2002年3-4月

横山大観 その心と芸術
02/19−03/24 東京国立博物館

▼平日にも関わらず、入場まで30分程かかりました。会場内も、かなりの混雑。どの作品の周りにも人垣ができていました。巻物は、延々と並ばないことには近くで観ることはできません。

▼作品は53点。少ないですが、「生々流転」など代表作多数。「夜桜」と「紅葉」を並べて展示するといった売りもあります。明治、大正、昭和と、年代的にもまんべんなく作品が集まっていました。東京美術学校の卒業制作である「村童観猿翁」の展示もあり。

▼大観の作品、特に大作には「日本の美術は私が変える」「偉大でありたい」「頂点に立ちたい」といった野心が、はちきれんばかりに詰まっていました。
作品には作者自身がにじみ出るもの。けれどもここまでストレートに、もとい押し付けがましく「自分自身の野望以外何もない」作品を描けるのは、大観ぐらいなのでは。違った意味で、稀有な存在かも。(03/15)


松永耳庵コレクション展
02/19−03/24 東京国立博物館
「釈迦金棺出現図」

▼政治家・実業家であり、茶人でもあった松永安左エ門(耳庵)のコレクションを一堂に集めた展覧会。大観展のチケットで入場できるためか、こちらもなかなかの混み具合。そうはいっても大観に比べれば可愛いもので、普通に観られる程度でした。

▼茶道具や絵画、仏像など148点を展示。ミニ茶室をしつらえた展示も。

▼ある日、何となく立ち寄った福岡市美術館のサイト。何となくコレクションを覗いたら、(私の)ツボにぴっちりハマッた品々がずらり。そんなコレクションたちが東京に来てくれたので、観に行った次第です。

▼という、どうでもいい話しはおいといて。趣味の良さに、面白味や脱力感がほのかに加わったコレクションは、実に魅力的。それから、尾形乾山の「花籠図」など掛軸や屏風は、渋い味わいの作品が多かったです。この辺りに、茶人としての嗜好が出るのかもしれません。(03/15)


志野筒茶碗 銘「橋姫」

スペイン王室コレクションの美と栄光 プラド美術館展
03/05−06/16 国立西洋美術館

▼夜間開館を利用。会場内は、ガラガラでも混んでるでもない入り具合。作品をじっくり観ることができました。

▼77点の展示。作家は、ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコ、スルバラン、ムリーリョ、ティツィアーノ、ティントレット、ルーベンスなど。ルーベンスは、ゴヤの元ネタになった「わが子を喰らうサトゥルヌス」が来ています。(という言い方も何ですが)

▼プラドの超有名・目玉作品はありませんが、良質な展覧会。「作者の名前は有名だけど、作品自体はちょっとねえ…」といったガッカリ感は無し。ベラスケスの5作品が、特に印象的でした。ただ、もう少し点数が欲しかったです。(03/15) 作品:ベラスケス「道化師セバスティアン・デ・モーラ」

常設にグレコなどあるので、比べてみるのも一興かと。


長谷川等伯 国宝松林図屏風展
02/26−03/24 出光美術館

▼結構込んでましたが、日曜の午後、「松林図屏風」の展示ということを考慮すると、しょうがないかな程度。普通に観られました。

▼長谷川等伯は、「松林図屏風」と出光美術館所蔵作3点。加えて、能阿弥、牧谿、玉澗の作品が1点ずつ出品されていました。別室には、桃山時代の長谷川派、狩野派といった関連性のある展示も。

▼「松林図屏風」は、東博より近くで観られる感じ。出光コレクションの作品と並んでいるのも、なんだか新鮮でした。能阿弥作品の気持ちいいまでの中国絵画っぷりも堪能。

▼「松林図…」の前に椅子があるのですが、そこに上って鑑賞ぶちかますオヤジがいました。いい大人が何やってんだか。(03/17) 作品:長谷川等伯「竹鶴図屏風(部分)」


サム・テイラー・ウッド
01/09−03/17 資生堂ギャラリー

▼イギリスの女性アーティストによる写真展。

▼大きな写真の下にコマ割り写真が付随する作品は、作り込んだ感じ。コマ割り写真が、ト書きにみえます。それからプラド美術館展(スルバラン「神の仔羊」)に続き、ここにも生贄の子羊が。いえ、前脚縛られた羊の写真があったので。「最後の晩餐」を思わせる作品も展示されていました。

▼全体的に、死が横たわってるような印象を受けましたが、気のせいでしょうか。(03/17)


江戸の美意識 絵画意匠の伝統と展開
03/26−04/14(前期)、04/20−05/12(中期)、05/18-06/09(後期) 宮内庁三の丸尚蔵館

▼ゆっくり観られました。が、平日の割には人の切れ目がなかったような。

▼展示品は、江戸時代の絵画、工芸品、冊子。文学と花鳥の意匠にちなんだ作品が並んでいます。小さな会場なので、点数は少なめです。

▼印象に残ったのは、伝岩佐又兵衛の屏風。荒々しく表情豊かな人物たち。動きがあっていい感じです。あとは細密な絵が描かれた香包をみて、米にお経書く人を思い出したり。うーん、情緒のかけらもありませんな。工芸品は、硯箱など蒔絵が多かったです。「糸桜図簾屏風(狩野常信)」「桃花小禽図(伊藤若冲)」といった、季節に合わせた展示もありました。今年は、桜も桃も終わりかけですが。

