2001年7-8月

イタリア・ルネサンス 宮廷と都市の文化展
03/20−07/08 国立西洋美術館

▼粒ぞろいの作品群でした。よくもまあ、貸してくれたものです。太っ腹。特にボッティチェッリ。あの超有名な作品ではないけれど、大きいし静謐な雰囲気漂ってるしで、十分すぎる質の高さでした。ずっと眺めていたかった。

▼「ブルータス」が観られたのも嬉しかった。本物は細部まで立体的。美術室にある、のっぺりさんとは違うわ。それから、美女多し。ラファエッロやティツィアーノの描く女性は、実に魅力的でした。肌の質感や肉付き具合がツボ。服のしわや髪の毛もツボ。

▼大体500年位前のものだけど、どれも古さを感じませんでした。大昔なのに上手すぎ。人間は少しずつ進化してるけれど、根本的なことは遥か昔に確立しているのかも。ルネサンス美術観ると、いつもそう思います。

▼行った日は大変盛況で、40分並ばされました。すいてるって話しだったのに。ていうより、長期開催されてたのに、なぜわざわざ最終日に行くのだ?自分よ。(07/08) 作品:ラファエッロ・サンツィオ「ラ・ヴェラータ(ヴェールの女)」サンドロ・ボッティチェッリ「受胎告知」


金とモノクロームの世界 〜箔・墨による風雅な共演〜
06/01−07/27 大倉集古館

▼狩野探幽、橋本雅邦、横山大観、菱田春草などの作品を展示。タイトル通り、金箔系と水墨系の作品を集めた展覧会です。絢爛とわびさびの対比なのでしょうか。でも、観る限り、それ程明確なテーマは浮かんで来ませんでした。金と墨って日本画ではよく使われますし、通常の日本画展という感じでした。ただ単にこちらが鈍いのかもしれませんが。

▼展示自体は、少ないながらも見応えあり。大きくてダイナミックな構図の作品が、出張ってました。その中でも「波に千鳥図」という、江戸時代の作品が特に気に入りました。波の表現が大胆でいい。作者不明なのが残念です。それから、花の部分が立体的になっている面白い作品もありました。今風にいうとエンボス加工?でも、金部分が立体で少々お下品。平らなままの方がいいです。多分。

▼この展覧会、一番の目当ては伊藤若冲でした。以前に観た巻物でしたが、何度でも観たいので足を運びました。いつ観ても黒と白のコントラストが美しい。まさに「モノクローム」な作品です。
が、それにしても、観られる範囲が狭い。他の巻物も然り。もっと伸ばして下さい、と言いたいけれどスペースの都合もあるでしょうから…。

▼はー、楽しかった。が、しかし、まだ終わらない。ここの美術館には更なる見所があるのです。それは、ミョ〜に東洋してる(?)建物。外観、天井、階段の装飾品、違った意味で感慨深いです。庭の雨ざらし彫刻も気になるし、四方八方目が離せないステキな場所であります。(07/10) 作品:「源氏物語 澪標図」行った当日は展示替で存在せず 伊藤若冲「乗興舟」


メタモルフォーシス 第11回アウトサイダーアート展 ジュディス・スコット
06/20−07/29 資生堂ギャラリー

▼作者のジュディス・スコットはダウン症と診断され、7歳から36年間施設生活を送っていました。86年、双子の姉にひきとられ、87年から障害者の為のアートセンターで作品を作るようになりました。そんな彼女が生み出した作品が、40点余り集められた展覧会です。

▼蚕のようなオブジェたち。身近な日用品を糸などで根気よく巻いて、紡いで作られます。これがもう、観るからに時間かかってそうだわーという巻きっぷり。いや本当、ぎちぎち状態。でも、巻いてる本人はすごく楽しいんだろうな。細かい作業してると、妙にハマッてやめられなくなってしまう感覚。それに近い気持ちで作ってるのではなかろうか。勝手な想像ですが。

▼近くに寄ってみると、糸の間に金属片や藁などが細々挟まっています。蚕プラス蜘蛛の糸か?なんでも、制作中にセンター内をうろうろして、そこら辺にあるブツを勝手に拝借、作品に巻き巻きしてしまうとか。楽しい人だわ。センターの人たち、彼女が興味を持ちそうなものを置いてあげているのでは。多分。

