2001年11-12月

風流公子 酒井抱一展 〜京と江戸のかけ橋〜
09/07−12/16 細見美術館

▼酒井抱一展というより、酒井抱一と仲間たち展です。

▼もちろん抱一自身の作品もありますが、家族、円山四条派、南蘋派、鈴木其一など、周辺の作品や資料が多かったです。抱一の生涯、影響を受けた人物・画法、人となりが、展示によって具体的に表されていました。

▼解説を読みながら展示品を眺めていくと、抱一の人物像や交友関係がおぼろげに浮かんでくる感じ。尾形光琳の百年忌法要と記念展覧会の主催をしたり、光琳、乾山兄弟の収録本を出版したりと、師弟愛の図式も微笑ましい限り。

▼抱一の全体像が見えた点では、面白い展覧会でした。(11/03) 作品:酒井抱一「雪中檜小禽図」


眼の革命 発見された日本美術
10/02−11/18 渋谷区立松涛美術館

▼従来の枠からはみ出た造形を、既成概念抜きの価値観で見出し、新たな美術として認知する。そうした日本美術における発見史をたどった展覧会です。

▼「発見者」は柳宗悦、岡本太郎、辻惟雄、赤瀬川原平の4氏。
柳宗悦は、朝鮮・日本の民衆的工芸品、木喰仏、着物など。岡本太郎は縄文土器。岡本が実際に調査を行った土器と自身が撮影した土器の写真が展示してありました。辻惟雄は近世絵画の再評価。展示は、曾我蕭白、岩佐又兵衛など、著書「奇想の系譜」に沿った顔ぶれでした(この本については本で愉しむを御参照下さい。大したこと書いてませんが)。赤瀬川原平は超芸術トマソン。ププッと笑えるちょっと不思議な物件たちがズラリ。

▼他に「わびの革命」として陶器、「遅れて評価されたもの 近世の宗教美術」として円空、白隠、仙高ネどが紹介されていました。

▼展覧会には様々な形があります。誰もが認める名画を存分に見せてくれたり、大規模な回顧展だったり。もちろん、これらの展覧会はなくてはならないものに違いありません。でも同時に、小ぢんまりだけど「企画で勝負」みたいな展覧会に出会えるのも、美術館巡りの醍醐味なわけで。「眼の革命」は、まさに「企画で勝負、なおかつ勝利」という、醍醐味がぎっしり詰まった展覧会でした。 (11/04) 作品:木喰「地蔵菩薩像」 曾我蕭白「群仙図屏風(部分)」


20世紀イタリア美術−みつけた、100の物語。
09/22−12/02 東京都現代美術館

▼20世紀のイタリア美術を、100点の作品でふり返る。

▼時代の流れに沿った展示。時代背景やムーブメントごとに区切られ、作品が並べられていました。なにせ1世紀分ですから、出品作、作家共、かなりバラエティに富んだ顔ぶれ。色々ありすぎて、大急ぎで20世紀をふり返らされてる感覚に陥りました。

▼作品は、こちらが勝手に顔馴染みなモディリアーニ、デ・キリコ、モランディが何点も来てました。モディリアーニが描いたキスリングの肖像画の展示も。それから、知識ゼロのイタリア現代美術が色々観られて、いい経験になりました。(…知ってるのフォンターナ位)

▼ところで、振動するはずの作品が故障中でぴくりともしなかったのが…動くこと含めて、ひとつの作品じゃないんですかね。あと、展覧会の内容には無関係ですが、いかにも触ってみたくなりそうな作品に「お手を触れないで下さい」札がついてて、おかしかったです。(12/02)


江戸の異国趣味−南蘋風大流行−
10/30−12/09 千葉市美術館

▼沈南蘋に影響を受けた、いわゆる南蘋風と呼ばれる絵画を集めた展覧会。本家の沈南蘋もありました。

▼展示区分は、一時的南蘋風、中国、長崎、上方、江戸、秋田蘭画など。殿様芸というのもあったりします。

▼作品は、タイトル通りの異国な雰囲気。妙に濃密な花鳥画は、観ていて大変面白い。左に載せた、熊斐の鯉なんて何ともいい味わい。でも、全体的には玉石混淆という感じでした。

▼南蘋風の作品をまとめて観られるなんて、そうそうないことでしょう。そんな機会を作ってくれて、ありがとうな展覧会でした。が、受けはあまり良くなかったのでしょうか。最終日前にもかかわらず、かなりすいてました。単に、前半の方が込んでたとか?(12/08) 作品:沈南蘋「花鳥図(部分)」 熊斐「登龍門図」

若冲と沈南蘋、鶴亭の作品がありましたので、比較してみました。雰囲気や描き方が似てる気もするけど、若冲は若冲だよなーと思ってみたり。


日本のおしゃれ展
11/22−12/10 伊勢丹美術館

▼江戸末期から昭和初期までの着物を中心とした展覧会。

▼着物に半襟、帯、帯留まで取り合わせ、コーディネート。それをマネキンに着せた展示が、なんというか即売会の香り。値札がついてそうであります。

▼会場をまわってる間、岩下志麻と高島礼子の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え…守備範囲外の事柄につき、これ以上のコメントは差し控えさせていただきます。終わり。招待券があったからって行くもんじゃない。(12/08)


「聖徳太子」展
10/20−12/16 東京都美術館

▼最終日に行ったら人だらけ。入場まで並ばされて待たされて、入ってからは芋洗い状態。暑くて頭がボーッとするし、最初から最後まで観るどころではない状態でした。

▼そんな中、唯一観ることに引き戻してくれたのが「観音菩薩立像(夢違観音)」。言葉では形容し難い表情の持ち主で、おだやかな眼差しに思わず昇天。というのは嘘ですが、対面している間、むかっ腹の会場をきれいさっぱり忘れさせてくれたのは事実です。柔和だけど強い存在感。

▼あとは、ずらりと並んだ南無仏太子像を見比べ、楽しんでみました。一体一体の表情の違いに、作者の聖徳太子に対するイメージが見えるよう。ところで、凶悪顔の太子像がいるんですけど。

▼とにかく、聖徳太子に関するありとあらゆるものが展示されてました。仏像、絵画はもちろんのこと、憲法十七条の版木なんてレア物?も有り。よく集めました。すいてる日に行ったら、もう少し楽しめたかもしれません。(12/16) 作品:「観音菩薩立像(夢違観音)」

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巡回:2002年1月8日(火)〜2月11日(月・祝) 大阪市立美術館
2002年3月2日(土)〜4月7日(日) 名古屋市博物館


モネ ルノワール シャガール…コーポレート・アート展
11/10−12/24 Bunkamura ザ・ミュージアム

▼企業コレクションを紹介する展覧会。4回目を数える今回は、吉野石膏が100年の歳月をかけて収集した作品の展示です。

▼顔ぶれは、タイトルの御三方に加えセザンヌ、ドガ、ピカソ、マティス、カンディンスキー…書ききれない位巨匠がずらり。王道。ジャンルは、印象派やエコール・ド・パリが中心です。

▼印象派やシャガールは、いい意味で一息つけるような作品が多かったです。この分野に、最もコレクション力をこめてるようです。推測。そういえば、ローランサンも結構ありました。一方、ピカソ、マティス辺りはあまり…。1点ずつしかありませんでしたし。

▼印象派好きな方におすすめ、という感じの展覧会でした。加えてシャガール。つまり、タイトルそのまんまということです。(12/16) 作品:ポール・セザンヌ「サンタリン村から見たマルセイユ湾」

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巡回:2002年1月30日(水)〜2月17日(日) 大丸ミュージアム






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