションに掛けられ、1232万8000ポンド(約25億円)の高値で落札されたとのこと。作品は、ゴーギャンが没する前年の1902年作。すみれ色の壁のそばに座る2人の若い半裸のタヒチ女性が描かれている。
7日付時事通信。
02/08 ムンクの「夏の日(Summer Day)」、約12億7000万円で落札
7日、ロンドンのオークションで1080万ドル(約12億7000万円)で落札されたとのこと。ムンクの絵画としては過去最高の金額。これまでの最高額は、1996年にニューヨークで770万ドルで落札された「橋の上の少女たち(Girls on a Bridge)」。
7日付ロイター通信。2月9日付時事通信によりますと、ムンクの絵画は8点がオークションに掛けられ、合計約34億6000万円で落札されたとのことです。
02/08 7世紀の瓦盗難気付かず 3年間?滋賀の博物館
滋賀県立安土城考古博物館の収蔵庫から、7世紀後半の軒丸瓦1枚が盗まれていたことが8日、分かった。愛知県高浜市の美術館に持ち込まれたのがもとで判明したが、最後に所在確認をしたのは2003年1月。同博物館は盗難に気付いていなかったとのこと。県教委によると、瓦は直径約18センチ。1994年度に屋中寺廃寺遺跡(同県彦根市)で出土したとのこと。
収蔵庫は日中は施錠していないが通常、職員しか出入りせず、定期的な収蔵品点検はしないという。
共同通信。
02/09 飛鳥美人の顔に黒い染み 高松塚古墳壁画
「飛鳥美人」と称される西壁の女子群像の顔に黒い染みができていることが9日、文化庁などの調査で分かったとのこと。顔など中心部に汚れを確認したのは初めて。肩にも染みがあった。カビの可能性が高く、あらためて修復・保存の緊急性が裏付けられた形。
共同通信。
02/10 震度5強で倒壊の恐れ 国宝・姫路城大天守
姫路城の大天守(高さ約46メートル、5層6階)は、震度5強以上の地震で倒壊する危険性があることが分かった。2009年度から「平成の大修理」を行う予定の姫路市から調査委託を受けた財団法人「建築研究協会」が10日までに、危険性を指摘する報告書を提出したとのこと。
市は柱や壁の強度を詳細に分析した上で、「平成の大修理」の際に、振動を吸収して被害を軽減する制震装置を屋根裏に設置するなどの補強対策を検討する。
共同通信。
02/15 名古屋ボストン美術館存続へ 愛知県などに支援要請
経営不振の名古屋ボストン美術館を運営する名古屋国際芸術文化交流財団と名古屋商工会議所は14日、経営のめどが立っていなかった2009年4月以降の10年間も同美術館を存続する方針を決め、愛知県と名古屋市に財政的な支援を要請したと発表。経済界にも新たに35億円の寄付金を求めるとのこと。県は、県議会や市の動向、経済界の支援状況を見極め支援するか決める考え。市は市議会の意向も踏まえ対応する方針。
中日新聞。財団は09年度以降10年間の収支について、入館者数の低迷、米ボストン美術館への寄付金などの負担で、現行のままでは75億円の運営資金不足が生じると見込んでいるとのこと。
02/15 数奇な「秘宝」の数々公開 アフガン、戦禍逃れ今に
アフガニスタンの首都カブールの大統領府で、「バクトリアの黄金」と呼ばれる1世紀ごろの装身具類など、20年以上の戦禍を逃れたアフガンの「秘宝」が関係者に1日だけ公開されたとのこと。
バクトリア王国(紀元前3世紀−同2世紀)の文化を受け継ぐ「バクトリアの黄金」は、1979年に旧ソ連の考古学調査隊が北部シェベルガンで約2万点を発見。その後カブールの国立博物館が収蔵、戦乱で行方が分からなくなったが、旧タリバン政権崩壊後に大統領府の地下金庫で見つかった。
共同通信。