▼作品は、色とりどりでとても綺麗。形は、ひょろ長状態のものが多かったです。ちょっと抱き枕に似てるかも。このひょろ長オブジェ、天井から吊るされていて面白い展示でした。が、作者は耳がきこえず言葉を話せないため、作品の意図をきくことができないとのこと。天地が正しいかどうかは永遠の謎です。他の作品も同様ですが。

▼今回、アウトサイダーアート展ということになってますが、作品だけ観るとそのような匂いは全くせず。美術館や画廊によく展示してあるオブジェ、という感じでした(悪い意味ではありません)。というより、こちらが勝手にふくらませてる「アウトサイダーアート」のイメージに当てはまらなかっただけか。(07/28)


異界万華鏡−あの世・妖怪・占い−
07/17−09/02 国立歴史民俗博物館

▼夏らしい企画。あの世、妖怪、占い、異界を遊ぶと、4部構成になっていました。

▼それぞれ多角的な展示。絵画、資料はもちろん、立体模型、漫画、おもちゃまで盛り沢山。美術、行事、芸能等、様々な面からのアプローチも、いかにも歴史民俗?ぽくて楽しかったです。

▼特に印象深かったのは、幽霊画や不思議な葬送行事の展示に、とぼけた味わいの妖怪画。占いは、陰陽道関連が多かったです。安倍晴明の立体模型が鎮座してました。これ、ファンの方は見たくなかったかも。出口付近には、お化けのおもちゃで遊べる広場が設けられていました。が、大きなお友達なので、遠目で指くわえてました。

▼子供が多く、とっつきやすい雰囲気の展覧会でした。ただ、展示盛り沢山はいいとして、絵が観ずらくなる場所にモニターを置くのはいかがなものかと。(08/05) 作品:河鍋暁斎「地獄変相図」


色の博物誌 緑 豊潤な影
08/04−09/19 目黒区美術館

▼目黒区美術館の十八番企画、「色の博物誌」シリーズ。テーマ色に沿った鉱石、顔料、陶器、絵画などを集めた展覧会です。1992年・青、1994年・赤、1998年・白と黒ときて、今年は緑。このシリーズは個人的な風物詩で、皆勤中。今回も観に行ってきました。

▼歴代展体験者にはお馴染みの展示。石関係は巨大なコスモクロアやヒスイなど。自然から生まれた緑色です。ヒスイの勾玉は明度彩度の違う緑がぎゅっと詰まっていて、いただいて帰りたい位の美しさでした。ちなみに、コスモクロアというのは輝石系の珍しい石です。

▼興味深かったのは、画材としての緑。鮮やかな緑を持つ孔雀石が顔料になったり、鉱物から出来た緑土が絵画の立体感を出すための下地となったり。絵を描かない者にとっては裏側が垣間見られる面白い話しでした。もちろん原料の鉱物や完成品?の顔料、実際に用いた作品の展示も有り。かゆい所に手が届いてます。

▼さらには緑色が印象深い絵画、衣服など様々な分野からの展示があり、タイトル通り緑を思いっきり楽しむ展覧会になってました。が、さすがにシリーズ第4弾ともなると、いい意味でも悪い意味でもマンネリの感が。しょうがないかなとは思いますが。それから、美術作品のみをじっくり観たい方にとっては、少々期待外れかもしれません。(08/25)


イームズ・デザイン展
08/10−09/30 東京都美術館

▼アメリカを代表するデザイナー、イームズ夫妻の展覧会。巷で話題だそうで、会場は賑わっておりました。デザイン系らしく?客層が異様に若かったです。

▼会場の中は、美術館というよりお店。展示というよりディスプレイ。イームズの作り出す椅子や家具、映画のイメージにぴったりな見せ方でした。彼らは自身の展覧会が開催される際に展示の構成も行ってたそうで、そんな当時の展示法を踏襲したのかもしれません。それからポスターやカタログ、チラシのデザインもイームズ・イメージ(多分)で、これまた見せ方の勝利という感じでした。

▼といっても、お膳立てばかりだったわけではなく、中身も想像以上でした。どれもシンプルで洗練されていて、とても50年前とは思えないデザイン。今でも全く色褪せてません。いや、むしろ新しいのかも。ずっと新鮮さを保てるなんて、凄いの一言です。当たり前ですが、デザインって重要ですね。(08/25) 写真上:微妙にデザインが違います。 下:揺れるとバランス悪そうなのですが。実際はどうなんだろう?

余談:イームズの棚や設計した家は、モンドリアン入ってる気がする今日この頃。

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巡回:2001年11月23日(金・祝)− 2002年1月27日(日)
サントリーミュージアム天保山






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