2002年5-6月
▼萬福寺境内にある展示施設。春と秋に特別展を開催。今回の展示は、室町時代に描かれた十六羅漢図(16幅)を中心としたものです。 ▼十六羅漢図は、羅漢一尊と眷属、器物、岩山などを配したもの。異国な表情と画風です。その他で印象に残ったのは、清時代に描かれた「菩提樹葉羅漢図」。葉脈まで細密に描かれた葉の中に、羅漢が佇む構図。不思議な雰囲気漂う作品です。色も綺麗に残っています。バックが真っ青。 ▼興味深かったのは、壁に掲げられていた対聨(※)。隠元、木庵、石峰寺を作った千呆などの書が、対聨になっていました。書の部分には微かに金が残っています。当時は金文字だった模様。それにしても、読めんです。 ▼2階は、坂田明道「水墨画展」(会期同じ)。古代神話に登場する神を、滲みを多用した水墨画で大胆に表現していました。(05/03) ※左右一対として書や絵、彫刻をし、柱や壁などの左右に掛けて飾りとした細長い板のこと |
▼午後訪問。苦もなく観られる程度の人出でした。幅広い年齢層の方が来てました。 ▼茨城県や福島県を中心に活躍した画僧、雪村周継の展覧会。作品の傍らに、長文の、いかにも力作っぽい解説がついてます。 ▼自由で楽しい画風。加えて、人や動物のユーモラスな表情やヘタウマ加減が、妙な福々しさを醸し出していました。空の彼方へ向かう構図も面白かったです。人の顔も、上へ上へ向いてること多し。 ▼気になったのは、しっかり描いた作品と、かなりアバウトで手抜きな作品があったこと。本人の資質によるものなのか、本家と伝雪村の差によるものなのか。はてさて。同行者は、指の表現(第一関節が折れているようにみえる)と、くにゃんと曲がった竹が気になったそうです。私は、いがの中に栗が4つ入ってることが謎でした。普通、2つか3つ入りかと。サービス?(05/04) 作品:花鳥図屏風(右隻) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - |
▼午後訪問。すいてます。芋洗い状態の外とは、まるで別世界です。 ▼日本初公開のコレクション展。て、タイトルそのままな説明…。肉筆画も版画もあります。 ▼“テクニシャンだなー”というのが、第一印象。特に上手なのが動物で、皆、生き生きと自由自在に動き回っていました。蛙なんてピカイチです。意外だったのは、浮世絵の美人画。暁斎独自の遊び心やひと工夫が入ってない、スタンダードな形の作品。女性の顔が、繊細で上品なのには少々驚きました。それから、変わった構図の「鯉の滝登り」がありました。鯉が正面(後ろ)向きだよ、オイ。てな感じの。滝は噴水のようだし、全体的に変な作品。きっとこの方、色々試したくなる性分なのでしょうね。で、テクニックも豊富なので実際に描けてしまうという。そういえば、ここにはありませんが、正面顔の鯉も描いてましたね。 ▼この展覧会では、くるくると変わる、表情豊かな作品が観られます。様々な暁斎が堪能できると思います。(05/04) |
▼夜間開館を利用。平日の夜、結構な雨、「山水長巻」は前半が副本で真本は後半のみという具合に、人が集まらなそうな条件が重なっていたにもかかわらず、かなり混雑していました。でも、入場時並ばずに済んだので、ましな方かも? ▼雪舟の回顧展。雪舟はもちろん、伝雪舟、雪舟に影響を与えた中国の画家たちの作品を陳列。順番通りに作品を鑑賞し、解説を丹念に読むと雪舟の全体像が浮かび上がるという展示です。多分。混んでてじっくり観たり読んだりできる状態ではなかったので、確信は持てませんが。 ▼岩の面白さや男らしさが、強く印象に残りました。