02/16 建畠覚造氏が死去 戦後の抽象彫刻をリード
彫刻家で文化功労者の建畠覚造氏が16日、死去した。86歳。
東京都出身。父は戦前の具象彫刻の大家建畠大夢。1941年東京美術学校彫刻科卒。50年、行動美術協会彫刻部の設立に参加、以後同展に出品した。フランスに留学した50年代半ばから抽象に移行。金属、樹脂、木など多彩な素材で、材質感を生かした作品を制作した。
共同通信。
02/17 個人所有のピカソ作品、40年ぶり競売に
40年以上個人所有となっていたパブロ・ピカソの作品が5月3日、ニューヨークで競売に掛けられることが分かったそう。競売元のサザビーズが16日明らかにした。5000万ドル(約59億円)以上の値が付く可能性があるという。
「Dora Maar au chat」(1941年)と題されたこの作品は、ピカソの恋人ドラ・マールが右肩に小さな黒猫を乗せ、いすに腰掛けている様子を描いている。
16日付ロイター通信。
02/18 俊寛とは別人が書き写す 古今和歌集の写本の1枚
平安時代末期の僧侶で「鬼界ケ島」に流された俊寛(?−1179年)が書き写したものか疑問視されていた古今和歌集の写本の1枚「三輪切」を、名古屋大・年代測定総合研究センターが放射性炭素年代測定法で調べた結果、俊寛の死後に筆写された14世紀のものと判明、科学的に筆者は別人と裏付けられたことが18日、分かった。
三輪切は平安、鎌倉時代に書き写された和歌や物語の写本がページごと切り取られて残った「古筆切」の一種。室町時代のころに筆跡を鑑賞する目的で写本はばらばらに切断され、掛け軸などに転用された。歴史的に貴重だが、偽物も多く、筆跡や書風から判断するしかなかった。
共同通信。
02/19 著作権者の承諾なしに作品写真 名古屋市美術館の図録
名古屋市美術館が、開催中の展覧会で販売しているカタログに、著作権者の承諾を得ないまま前田青邨の「富貴花」と、名古屋市在住の彫刻家のブロンズ像の写真を掲載していたことが18日、わかった。前田作品については著作権者に文書で通知を出したが諾否の確認はしておらず、彫刻家には全く通知していなかったとのこと。
読売新聞。著作権者が抗議→美術館が謝罪という流れになったようです。
02/19 入館者が100万人突破 九州国立博物館、4カ月で
東京、奈良、京都に続く全国4番目の国立博物館として昨年10月にオープンした九州国立博物館で19日、延べ入館者が100万人を突破したとのこと。
共同通信。「他の3つの国立博物館で最も入館者が多い東京国立博物館でも、入館者が100万人を割った年度があり、九博の人気ぶりがうかがえる」とのことです。
02/25 カーニバルに乗じ名画強盗 リオの美術館に4人組
ブラジルのグロボ紙などによると、リオデジャネイロのシャカラ・ド・セウ美術館に24日、手りゅう弾を持った4人組の強盗が押し入り、ピカソやマチス、ダリ、モネの絵画などを奪った後、カーニバルの人込みに紛れて逃走したとのこと。
24日付共同通信。
02/27 法隆寺の須弥壇にひび 昭和のしっくい傷む?
法隆寺金堂(国宝)で、本尊の釈迦三尊像や四天王像を安置する須弥壇表面のしっくいが、最長数10センチのひびが数本入り一部浮き上がった状態になっていることが27日、分かった。昭和の大修理(1949−54年)の際に塗り直した部分が傷んできたらしく、須弥壇全体の強度や仏像群に影響はないという。寺と文化庁が今後、修復を検討する。
寺側は、応急措置としてひび割れ付近の須弥壇側面を板で補強。最も近くに安置していた四天王像の一つ多聞天像(国宝)を宝庫に移動した。
共同通信。





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