2002年7-8月

京都最古の禅寺 建仁寺
06/04−07/07 サントリー美術館

▼後期の展示を観ました。最終日だからでしょうか。結構混んでました。

▼メインは「風神雷神図屏風」。作品前は、他所より高目の人口密度でした。といっても、全体像が十分に確認出来る範囲。しっかり観られました。生風神、生雷神は、動きがよいなぁ。いや本当に。そういえば、以前、この作品を観たときは「頭と頭の隙間から一部分を確認!金色です!ところで、風神と雷神はどこ?」てな具合でした。ツライ思い出ひとくさり。

▼この展覧会の定番?海北友松は、「花鳥図」の右端だけ群を抜いて状態が悪いような。気になってた長澤蘆雪は、即興、勢い、筆走らすという感じでした。て、どんな感じだ。曾我蕭白の「山水図」は、すごくきっちりした山水。ぶれがないというか、流石というか。余談ですが、カバみたいな脚と身体の牛がいました。香炉です。(07/07)




ゴッホの影響を探る:個性主義芸術の誕生 ヴラマンク・里見勝蔵・佐伯祐三展
06/15−07/25 損保ジャパン東郷青児美術館

▼ゴッホの影響を受けながら個性主義を確立していった三人の画風の変遷、影響関係を紹介する(同展チラシより)。約90点の展示です。三人の作品が同程度の比率で展示されており、まとまりのある展覧会。

▼鮮烈な色彩と、それに呼応したかのような激しいタッチ。うーん、たまらん。はっきりいって、ヴラマンク目当てで行きました。刺すように冷たい、暗く張り詰めた風景画や、独特な空の色も好み。

▼里見勝蔵は、ヴラマンクに指導を受けていたのが丸わかりな作品と、師匠から脱却し、自らの個性を確立したと思しき作品が並んでました。で、脱却後は、糸が切れてとんでもない方向へ行っちゃったような。

▼人気者の佐伯祐三は、ツボがどこにあるのやら。今回も、ツボを発見することなく終わりました。好き嫌いに関わらず、「ファンの方は、ここら辺りに惹かれてるのかな」と想像できたりするのですが、佐伯は無理。私が鈍感なのです、きっと。あ、想像の当たり外れはおいといて下さい。(07/13)

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巡回:08/03−09/15 ひろしま美術館




大本山 相國寺・金閣・銀閣秘宝展
06/08−07/14 静岡県立美術館

▼禅宗、中国、近世絵画、墨蹟、茶道具など、各寺院に伝わる秘蔵品を公開。創建者、絵画、茶道など、様々な分野、角度からの展示。

▼私的な収穫は、文正の「鳴鶴図」。鶴のなめらかな姿形、羽の描き方が美しい。この作品は、若冲、探幽が摸写を行ってます。と、ここで、三人の作品が並んでたら面白いだろうな〜と夢想。せめてパネルでも置いてあれば。

▼あとは、いつものことですが、若冲の襖絵など堪能。昨年の承天閣美術館以来の再会です。ところで「釈迦三尊像」は、「釈迦如来図」一幅のみの展示でした。ここでも、展示のないニ幅のパネルがあれば。「今回は如来図だけですが、本来は三幅あって『釈迦三尊像』と呼ばれているんですよ」という説明が、具体的にわかりやすく出来るのに…と。襖絵の方は、パネル使って説明してるんですけどね。

▼あぁ、パネルパネルと連呼してたら、スペースくってしまった。他に印象に残ったのは、狩野探幽が描いた「もちょっと真面目に描いたらどうだ」な鶏。若冲が襖の中に生み出した、羽をぷぅっとふくらませた鶏とはえらい違いです。(07/14)

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巡回:07/20−08/22 岐阜市立歴史博物館
09/10−09/29 青森県立郷土館




日韓文化交流特別展 韓国の名宝
06/11−07/28 東京国立博物館

▼結構混んでました。御年配から、カップル、子供など、幅広い客層。

▼ワールドカップ開催記念。展示作品は、紀元前3千年から20世紀初頭にいたる韓国の文化財約270点で、土器、陶磁器、青銅器、金製品、彫刻、絵画、書跡、服飾、家具など、さまざまなジャンルに及びます。(同展チラシより)

▼竹模様だったり、魚龍やザクロを象ったり。陶磁器は、思っていたよりずっとお茶目でした。端正な青磁、だけど形が面白い。色、形共に、端正なものも展示されていましたが。それから、「粉青線刻魚文扁壺」からは、沖縄の壷谷焼をイメージ。魚模様つながりです。

▼山水画は、岩や木の表現、空間の広がり具合に、日本、中国絵画との共通点があるような。それはそうですよね。つながりがあるのですから。

▼仏教関係のコーナーには、「八相幀」というド迫力仏画がありました。鮮やかな色、サイズは巨大、高密度画面の三拍子です。色と密度といえば、「十長生図」という作品も負けてない。鹿、竹、鶴、亀、松、零芝など、不老長生の象徴を、画面の端から端まで描き込み描き埋めまくり。この絵を枕元に置いたら、本当に長生きするかも。

▼最後に、チラシになってる「金冠」と、真っ赤な「円衫(王族が着用した衣服)」を観て、なぜか川西杏さんを思い出しました。と、さっぱりわからない感想でしめるのでありました。(07/21)