特に「慧可断臂図」の奇怪な岩肌と形は、ぐっと来るものがありました。元になったといわれる「禅宗六代祖師図巻(展示されてます)」より、雪舟版の方が決まってる感じ。それから、「四季山水図(東博所蔵)」のゴツゴツと天にそそり立つ巨岩もよかったです。この作品は空間の広がり具合がすごくて、観てると岩のてっぺんに飛ばされる感覚に陥ります。気持ちいい。ところで、「秋冬山水図」の強い線と岩肌を観るたび、なぜか織部焼を思い出してしまいます。なんでだろ。それと「秋冬山水図」だけ、妙に保存がいいんですよね。不思議。 ▼「天橋立図」は、すぐ前に「成相寺参詣曼荼羅」を展示し、盛り上げを図ろうとする努力がみられました。で、「天橋立図」が登場と相成り、実際に盛り上がるのだけど、隣りの天橋立の写真にがっくり。絵と実景の比較検討は必要なのだろうし、「比べてみたいな」と思う人も多いでしょう。でも、私は雪舟だけで十分。 ▼花鳥画(四季花鳥図屏風)もありましたが、個人的には今イチ。「山水長巻」は人が多すぎて、ちゃんと観られなかったです。残念。(05/10) 作品:慧可断臂図 「雪舟巻」というお菓子がなかったのも、かなり違った意味で残念。京都では売ってたそうで。見たかったな〜みやげものの雪舟。 |
▼後期の展示に行ってきました。前回よりは混んでいました。といっても、余裕で観られます。 ▼クラーク氏が笑顔で「この絵、大好きなんだ」「これもいいでしょう?」と、話し掛けてくるような展覧会。楽しんで作品を集めてることが伝わってくる感じ。だから、こちらも観てる間中、すごく楽しい気分になれるのかもしれません。もちろん、作品自体も楽しめるものばかりですが。 ▼今回の収穫は、柴田是真の屏風絵が観られたこと。酒井抱一と鈴木其一の仏画という、ちょっとした変り種があったこと。若冲は「松に旭日図」が来てました。松葉の筆致が冴えてます。そうそう。狩野芳崖が来てるのですが、「悲母観音」より全然よかったな。 ▼余談ですが、「大威徳明王像」の後ろ姿を拝みつつ“これはもしや牛のふ○りでは”と、罰当たりなことを同行者としゃべり合ってたら、御婦人が覗きに来てしまいました。私達は、何事もなかったようにその場を立ち去りましたとさ。(05/11) |
▼後期の展示に行きました。着いたのは午後。団体さんとかち合い、中は結構混んでいました。 ▼動植綵絵は「芙蓉双鶏図」と「蓮池遊魚図」の二幅。「蓮池遊魚図」は、宇宙遊泳度が最も高い一品。作品の中だけ無重力で、ふわふわしている。観ているこちらも、頭の中がふわふわしてきて、それがまた快感だったりするのでした。あぁ、また個人的見解を書いてしまった。ところで画面に泳ぐ、というより浮遊する魚たち。1匹だけ姿が違うのがいて、いつも目に付いてしまいます。そういえば、「秋塘群雀図(動植綵絵・展示はありません)」の雀も、1羽だけ白いのがいるんですよね。 ▼今回、割を食ったと思われるのが、隣りの「牡丹孔雀図(円山応挙)」。尋常でない描き込みの「芙蓉双鶏図」が近くにあるのは、少々分が悪いような。普通に観れば、十分華やかなのですが。それはそうと、孔雀の首が蛇、もしくは鯉のウロコっぽいのは気になります。不思議な表現にみえますが、羽ってウロコ状なのでしょうか。よーく観察すると。(06/02) 関係ありませんが、本日の皇居周辺。車に轢かれたと思われる亀の死体と、イングランドのサポーター家族連れを見かけました。ワールドカップですな〜(亀除く)。 |