▼この展覧会は、「源氏物語」を題材にした作品が何点か出ています。この辺りに興味をお持ちの方にはよろしいのではないかと。もちろん、江戸の美術が好きな方にもおすすめです。無料ですし。(03/26)


カンディンスキー展
03/26−05/26 東京国立近代美術館

▼休日の割にはすいていました。広々とした会場と余裕を持たせた作品配置も相まって、大変観やすかったです。(但し、入口部分だけは狭いです)

▼ロシア連邦と旧ソ連諸国の美術館に収蔵されている作品のみで構成。74点の展示です。カンディンスキーの作品には、うねうね抽象とかっちり抽象がありますが、今回はうねうね中心です。それにしても乱暴な表現だこと。

▼メインは「コンポジション」シリーズの2作品。大きなカンヴァスに溢れ返る色、形、線は、軽やかだけど圧倒的。目で観るだけにとどまらず、身体全体で観て受け止めて、楽しめる作品です。個人的には、そんな感覚を持ちました。

▼他の作品では、意外にも?風景画が印象に残りました。色がとても綺麗。色を生かした構図も面白い。小さかったり習作だったりで、目立たない存在なのですが。それから、具象と抽象の狭間に佇む作品があり、大変興味深かったです。形が変わっていく様が垣間見れたような。

▼粒揃いの作品が並ぶ、充実した展覧会でした。すいてるし、穴場かも?(04/14)

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巡回:06/08-07/21 京都国立近代美術館
08/01-09/01 福岡市美術館


江戸の美意識 絵画意匠の伝統と展開
03/26−04/14(前期)、04/20−05/12(中期)、05/18-06/09(後期) 宮内庁三の丸尚蔵館

▼中期の展示に行ってきました。早い時間だったためか、休日でもすいていました。

▼今回、伊藤若冲の「向日葵雄鶏図」「牡丹小禽図」(動植綵絵)と、酒井抱一の「燕子花に鷭図」「立葵紫陽花に蜻蛉図」(花鳥十二ヶ月図)が並んで展示されていました。若冲のすぐ後に抱一登場となるわけですが、濃から淡、無数にあるモチーフの重なりから面という具合に、画風がいきなり変化する様にはびっくりしました。両者の違いはわかっていたけれど、まのあたりにすると結構なインパクト。

▼それから、精緻な筆捌きで細部まで描き込む若冲の作品と並ぶことによって、抱一作品のゆるさが際立っていたように思います。けなしてません、誉めてます。作品全体に漂うそこはかとない「ゆるさ」は、琳派を越えた抱一独特の味。ゆるさ加減がいい按配で好みです。
と、まったくの個人的見解を書き綴って(殴って?)みました。「いつもそうだろ」という話しもありますが。(04/28)


花苑逍遥 −描かれた四季の花々−
04/06−05/19 静嘉堂文庫美術館

▼すいていました。丸っきり余裕で観られます。夫婦連れ(推測)の方々を、ちらほらお見かけしました。

▼展示は、江戸時代と中国の明清時代が中心。花をあしらった絵画、工芸品を集めています。

▼花鳥画好きは嵌ってしまいます、この展覧会。琳派、有田焼、蒔絵など様々な形で表現された花が、そこかしこに咲き誇っていました。日本の花々に加え、明清や南蘋派(中華風味ということで)の花も満開。一味違う、オリエンタルな芳香が魅力的でした。特に印象に残ったのは景徳鎮。細やかで美しいです。

▼日本と中国美術の合わせ技展示によって、お互いの魅力がより一層引き出されたように思います。中華のスパイスが程よくきいてる所も、ツボにきました。それから、一輪の花もいいけれど、花束にするともっと綺麗にみえるな。なんてことも思ったりして。(04/28)


クラーク財団日本美術コレクション アメリカから来た日本
04/16−05/19 サントリー美術館

▼午後に訪問。すいてるでも混んでるでもない入り具合。GWの割にはすいていたかもしれません。

▼カリフォルニア在住のウィラード・G・クラーク氏による、日本美術コレクションを公開。鎌倉時代の仏教彫刻、中世から近代の屏風や掛軸などの展示です。

▼エグい「風・雨・雷神図屏風(雨もいる)」、鳥獣戯画・蛙のみバージョンなど面白い作品が多いです。楽しいな、好きだなこういうの。それから、外国人好みの(?)曾我蕭白、河鍋暁斎の作品がありました。やっぱり。

▼個人的に気に入ったのは、「大威徳明王像」と鈴木其一の「月に波涛図」。其一の作品は、単純化された構図と毒々しい青が魅力。あの青、触るとかぶれると思います。
それから、黒毛和牛3頭(3作品)を観て、牛の如くよだれが出そうになりました。いえ、牛フェチなもので。クラーク氏は牛関係の仕事をしており、牛への愛着からこれらの作品を手に入れたのだそうです。ところで3作品のひとつである「牧童図」は、長澤蘆雪にそっくりでした。“蘆雪だ、蘆雪だ”と脳内でつぶやきながら作品を観てしまう位、瓜二つ。解説を読んだら、やはりというか当然というか蘆雪のことが書いてありました。

▼展示替えの関係で、観られなかった作品多数。曾我蕭白の「群鶴図屏風」など、チラシに載ってるのに展示されてないのもあったり。後半、また足を運ばないと…。(04/28)

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巡回:05/28−06/30 大阪市立美術館
07/27−09/01 大分市美術館
09/14−10/27 愛媛県美術館
2003/01/04−02/02 千葉市美術館






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