都築響一のゑびす秘宝館
05/28−07/28 トランスギャラリー

▼2000年に閉館した、鳥羽国際秘宝館・SF未来館を再現。「珍日本紀行」からの流れでしょうか。

▼イッてきました、秘宝館。と、腐臭漂うオヤジギャグを一発。いや〜暑くて、いつもにも増してダルダルなもので。女の子たちが盛り上がりつつ、楽しそうに観ていたのが印象的でした。

▼壮大かつチープな、近未来SF風エロエロストーリーを、人形(もちろん全裸)やら大道具やら小道具でパワフルに表現。というのが、大まかな内容。お姉さんが縄で捕獲されたり、改造手術を受けたり、ぶっといパイプで授精させられたり、生まれた子供をカプセルで育てたり、あっという間にイイ女に成長したり。めくるめくストーリー展開には、ハラハラドキドキさせられっ放しでした。ウソ。なんというか、イカ臭い中学生の夢想を、立体で見てる感覚だったなぁ。ナレーションとBGMが、うらぶれ感を醸し出しておりました。

▼ええと、多分、「展示」によって派生した芸術的な意味が、お姉さんの股ぐら辺りに隠されているのでしょうが。個人的には、面白かった〜ということで。でも、この秘宝館、淫靡度や怪しさ度は、鳥羽の方が遥かに上だったのでは。こういったエロというか負というか混沌としたものって、小ぎれいな場所に置くと、成分が変質するのかもしれないなぁと思いました。(07/28)




江戸蒔絵 −光悦・光琳・羊遊斎−
08/20−10/06 東京国立博物館

▼豪華な大名婚礼調度や琳派の名品など、国宝8件、重要文化財7件を含む江戸蒔絵の粋、約130件を展示。(同展チラシより)

▼凝った細工でみせたり、簡略化されたデザインでみせたり。漆の黒で遊んだり、黒を上手に活用したり。図柄が繊細だったり、バイタリティに溢れていたり。と、様々なタイプの蒔絵が並んでおり、かなり楽しめました。

▼タイトルにある光悦、光琳は、それぞれの絵画や書、アートディレクターぶりを彷彿とさせる仕上がり。琳派関連では、下絵が抱一、蒔絵が羊遊斉という作品もありました。下絵も出品されています。タイトルにはありませんが、小川破笠が結構な数来てました。貝尽くしの硯箱が、ちょっと変且つ大変美しい。夕顔の間に虫たちが見え隠れする、硯箱も可愛かったです。

▼それから、印籠は遊び心溢れる図案多数。面白い。根付と共に展示されており、その取り合わせの妙も味わうことが出来ました。それにしても、こういった品を日常的に持ちあわせていたなんて、本当にお洒落だったんだなぁ。

▼反して、後半に展示されている、輸出向けの品や婚礼調度は、ほんの少々物足りない感じ。名品だとは思うのですが、よそゆきな感じがして。

▼最後に。これから行かれる方は、モノキュラーなど、望遠鏡関係を持っていかれることをおすすめします。より一層楽しめると思います。(08/23)




のぞいてみよう!幕末・明治のヴァーチャル革命
日本近代洋画への道 −山岡コレクションを中心に

08/10−09/29 埼玉県立近代美術館

▼幕末から明治にかけての写真、錦絵、資料や、洋画を展示。第1部西洋との出会い、第2部洋画の歩みといった構成。

▼第1部は、初めて西洋文化に触れた驚きやワクワク感、「珍しい!取り入れたい!」といったお目々キラキラの好奇心が伝わってくるかのような絵画や写真、資料を展示。展示品からは、着物とちょんまげと洋装と西洋と新しものが混在したことによって生まれる、妙ちきりんなパワーが放出されていました。それは和洋折衷というより、和洋ごった煮。掛軸の中身が写真というキワモノさんもいらっしゃったりして。また、当時開催された博覧会や、町並みの様子が窺い知れた点もよろしかったです。

▼第2部は、1部の絵画編といった趣き。こちらは、「西洋には油絵といったものがあるらしい」「ぜひ描いてみたい」という思いを乗せつつ発展をとげた、明治時代の洋画界を振り返る展示になっていました。青木繁、高橋由一、五姓田義松、黒田清輝、藤島武二などなど基本に忠実な顔ぶれで、安心して観られました。高橋由一、五姓田義松が学んだワーグマン、黒田清輝の師匠であるラファエル・コラン。この辺りの作品も押さえてありました。

▼個人的には、高橋由一をまとめて観られた点が収穫。山岡コレクションの「鮭」は、かなり身を喰われてましたとさ。板に描いてあり、それがちとまな板っぽかったりもして。「鯛図」のウロコの光り具合もよかったです。由一の作品は、真面目な豆腐と、大変味わい深い油揚げ入りの味噌汁という感じ。美味でした。わからん例えで失礼。

▼あとは、いかにもコラン節な黒田作品〜でかいサイズ〜があれば、展覧会的には盛り上がったかも?(08/24)


[常設展]埼玉県立近代美術館

▼森田恒友がすごく気になりました。セザンヌに影響を受けた洋画と、日本画転向後のあっさりしたタッチと色彩の水墨淡彩。かなり激しい変わり具合です。画風の変遷なんて珍しいことではないけれど、それを踏まえつつもびっくり。転向後の作品は、ちょっと不思議な味があります。

▼他に、草間彌生、木村直道の特集展示と、埼玉近美でおなじみのコレクション展示がありました。

▼展示内容とは無関係ですが、知らないうちに常設展示が有料になっていました。以前は無料で見られたのに。(08/24)






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