▼混むでもなく、がらがらでもなく。最終日ですが、のんびり観られました。 ▼このタイトル、昨年12月から今年1月にかけて開催された、板橋区立美術館の展覧会と酷似してますねえ。が、極楽地獄は一角を占めるのみ。展覧会全体の印象は、サブタイトルの方がはるかに的確かと思われます。 ▼極楽と地獄は、鎌倉、室町時代が中心。地獄に人だかりができ、極楽はすいてました。皆さん、地獄好きなようです。というより、画面の端から端まで阿鼻叫喚という高密度のため、観るのに時間がかかるのか。でも、極楽に展示されている、これまた密度の濃い当麻曼荼羅図の前はがらすき…やっぱり地獄好きなのかも。 ▼本展覧会には、保延2年(1136)に描かれた「真言八祖行状図」が展示されていました。その年代をきくだけで果てしなさと有り難さが交互に訪れるってな具合になりそうなものですが、肝心の絵の痛みが激しすぎて、観てどうこうという感じではなかったです。現存していることに大きな価値があるのでしょうか。(06/02) 作品:六道十王図(六幅のうち一幅) 常設展では、鈴木其一の「雑画巻」が興味深かったです。墨で植物や(多分)寿老人、亀などをさらりさらりさささっと描いたもの。線の動きが心地よく楽しい。おしまいに、酒井抱一の「八ツ橋図屏風」をゆっくり観て帰りました。余談ですが、最近、抱一と其一のことばかり書いてる気がします。 |
▼むさ苦しく暑苦しい午後に訪問。館内は、当たり前ですが快適温度、尚且つすいていました。連れ立った御婦人方が目に付く位でした。 ▼絵画、書、彫刻などを、偉人、奇人、名人という3つのジャンルに区分して展示。視覚の向こうに「人」の窺える展示(展覧会チラシより)。年代は、室町から昭和といった所。 ▼「空也上人絵伝」「徳川家康像」。題材が偉人ということですね。なるほど。勝海舟、徳川家慶による書、絵画。作者が偉人ということですね。なるほど。書棚があるな、ん?これが偉人とな。何々?徳川綱吉が柳沢吉保に贈った…そんな理由で偉人ジャンルなのか?「和歌浦図」。名所絵なのだが、これも偉人?和歌山城の天守閣や紀伊の東照宮が描かれているから?苦しいよ、助けてママン…。 ▼という具合に、「?」と「…」が頭に浮かんでは浮かびっ放しの展覧会なのでした。タイトルの中に作品を強引に押し込んだ感が。ちなみに、円山応挙、英一蝶、狩野派の方々は「“その瞬間”の描写が云々」とかで名人に入ってます。苦しい。ついでに、ペラ紙にプリントアウトしただけのキャプションも苦しい。もしかして急場しのぎ?虫ピンで止めてあったりするし。(06/11) ラストエンペラー・溥儀による「牡丹図」、徳川慶喜による「博物館」書額といった珍品が出てました。書額は、かつて大倉集古館に掲げられていたのだそうです。「博物館」っと大胆に書かれております。 |
▼午後訪問。平日にしては人出があったように思います(平日の動向に明るくないので推測含む)。といっても、まったく支障なく観られました。 ▼京都五山のひとつ、建仁寺の所蔵品を展示。前期(06/04−06/16)、中期(06/18−06/23)、後期(06/25−07/07)と分けられており、その都度展示替えがあります。 ▼今回のメインは、海北友松による「雲龍図」。コーナー部分に展示されており、スペースに多少余裕を持たせてあります。間近で観るもよし、作品前の椅子に座って観るもよし、ちょっと離れて観ることも可能といった感じです。ところで、2匹の龍は阿吽と考えていいのかな。単なる勘違い? ▼他には、白隠をはじめとする禅画や、京焼の奥田頴川と仁阿弥道八の作品が沢山ありました。怪獣みたいな形をした香炉があったり。もちろん、建仁寺の歴史が垣間見える頂相や墨蹟などの展示も。 伊藤若冲情報:「雪梅雄鶏図」「拾得および鶏図」の2点。前、中期のみの展示。「拾得および鶏図」は、3年前から京都国立博物館が実施している、建仁寺の文化財調査で見出され、初めて公開されたとのこと(「新日曜美術館」・アートシーンより)。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - |
▼馬をモティーフにした美術品、工芸品、考古学資料を通して、馬と人との関わりを紹介する。約90点の展示。 ▼陶器や置物、コインの図柄、印章など、バラエティ豊かな展示品。あらゆるジャンルに、馬のモティーフが氾濫していました。その氾濫っぷりから、馬と人との密接な関わりがみえる感じ。それから、紀元前に作られた馬具からは、馬の利用っぷりが伝わってくるようでした。騎乗歴、果てしなく長し。 ▼色彩や細工、造形も、面白かったり意外だったり。観ている間、好奇心をチクチク刺激される感覚に陥りました。特に印象に残ったのは、鮮やかな色彩に少々とぼけた絵柄が施されたイランの陶器、馬が沢山描かれた、これまたイランの細密画です。 ▼惜しむらくは、点数の割にはあっさり展示が終わったこと。もう一部屋分、展示が欲しかったです。(06/15) |
▼中期の展示に行ってきました。海北友松の作品が、別の海北友松に替わってました。前期同様、雄大です。というのが大ざっぱな印象。 ▼中期のみ展示の「水辺童子図襖(長谷川等伯)」は、作者が等伯であることが全て。少々期待外れでした。この作品が一番気になっていたのに。かわいそうな展示だったのが、「唐人物図座屏(狩野山雪)」。裏表に絵があるにもかかわらず、柱がおっ立ったケースに入れられちゃって。柱が邪魔で、裏側は斜めからしか観られないんですけど。後期も、同じ場所に置くつもりなのかなぁ(後日談:同じ場所に置かれてました)。 ▼うーん、テンションが上がらない。後期に期待といった所か。あ、仁阿弥道八の山羊は可愛かったです。四角い瞳や、鼻、口にかけてのラインがうまく表現されているように思います。前回の兎より好きです。(06/21) |
▼葛生町の吉澤家に伝わる美術品を展示。近世と現代の絵画、近現代の陶芸が中心。この展覧会は第1部で、第2部は10月26日から12月8日に開催されます。 ▼最初のフロアは、現代の日本画。高山辰雄、平山郁夫など錚々たる顔ぶれです。それにしても、皆さん揃って見事なまでの厚塗り。厚塗りが悪いというか、そこまで厚くする必然性は?あるの?厚すぎて、かさぶたの如く取れそう。杉山寧による「昊」とか。 ▼次は、陶芸。板谷波山の作品が多かったです。「彩磁呉須模様香炉」は、青色が繊細で綺麗。個人的には、魚の面が観たかった。益子焼の加茂田章二、栃木県出身作家による作品も並んでいました。地元色です。 ▼最後に近世絵画。十一代当主、吉澤松堂が画を習った高久靄香A関わりのあった渡辺崋山の作品が展示されてました。松堂による「風竹図」も。狩野派もありましたが、探幽の「十牛図」は十並んでなかった、常信は(以下自粛)とかありまして。うーんと唸ってみたり。最後に展示してある若冲の「菜蟲譜」で、何とか持ち返しましたとさ。この作品は、京博の若冲展以来。じっくりゆっくり観られました。昆虫や野菜を慈しむ感じがよいなぁ。それに、いい意味で可愛らしくユーモラス。観てるとき、すごく楽しかったなぁ。 ▼と、あらあらもう出口。小さめの展示会場で、少々物足りないような。贅沢いってすまんです。 「菜蟲譜」グッズがありました。絵はがき、マウスパッド、一筆箋。「菜蟲譜」まんじゅうみたいなのはなかったです。その辺りは、踏みとどまった模様。近くの土産店には、原人クッキーがありました。葛生原人ということで。 |